それは、運命とでも呼ぶのだろうか。

「はぁっ!」

・・・いや、この地を統べるものにしてみれば必然、と語るだろう。
二度と出会うことがないはずのこの再会を・・・











































































ーー運命という名の必然ーー









































































「ふぅ・・・」

日課の鍛錬を終え、いつも通りに修練窟を出てみればそこには記憶の彼方に追いやりたい姿が飛び込んできた。

「!」
「!」

交わる翡翠と紫電。
互いに息を呑んだ。

「・・・
「やめろ」

零れた名に返されたのは拒絶。
その瞳も、体も全てを撥ね付けるように小柄な目の前の姿を睨みつけた。
こちらに近づこうとする姿には踵を返す。

「私はもう部外者だ。巻き込むな、メリオダス」
・・・」

立ち去る後ろ姿に、メリオダスは小さく名を呟くがその主が歩みを止めることはなかった。
立ち尽くすようなメリオダスの姿に、浮かんでいた高度を下げたキングがメリオダスに問うた。

「何者なの?」
「・・・」
「団長殿?」

反応しないメリオダスの様子にマーリンは首を傾げる。
と、

「知り合いか」
「ザネリ殿」
「まさかメリオダスが彼女と知り合いだとは知らなかったぞ」
「何者なの?」

キングの問いに、チラリとメリオダスに気遣わしげな一瞥を送ったザネリはおずおずと続けた。

「・・・彼女はーー」









































































修練窟の裏手、颯爽と歩いていてきた後ろ姿に突然声がかかった。

「なんだ、お主も来ておったのか」
「・・・」

愚問だ。
この時間は日課で自分が来ることなど、この人が知らないはずがない。

「ジェンナ様・・・」
「ほぉ〜、珍しいこともあるものだ。何を怒っている?」
「どうして言ってくださらなかったのです?」

静かな怒りを秘めた瞳で、ジェンナを睨みつける。
しかし向けられた当人は、余裕顔でサラリとそれをかわす。

「このドルイドの聖地に、長であるワシが誰を招こうと文句を言われる筋合いはないはずじゃが?」
「それは!・・・そうですが・・・」
「16年ぶりの再会じゃろ、それでも恨みは薄らいでおらんか」
「・・・さぁ、どうでしょうか」
「素直ではないのぉ」
「・・・鍛錬に戻ります」

その言葉に、内に渦巻く激情から目を逸らすようにはまた歩き出した。

































「ーー彼女は16年前に消滅した、ダナフォール唯一の生き残りだぞ」

ザネリから語られる言葉に、一同は複雑な面持ちでメリオダスの後ろ背を見つめるのだった。










































































「久しぶりだな、
「お前は変わらないな、元聖騎士騎士団長メリオダス」

夜。
(とは言っても、このドルイドの地で日が暮れることはないが)
滝の流れる水辺に佇んでいたは、背後に現れた気配に気付いた。

「まさかお前が生き残ってたとはな」
「問題があるような言いぶりだな」

険のある言葉と共に振り返れば、そこには先ほどと変わらない、記憶している昔の姿のままの男の姿があった。

「いーや、良かったよ。俺は全てを消してしまったわけじゃなかったんだからな」
「・・・」
「けど分からねぇ」

あっけらかんとした感じから一転。
声を低くしたメリオダスの鋭い視線に物怖じせず、は静かに見返した。

「どうして生き残れたんだ?俺の暴走したあの力からお前だけが」
「・・・」
「それにお前、人間のはずなのにどうして16年前と姿が変わっていないんだ?」

問い質すようなメリオダスに、はシャツの裾をたくし上げた。
目の前にあったのは体幹を抉るほどの生々しいほどの傷跡。

「!」
「あの時の記憶は朧げで、覚えているのはここで匿われてからだ。
ザネリ様が言うに、この傷の所為で体の成長が止まったらしい」
「・・・悪かった」
「謝罪を求めたように聞こえたか?
お前こそ私に恨みごとの一つや二つ言えるだろう」

沈み込むようなメリオダスに、シャツを戻したはくるりと背を向けた。

「あの時、国外の任務を私が代わったからリズが死んだ」
「・・・」
「そして国王への報告に戻った時、私は何もできず闇に呑まれダナフォールは消えた」
「お前が責任を感じる必要はねぇよ。国が消えたのは俺の所為なんだからな」

いつもの軽薄さのまま、メリオダスは明るく語る。
それを肩越しに見返したは、小さく息を吐いた。

「変わらないな、その自分勝手さ。お前は誰にも背負わせない」

そして、は腰に携えていた剣を引き抜いた。

「・・・それがいつでも、腹が立つ」

憎悪を孕んだ声音のまま、は切っ先をメリオダスに突きつけた。
二人のを包む空気がまるで怯えるように震える。
ゆっくりと、長く短い時間が過ぎた。
赤い筋が首を伝ったままメリオダスは静かに問う。

「・・・俺を殺すか?」
「殺せるものならな」

即答したは、何事もなかったように剣を鞘に収めた。

「だが、私の腕でそれができるかどうかの判断ができないほど、私はここで鍛錬を重ねてきたわけじゃない」

再び背を向けたの突き放す言葉。
それを受け、僅かな期待を抱いていたようなメリオダスは肩を落とした。

「やっぱ、一緒には来てくれないか?」
「この地への恩を返す。私の存在理由はそれだけだ」
「そっか・・・」
「分かったらさっさと去れ」


再び呼び止めたリオダスにが振り返れば、あの底抜けた笑顔があった。

「またな」
「・・・二度と会わないことを祈る」

見送ることないまま、は離れて行く足音をただ聞いていた。
































ーーこれが、再びの再会の必然となる序章。





























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2018.3.31