ーー天敵ーー






















































































































お館様への報告を終え、次の任務に向かう途中。
聞きたくない声が響いた

「よ!。任務終わーー」
ーードンッーー
「ぐえっ」

思いっきり距離を取ったはずだったのに、腹に走った衝撃。
勢い良くスピードを付けてしまった慣性も相まって、女子らしからぬ声が漏れる。

「おいおい、上官を派手に無視しやがって良い度胸じゃねぇか。色気ねぇ声出しやがって」
「・・・ご機嫌麗しゅう音柱様。次の任務があるのでさっさと離しやがれコラです」
「お前、それが久しぶりに会えた相手に対する挨拶か?」

ひくりと口元を引きつらせる上司殿。
それに仕方なくため息をついたは、自分の腹部に回っている逞しい腕を軽く叩いた。

「お久しぶりです、宇髄さん。このゴリラみたいな腕どけてくれませんか?」
「人に頼む時は目を見なさいね」
「人のこと軽々しく持ち上げておいてよく言いますよ」
「だってお前軽いんだもん」
「胡蝶さんならまだしも、一般成人女子を片腕でホールドできる人はゴリラですよ」

ぶらりと宙づりになっているまま、は相手を見上げる。
派手な額当て、白い肌に映える紅紫の瞳、同色の左目の化粧。
この角度から見ても相変わらず整っているな。

「お?どうした?派手に見惚れたか?」
「見惚れてません。
相変わらずイケメンですけど、どさくさに紛れて人の胸揉むの止めて下さい」
ーーペシッーー

鷲掴んでいた手を叩き落とすと、は深く息を吐き天元の拘束から素早く抜け出した。
それが相手には意外だったようで、距離を取った天元から驚きの表情で見返される。

「地味に驚きだな。
そう簡単に抜けれるように捕まえてた訳じゃねぇんだけど」
「呼吸でちょっと体幹をいじったんです」
「ふーん。で、これから茶でもどうだ?」
「本当に人の話は右から左ですね。私これから任務なんです」
「なんだ、そうだったのか?」
「最初に言いました。それにこれからお帰りなら腰に下げたお土産、奥様方にお渡し下さい」
「うおっ!いつの間に!」
「元忍なんですから、私なんかに出し抜かれないでくださいよ」
「派手に喜べ、気を許してやってるんだよ」
「はいはい」

苦笑を返したは踵を返し次の任務へと向かう。
その後ろ姿を見送っていた天元は声を上げた。

!」
「はい?」
「気をつけてな」
「はい、ありがとうございます」

ふわりと花の咲いた笑顔で返し、は手を振る。
が、

「・・・お前、やっぱり今すぐ嫁に来い!」
「だからこれから任務って言ってるじゃないですか!」

突如迫る天元に脱兎の如くは走り出す。
どうやら撒くまで任務に行けそうもないようだ。




























































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2020.4.12