ーー花弁に舞う決意ーー
(「しつこい奴らだ」)
山頂の花園から離れ、空中で三下の魔法傀儡の相手をしていていたハウルは舌打ちをつく。
大量の相手が半数にはなったが、残りも執拗な追撃を続けていた。
(「こうなったら・・・!」)
振り返ったその時、三下の動きがぴたりと止まっていた。
不審気に羽ばたいていたハウルだったが、そこに現れた人物に目を見開いた。
「こんなところで道草を食っている暇はない。さっさと目的地まで急ぎなさい」
凛と響く涼しげで懐かしい声。
巨大な鷹の背に乗って表れたのは、陽光の下に照らされる暗紫の髪。
紫電の瞳で大きな爆撃飛行艇を細い指が指せば、三下は黙ってその指示に従って行った。
そして、ゆっくりと振り返った女は首から下が黒鳥のような姿のハウルに静かな表情を向ける。
あの頃の優しげな面影などない、冷たい表情にハウルは唸るように問うた。
「・・・どうして」
「久しぶりね、ハウル」
「っ!どうしてあんたが戦争に加担するんだ!
!」
「助けてあげたっていうのに、随分なご挨拶じゃない?」
「僕は人殺しに助けられるような薄汚い魔法使いとは違う!」
全身の毛を逆立てるようにハウルが怒鳴れば、はハウルが初めて目にした冷徹な笑みで返した。
「こそこそ逃げ隠れするしかできないあなたと何がどう違うというのかしら?」
「何!?」
「私はこの国を隣国の侵略から守るために魔法を使っているの。
あなたのワガママはこの国を危険にさらしてる、そのおかげで何人も死んでいるのよ。
人殺しの私と見殺しにしているあなた、どう違うのかしらね?」
「っ!」
の言葉にハウルは怯む。
それを見下ろしたは小さく嘆息すると、指を小さく動かし鷹は羽ばたきを大きくした。
「これ以上、私の邪魔はしないでちょうだい。
恐らく今夜は一番の戦いになる。国は間違いなく燃え上がるわ」
ハウルとの距離は縮まる。
しかし、両者はそれ以上争う姿勢を見せずすれ違う。
「自由に生きたいのなら、そのワガママを最後まで貫き通しなさい。命を賭さなければ守り切ることなんてできないんだからね」
すれ違いざま、小さな涼やかな声にハウルは意を決したように力強く羽ばたいた。
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2020.7.28