翌日、は起き上がれるようになった。
その2日後には歩き回れるようになった(意地で)。
そしてそして、バクをおなじみのネタで脅し、最新のイヤリング型の通信機も手に入れることに成功した。
で、お次ぎはというと・・・
ーーあくまでも修練です、とか言ってみるーー
ーードゴーーーンッ!ーー
響き渡る凄まじい轟音。
洞窟内にあるはずの支部が震撼する。
本日、何度目になるか分からないそれに、バクは深々と嘆息した。
「またか・・・」
「申し訳ありません、目を離したわずかの間に・・・」
しきりに恐縮するウォンに、バクはもう無駄だとばかりに投げ出した。
思えば、があれほどの怪我を負ったのは初めてだ。
彼女の性格を考えれば、4日間でもベッドにいたことは奇跡に近いのかもしれない。
それにいくらの為と思って、ベッドに縛り付けでもしようものなら・・・
明らかに被害を被るのはその親切心を発揮したこちらであることは間違いない気がしてならない。
「もう構わん、ほとぼりが冷めるまで放っておけ」
「そうですな」
遠い目をする二人。伊達に長い付き合いではない。
あんなに荒れているのだ。触らぬ神になんとやら、だ。
そして、ウォンは話題を変えようと手元の懐中時計を見た。
「バク様、そろそろウォーカー殿が目を覚ます頃ですが?」
「よし、では引き続きイノセンス復活作業を進めるぞ」
一方、その頃。
騒音の主はというと・・・
「はぁ・・・はぁ、はぁ・・・」
荒い息をついていた。
米神を汗が伝い、患者服はしっとりと濡れる。
病み上がりだからではない。
いや、それもきっと要因の一つなのだろうが・・・
「・・・・はぁ、はぁ・・・・ぁああぁんの、ホクロ!次会ったら潰すっ!!」
一番の要因は、単に怒りのままに暴れまわっているだけとも言えた。
思い出されるのは4日前。
いくら戦い詰めだったとはいえ、あのような形で敗れた自分が腹立たしくて仕方ない。
それに、自分が今陥っている訳の分からない不可解な状況も苛立ちの原因の一つだった。
Dr.からは一週間の絶対安静を宣告された。
だが、この苛立ちを一週間抱えるなんぞ、内蔵をストレスで融解させる自信がある。
そのため動けるようになってからは、見張りの目を掻い潜り、修練を続けていた。
フォーの案内で、周囲に気遣う必要ない場所を教えてもらえたことも相まって、は心置きなく修練(という名の八つ当たり)を目下敢行中だった。
「はぁ・・・・・・はあぁぁ、疲れた・・・」
手元にあったイノセンスが光の粒となって消える。
12時間ぶっ通しで動きもすればそうもなる。しかも、はまだ病み上がり。
というか、治ってないが。
両膝に手をついたは、肩で息をつく。周囲には見るも無残な瓦礫の山。
それはまるで意識を取り戻した時に目にしたような光景で・・・
「あ"あ"!またムカツいてきた!!」
休憩にもなっていないのに、再び怒りが燃え上がってきたらしい。
だが、イノセンスを発動する時間も惜しようで、足元に転がる石をこれでもかと踏みつける。
粉砕されたそれを見下ろし、少しは溜飲が下がったのか、は大きく息を吐き出した。
「はぁ〜、おなか減った・・・」
烈火の如くな怒りも、空腹の前では萎む。
ここはひとまず、腹ごしらえといくか。
タオルを首に引っ掛けたは食堂に向け歩き始めた。
背後に残るのは、大量の瓦礫の山だった。
Next
Back
2013.9.24