ーー睡眠に勝るものなしーー



























































































































ふぁぁぁ・・・ねむ・・・」

顎が外れそうなほどの大口を開け、あくびを噛み殺しながらはひとりごちた。
欠伸で自然と目が閉じるその僅かな時間でも寝れる。
それほどまでに眠い。
間が悪く任務の連続で、ろくな休息が取れていない。
お陰でずっと徹夜続き。
鉛のように重い足を引きずりながら平坦な道を歩くが、一向に山頂に辿り着かない険しい山道を行進している気分だった。

(「やー、眠すぎると吐き気まであるのかー」)

わーい賢くなったな、ははは。
若干壊れている自覚を持ちながら、自身の鎹鴉から情報があった近くの藤の家へと足を進める。
と、山間から続く山道から人影が現れた。

(「大柄だな、もしかして熊だったりしーー」)
「・・・」
「・・・」

思わず歩みが止まった。
熊かと思ったその人影は、自身と同じくらい疲れた顔をしているような音柱だった。
しばらく互いに無言が続く。
そして先に口を開いたのは向こうだった。

「酷ぇ顔だな」
「そっくり返します」

怒る事もやり取りすら煩わしく、は颯爽と歩き出す。
背後から響く足音は無く、ただ付いてくる気配になんとなく目的地は同じかと思いながらもはただ足を早める。

「何徹だ?」
「未知の4徹目に片足突っ込んでます」
「5徹は死ぬぞ」
「忠告どうも」

いつもなら淡白な返しに面倒な絡みが返るところだが、どうやら向こうもこちらと気持ちは同じらしい。
その後、歩く事こと30分。
ようやく藤の家に到着した。
屋敷と呼ぶには色々不足していたが、眠気が限界でもはやどうでもいい。
こちらの顔を見て屋敷の主も察してくれたらしく、早速部屋へと通される。

「手狭な部屋しか用意できず申し訳ありません、鬼狩り様」
「お気遣いなく、こちらは誰と同室でも構いませんので」
「雨風さえしのげりゃもう何でもいい」

最低限の言葉しか返せない中、主は部屋へと案内を終え去って行った。
は早速部屋の襖を開けた。
そこにあったのは一組の布団。
・・・ついに目まで霞んだのだろうか。

「・・・」
「・・・」

しかし、何度目を擦っても数は変わらない。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

何故、家主が異常に恐縮していたのか今になってやっと合点がついた。
しかし今にも自分を殺しに来るような、じわじわと逃れられない睡魔の波には重い口を開いた。

「提案があります」
「奇遇だな俺もだ」

隣からの応じに、が横を向けば互いに酷いクマを作った顔が声を揃えた。

「起きてから考えましょう」
「起きてから考えるぞ」



































































>翌朝
「眠いとヤる気も起きねぇんだな」
「私も吐くかと思いました、賢くなりましたね」
「つーわけーー」
ーーゴスッ!ーー
「でぇっ!」
「回復されたのは分かりましたからその煩悩は任務に向けてください」




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2021.4.29