ーー扉越しの約束《4.5》ーー
















































































































・・・なんだろう。
初めて嗅ぐニオイだ。
身体中を暴れる激痛で、視界は滲んで良くは見えない。
分かったのは、いつも傍に居てくれる沙門ではないということ。

(「・・・だれ」)

黒い服、腰や首に色んなものを掛けていて、口元に何かを咥えていた。
私に向かって何かを言っているみたいだけど、耳鳴りがして聞こえない。

(「・・・あったかい・・・」)

額に触れた手はあっという間に離れてしまったけど、人肌の温もりに涙が流れた。
初めて、だと思った。
私に触れてくれる人など、あの家には居なかったから。
お礼を言おうと痛みを堪えて視線を上げれば、その人は沙門と喧嘩しているみたいだった。

(「やめ、て・・・」)

声にならない。
また私のせいで喧嘩しているんだろうか?
諍いの中心はいつも私の存在だ。
やっぱり私は・・・

(「ごめん、なさい・・・」)

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
力を持ってしまってごめんなさい。
存在してしまってごめんなさい。
生きてしまってごめんなさい。
諍いの元凶でごめんなさい。

「・・・ん、な・・・ぃ・・・」








































































































ーーうまれて、ごめんなさい・・・ーー




























































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2015.7.5