『ーーー・・・ーーー』

何かの音に意識が浮上していく。






































ーー説明してください。ってか、説明しろーー








































ーーぱちっーー

視界を埋めたのは白。冷んやりとした空気が頬を撫でる。

「・・・・・・」

どうやら靄がかかっているらしい。
しかし夢現な今、現実と夢の区別がつかない。
首を巡らせれば、辺りは瓦礫ばかり。
天国にしては少しばかり物騒な景観で、地獄にしてはおどろおどろしさに欠ける。
その時、

『ガガッ!・・・イカ!・・・ザ、ザァーーッ!・・・!・・・

ゴーレムの通信音。
聞き慣れた声にの意識は急速に覚醒した。

「・・・・・・バク?」
!?よし、通信が戻ったぞ、状況確認急げ!
おい、どうしたっていうんだ、全然連絡がーー』
「・・・えぇ・・・」

歯切れ悪く、は返事を返す。
そして話しやすいように、身を起こそうとした。
が、

「・・・え?・・・」

力が入らない。
予想だにしない事態に、の頭が真っ白になる。
返事が途切れたことを不審に思ったのだろう。
焦りをみせたバクの方から声が上がった。

『おい、どうした?まさか怪我をーー』
「バク、フォーはいる?」

遮ったの言葉に、ゴーレム越しでも安堵したのが分かった。

『あ、あぁ。それが、どうーー』
「代わって」
『はあ?理由くらーー』
「何度も言わせんな」

いつものやり取りとなるように、はぴしゃりと叩きつける。
すると間を置かず、目的の人物の声が響いた。

『おぅ、代わったぞ』

いつもの調子に見えるが、声が強張っているのが分かった。
思わず浮かぶ苦笑をそのままに、は口を開く。

「フォー、支部に一番近い村、分かるわよね?」
『ああ』
「多分、その近くにいるから来てくれない?」
『分かった、すぐ行く』

素直じゃない彼女のことだ、きっと心配を押し隠して急いで来てくれるだろう。
ひとまず移動できることに安心しただが、ゴーレムからは憮然とした声が響いた。

『おい、迎えの連絡なら俺様に言ってもーー』
「バクに頼むなんて癪だったの」
『なっ!?お前、こっちはどれだけーー』
「うっさい、帰ったらいくらでも聞いてやるわよ、じゃ」
『あ!ちょっと、まーー』
ーーブチンーー

一方的に通信を切ると、はそれまで詰めていた息を吐いた。
そして苦労の末、上体を起こし瓦礫に背中を預ける。
ようやく記憶が繋がっていき、疑問が口をついた。

「・・・なんで、生きてるの・・・」

明確な死を自覚した。あの時、闇に呑まれ死んだと思った。
なのに、今こうして生きている。
それに今のこの状態。腕を上げるのさえ相当な力を使う。
意識を失う前は起き上がれないほどではなかったはず。
あのノア、ティキの性格を考えれば意識を失った相手をいたぶることは考えにくい。
と、その時

『ーーー・・・ーーー』
「・・・誰?」

呼ばれた気がして辺りを見るが、それらしい人影は見当たらない。
姿なき呼び声を探していた時、迎え人がやって来た。
なんだ、彼女の声だったか。
目が合いこちらを見る表情が青くなったのには少し笑ってしまった。

「はぁい、フォー。また会えるとは思わなかったわ」

手を上げることもできず、仕方なく言葉だけで言えば、フォーには相当珍しくかなり慌てた様子だ。

!?お前、どうしたんだ、その恰好!」
「そんなヒドイ?大して痛みはないんだけど・・・」
「んなわけあるか!こんなに血がーー」

傍に膝を付いたフォーは、ボロボロのになっているだろう団服をめくりあげた。
瞬間、動きが止まった。

「!なん、だよ。この怪我・・・どういうことだ、説明しろ!」
「それが私にもさっぱりでさ、とりあえず、手ぇ貸して」

普段、フォー相手であっても、誰かにそんな事を言わないの言動にますます不審気な顔が返ってくる。
言いたいことが分かっていたは肩を竦めて返した。

「なんか知らないけど、力が入んないの」
「訳分かんねぇな、ったく・・・」
「こっちのセリフよ」

フォーに肩を貸してもらい、やっと視界が広がった。
辺りは廃墟というか、かなりな爆発でもあったような感じだ。
その時、

『ーーー・・・ーーー』
「?フォー、呼んだ?」
「あ?この距離で呼ぶかよ」
「じゃあ、誰が・・・」
「兎も角、今は支部にーー」
「待って」

そのまま支部に向かおうとするフォーに、は制止の声を上げた。
どうしてだろう、何か、気になる。
そして、集中するようにそのまま瞳を閉じる。
しばらくして、は首を巡らせた。

「支部に行く前に、あっちの竹林に寄ってくれない?」
「んなこと言ってる場合か!」
「んー、なんか・・・声がしてさ」
「はぁあ?あたしは聞こえなかったぞ。そもそも誰のだよ?」
「それが分かりゃ苦労しないって」
「AKUMAだったらどうすんだ!」
「いや、そんな感じはしなかったから大丈夫。
それに、この辺りのは片づけておいたから」

だから通信回復したでしょ?とに言われれば、フォーも渋々納得したように方向を変えた。
まぁ、意識を失う前に相当数は片付けたのだから嘘は言っていない。

「世話が焼けるぜ」
「今度、バクが禿げ上がるようなネタ提供してあげるからさ」
「よし、じゃ行くぞ」

交渉が成立し、二人は目的地に向け歩きだした。


































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2013.9.24