「はあぁ、長かった・・・」
の呟きは、本当に重いものを孕んでいるかのように辺りに滲んで消えた。
ーー小姑が煩くて仕方ないのでからかってみたーー
ティムをクロス部隊に届けたは、再び汽車に揺られアジア支部に戻ってきた。
身体もどうにか自力で歩けるほどに回復した。
まさかここで誰かの肩を借りるなんて醜態、絶対したくない意地もあったのだろうが・・・
「よ、」
支部に戻って早々、出迎えたのは顔馴染みの見た目少女の姿。
これで100年以上姿がそのままなんて、ある意味犯罪だ。
は片手を上げて応じた。
「フォー、いろいろ助かったわ」
「気にすんな」
彼女との付き合いの深さから、軽い一言で事足りる。
そして、は懐から一枚の紙を取り出すとフォーに渡した。
ーーぺらーー
「はい、これが約束のネタね」
「お!サンキュ〜」
嬉々として受け取ったフォーを見ながら、はあまり聞きたくないが聞かなければならない事を口にした。
「で?バクちゃんどうしてる?」
「聞きたいか?」
にやにやと笑うフォーに、は嘆息した。
これでは聞かずとも十分過ぎるくらいに分かってしまった。
「・・・いや、要らない。面倒だけどこれから嫌でも顔合わせるし・・・」
これから起こるだろう事を理解したは、このままばっくれようかとも思いながら、それは叶わない事を知り重い足を司令室へと向けるのだった。
大した時間も要せずに、指令室前に到着した。
このまま突っ立ってても馬鹿馬鹿しい、面倒事はさっさと終わらせるに限ると扉を開けた。
中に入ればこちらの姿を認識した途端、バクが怒声を上げた。
「
!お前という奴は!こっちはどれほど心配したと思ってる!」
それを聞きながら手近の椅子に腰を下ろしたは、ひらひらと片手を振った。
「あー、はいはい、無事だったんだから良いでしょ」
「良い訳あるか!!」
「興奮するとまた蕁麻疹出るわよ」
「放っとけ!!」
きゃんきゃんと吠えるバクの小言を右から左に流したは、一つ溜め息を零す。
溜め息をつきたいのは向こうだろうが、知った事か。ついたもん勝ちだ。
「喚く暇あるわけ?私が戻ってきたんだから、やることあるでしょうが。
ほれ、私のゴーレム」
ーーべチッーー
が自身のゴーレムを投げれば、それは蕁麻疹が出ているバクの顔面に張り付いた。
しばらくそのまま硬直していたバクは、ふるふると震え始めると、
ーーベリッ!ーー
「お・ま・え・はぁ〜〜〜!!」
「ほ〜らほら、蕁麻疹がひどくなってる」
「キィィィィーーー!!」
「バ、バク様!お気を確かに!」
ご乱心の支部長をウォンが慌てて宥める。
一通りからかい終えたはこれでやる事は終わった、と立ち上がろうと膝に手をついた。
「じゃ、ひとまず医務室に行ってるから。
詳しいはなしは、そこ・・・」
ーーガダンッ!ーー
「
!!」
「
様!!」
しかし、ふらついたが椅子から崩れ落ちた。
それまで主従漫才を繰り広げていたバクとウォンは色を失くす。
「この、バカ!
おい、ストレッチャー急げ!至急、医療班に連絡しろ!」
駆け寄ったバクの声を聞きながら、は薄く笑う。
「・・・おーげさ・・・ってか、バカゆーな、バカバク・・・」
「何度でも言ってやる!この、バカが・・・」
意識を保ってられない。
どうやら、結構キツかったらしい。
(「目が覚めたら・・・フォーとからかってやんない、と・・・」)
そう決めたは意識を手放した。
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2013.9.24