ーー敵対ーー










































































































「お願い・・・」

声が震えていた。
だがそれに反し、照準はぶれることなくトリガーの指もしっかりとかかっている。
そして敵対している相手に向け、違えることなく銃口は急所を狙っていた。

「・・・お願い、ユリウス」

悲しみに染まる声。
痛みを内包する瞳。
追い詰めているはずなのに、まるでそれは命乞いをするような必死な懇願。
の言葉にユリウスは反応を示さない。
それでもは諦めることなく、再び口を開こうとした。
瞬間、

「お前に俺は殺せない」
「・・・っ・・・」

返された言葉に、は唇を噛んだ。

「・・・私に、撃たせないで」
「撃てばいい。そう命令されているはずだろ」
「それは・・・」
「お前の腕なら外さないだろ、
「撃ちたくないの・・・だから投降して」
「それはできない」
「どうして・・・」

掠れる声で問えば、返されたのは沈黙。
言うつもりがないのか、自分だから言えないのか、今のには判断できなかった。

「早く済まそう、お前にまで嫌疑がかかる」
「・・・なんでそんな事・・・」
「俺のせいでお前にまで迷惑をかけたくないからな」
「何よ、それ・・・」

耳に届いた言葉に、ついに銃口が下された。

「私は・・・」
「言うな」
「いつだって、私は・・・」
「止めるんだ、それ以上は」
「貴方の為なら、全てを捨てる覚悟があったんだから!」

まるで叩きつけるように、聞いているこちら側が泣きたくなる声では叫んだ。
俯いてしまったにユリウスの手が伸びるが、触れる直前で思いを潰すように拳を握った。

「・・・分かった。顔を上げてくれ」
「何言って」
「投降する」

一瞬、理解するのに時間を要した。
信じられずゆるゆるとは顔を上げる。

「今、なんて・・・」
「投降するよ」
「・・・本当?」
「ああ。だからそんな顔するな」

それまで耐えてきた涙が決壊したように、後から後から涙が溢れる。
その軌跡は頬に添えられたユリウスの手にも流れ落ちた。
両の手に感じる事ができる温もりが世界から失われないことが、今の自分には何にも代え難いものなのだと改めて自覚する。

「泣くな」
「だっ、て・・・」
「君にはいつでも笑顔でいて欲しいんだ」
「ユリウス、私・・・」
「笑っていてくれ」

コツン、と額を合わせ小さく呟いたユリウスに、は瞳を閉じ満ち足りた気持ちでその願いを唇に乗せた。

「・・・ん、分か」
ーードンッーー

静寂を破る轟音。
それは自身の手元から響いた。
がゆっくりと視線を下げた先には、自分の指と重ねるようにユリウスの指がトリガーにかかり、銃口から上がる白煙。
そして、じわじわと広がる腹部の赤いシミ。

「約束、だぞ・・・」
「ユリ、ウス・・・え、何よ・・・・・・だって・・・」

声の震えは全身に及ぶ。
血の気が下り、何も考えられない。
耳に膜が張られたように音は聞こえないのに、心臓の音だけが異常に聴覚を奪う。

「・・・お前の、手は・・・汚さ・・・せ・・・・・・」
「ユリウス!!」

抱える身体が冷たくなっていく。
それがあまりにも現実離れすぎた感触で、言葉にならない。
どうして、どうして、どうして、どうして!!

「ユリウス!しっかりして!!」
「・・・任務、完了・・・だ」
「こんな事望んでない!!どうしてユリウスが、ユリウスだけが!!」

は傷口を押さえ必死に叫ぶが、ユリウスは悟ったように笑う。
そして、自分を抱き留める愛しい人の髪を掬い取る。
見つめあう中、最期の言葉を紡ごうとするがそれは唇が動くだけで音はならない。

「ユリウス!だめ!!目を閉じちゃだめだったら!!」
「・・・・・・」
「ユリウス!目を・・・開けてよ・・・」

しかし呼びかけに反応が返ることはなく、流れ落ちる涙を拭う手に熱が戻る事もなかった。

「いやあああああぁぁぁっ!!」























































サブシナリオ予定

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2020.9.17