暫くして、フォーが戻ってきた。
隣に立つ女性が追加要員のエクソシストなのだろう。
ーー恥じらい?なにそれ食べ物?ーー
「、バクから話は聞いたけどよ、動けんのか?」
「さっきよりはね」
「しゃーねーな・・・駅まで送ってやる。港までは汽車移動だろ?」
「頼むわ。で、そっちが追加要員のエクソシスト?」
フォーから隣立つ女性に視線を移す。
セミロングの揺れる髪、気弱そうな垂れ目、不健康そうに見えるクマ。
こちらが見ただけだと言うのに、おどおどおろおろ。
・・・なんだか、自分と真逆にいるような人だ。
「は、はい!ミ、ミランダ・ロットー・・・です」
「・よ」
手短かに自己紹介を交わす。
そして、移動するかとばかりに腰を上げた時、
「あ、あの傷の手当を・・・」
「その前に着替えってある?」
ミランダを遮ってが言えば、フォーが持ってきた鞄から目的のものを差し出した。
「バクから頼まれて持ってきてやったぜ」
「流石はフォー」
おもむろには服を脱ぎ始めた。
この外見で人前に立てば、引かれる事は必至だ。さすがにそれは嫌だ。
今までAKUMAとの戦いで、ここまでなることはなかった。
あのノアとの戦闘でもここまでは酷くならなかった・・・記憶してる限りでは。
なら意識を失った後、あの時にこうなってしまった原因があると考えるのが筋か・・・
考えながら、服を脱いでいただが、そのまま下の服まで手にかけようとした時、声が上がった。
「!?レ、
さん!?」
「おい、
!」
ずいぶん焦った声に、の手が止まる。
「・・・なによ?」
「え、えーっと・・・」
「お前な・・・恥じらい位持てよ」
「オヤジみたいなこと言わないで」
「誰がオヤジだ!」
「別に女しかいないじゃない」
「そう言う問題じゃねぇだろ・・・」
フォーは頭を抱えて溜め息をついた。
その手にはゴーレムが握られてる所を見ると、どうやらそれなりに気を遣ってくれたらしい。
まぁ、見られたら見られたらでそれをネタに脅してやろうと考えてもいたのだが・・・
とりあえず、手当もしなければいけないだろうと言う事で、団服に袖を通すだけで着替えを終える。
そして、移動するかと動き始めた時に、ミランダがおずおずとに申し出た。
「あの・・・私の能力で、その怪我を・・・」
「?どういうこと?」
フォーの肩を貸りながら、ミランダの話を聞く。
何でも彼女のイノセンスの能力は時間を操る事ができ、発動中は怪我する前の状態に戻せる、という代物らしい。
随分、便利な能力だ。
その話を聞いたフォーは真っ先に口を開いた。
「そりゃすげぇ、やってもらえよ」
「いや、要らない」
「は?どうして?」
間を置かずに即答したに当然の疑問が返る。
しかし、の方は何を言ってるんだとばかりにフォーに言った。
「その能力、合流する部隊に必要なんでしょ?ここで余計な力を使うことないわ」
「で、でも・・・」
心配顔で言い淀むミランダ。
が、は疲労度合いも手伝って、ぞんざいに言い捨てた。
「要らないっつてんでしょ?」
「ひぃぃぃっ!ご、ごめんなさいぃぃ!!死んでお詫びーー」
ーーガシッーー
「そこまでせんでいいから」
の返答に、近くにあった池に身投げをしようとしたミランダを裾を素早く掴んで止める。
飛び込まれて助け出してやる余裕はない。
必然的にフォーがやることになるが、今は小言に対応する体力も惜しい。
「貴女って相当な後ろ向きね」
「ご、ごめんなさい・・・私、昔から要領が悪くて、ノロマで、どんくさくて、仕事もできなくて、それにーー」
「あー、はいはい。もう言わんでいいわ」
(「聞いてるこっちが嫌になるから」)
なんて言ったら、また身投げでもされそうだ。
こういうのは、あのエセ聖職者とは別の意味で面倒なタイプだ。
「ともかく、駅に向かいましょ。応急処置は車内で済ませるから」
目的地までの道中、変な気を遣わねばならない予感には気重に息を吐いた。
Next
Back
2013.9.24