ーー愛しき者のためーー




































クランスピア社、エントランス。
そこに腕時計の時間を気にする女性がタイムテーブルの最終チェックを行っていた。
と、

「は〜い、ヴェル」

かけられた気さくな声に顔を上げれば、ハーフアップにした暗紫とフレアスカートを揺らして歩み寄ってくるの姿があった。
が、仕事モードのスイッチが入っているヴェルは淡々と返す。

「・・・、仕事中」
「失礼しました、筆頭秘書官殿。予定通り、定刻で出発。すべての手配は整っています」
「わざわざそれを言いにきたの?GHSで報告すれば済むでしょう?」
「ちょっと他の用事もあったからついでに見送りにね」

そう言ったの耳に、エレベーターの到着音が届いた。
二人がその方向を見れば、この会社の社長がこちらに向かって歩いてくるところだった。

「じゃ、私は業務に戻るわね。いってらしゃ〜い」

ひらひらと手を振りはヴェルを見送った。
見送った顔はいつも通りだっただろうか?
同じ秘書として、同僚としての彼女の『最期』になるだろうその後姿。
だが、分かっている。
これは自分で選んだ選択。
愛しい者を守ると決めた、そのために払われる犠牲だ。
は秘書室に通じるエレベーターに乗り込む。
そして、誰もいない事を確認しGHSの通話ボタンを押した。

「私よ。
・・・ええ、予定通り定刻に出発したわ。
私はこれからあの指令をなんとかするわ。
ええ、分かってる・・・それとアルクノアが画策してるようよ、気をつけて」

事務的な口調で用件を済ませたはGHSを握りしめ、己がやるべき仕事に意識を切り替えた。






























メインシナリオ予定。
ユリウス28歳、 31歳



Back
2014.12.31