ーー未来へ・・・ーー
次にルドガーが気付いた時、分史世界のようにが抱きしめていた。
「ごめんね、ルドガー・・・
あなたにばかり辛い思いをさせて」
「、姉・・・どうしてここに・・・」
ルドガーの問いに答えず、はただ弱々しい微笑を向けた。
「ありがとう。ユリウスの願いを叶えてくれて。
それに私にはもうあれ以上、進行を止められなかったから・・・」
「止められなかった?一体どういうことだ?」
「それに、姉って・・・
さん、あなたは一体・・・」
ミラに続いたジュードの問いに、は小さく息を吐いた。
「そうですね、あなた方には知る権利がある。ユリウスが託した意思を継ぐルドガーとその元に集った仲間達になら」
そう言って、は魂の橋の前に立った。
「私はルドガーの姉みたいな感じです。
本当の名前は・・・・・ギヌス」
「なっ!?ギヌス、だと・・・
まさかこんなところに六家がでてくるなど・・・」
「ええ。リーゼマクシアではそう呼ばれていますが、エレンピオスでは賢者ミラ・クルスニクの元に集った13人のうち、精霊を私欲のために利用しようとした始祖6人を殺した血塗られた一族です」
ガイアスに悲しげに笑ったは続けた。
「表向きはエレンピオス社通信部門秘書、及び分史対策室筆頭秘書として生活してました。
けど、一族の業も持っていました」
「その業とは?」
「あなた方が助けようとしているエルちゃんが宿しているものと同じクルスニクの鍵ーー」
「「「「「!!!!!」」」」」
瞬間、一同に衝撃が走る。
当然だ。
クルスニクの鍵を宿す者は数代に一人しか現れないはず。
そこに二人目が現れるなど・・・
そんな一同の衝撃にはくすりと笑った。
「ーーの成り損ないです」
「び、びっくりした・・・」
「どうやら、私では発動するに至らない何かが欠けていたようです。
まぁ、今となってはもう些細なことですが・・・」
「どういう事だ?」
「言いましたよね?
ユリウスの時歪の因子化の進行をこれ以上止められなかったって・・・」
そう言ったは制服の留め具であるリボンを外し、上着を脱いだ。
「そんな・・・」
レイアの声に、は困ったように笑うしかできない。
すでに両腕は墨色に染まり、それはもう首元まで侵食されていた。
はそのまま振り返ると、魂の橋の入り口を愛おしそうに撫でた。
「ユリウスが掛けた橋。
私がやるべきことは試練を超えたあなた達が戻ってくるまで持たせること。
本来なら橋が運べるのは一人ですが・・・
鍵の一部を宿す私ならそれもできる。
さぁ、行きなさい」
「けど・・・それじゃあ!」
「大丈夫よ」
はユリウスの頬に手を添えた。
「男の子が情けない顔しないの。
あなたのこれからを見守れないのは残念だけど・・・
それでも、私もユリウスもあなたが選んだ選択を応援する。
いつでもあなたの幸福を祈ってるわ」
「姉・・・」
「約束したんでしょ?
エルちゃんとカナンの地に行くって。
その約束を果たすためにもまずは奪われたエルちゃんを取り戻しなさい。
このまま引っ込むなんて、ルドガーじゃないわ」
「さあ、行ってらっしゃい」
ルドガーの姿が橋へと消え、仲間達は次々と続いていく。
と、
「間に合うのか?」
主語がないガイアスの問い。
それと同じ視線が、ミラ、ミュゼ、ローエンから向けられる。
(「本当、ルドガーの友達はいい子達ばかりね・・・」)
は柔らかく笑った。
そして、問われた答えを口にする。
「私の時歪の因子化はもうすぐでしょう。
でも、私が時歪の因子になってこの試練に負けることはユリウスも望まない」
「自分の手でケリをつける、と」
「アルクノアの襲撃を退けるくらいの力は持ってますから。
それに、橋を固定するのにこの身は不要です」
「・・・・・・」
自身の胸元に手を置いていたは、一人一人の視線を見返すと深々と頭を下げた。
「どうか、ルドガーとエルちゃんをお願いします」
「分かった」
「任せて」
「承知した」
「最善を尽くしましょう」
全員を見送り、はカナンの地、審判が下されるオリジンの座するそこを見上げた。
「やっぱり歯痒いわね、ユリウス。
ルドガー達が戦っているのにそれを見ているしかできない私達は・・・」
腰に携えた短剣を抜き、刀身に映る自分の顔を見る。
「でも最後に少しは役に立てたよね。
たとえルドガーがどんな選択をしても、この地に戻る道を残せるんだから」
橋に手を当て、術式を組み上げていく。
そしては再びカナンの地を見上げ、仕上げである白刃を胸に突き立てた。
メインシナリオ予定。
ユリウス28歳、
31歳
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2014.12.31