ーーメシともーー
久しぶりに休みをもらった。
というかお館様に呼び出しがあって特命の任務かと思い行ってみれば・・・
『休みなさいね』
とただ一言を直々に賜った。
答えは是しかない。
任務ではないというのに、任務以上の疲労感に苛まれているような気がする。
(「ふぅ・・・これじゃ、鬼を狩ってた方が気楽だ・・・」)
その、嫌というわけではないのだ。
有り難い、心の底から。
身内を失った者が多いこの鬼殺隊で、身を案じてくれる者がいるというのは心の支えだ。
何よりお館様は命の恩人でもある、その心遣いは無碍にはできない。
さて、突然いただいた時間だ。
どうしようか・・・
(「訓練?・・・いや、後でバレたら一服盛られそうだから却下だな。
買い物?んー、そんな気分でもないしな・・・なら無難に蝶屋敷の手伝いでもーー」)
「む、そこに居るのは
ではないか」
「あら、ホントだわ!」
お館様の屋敷からの帰り道で会ったのは、炎柱と恋柱。
柱が2人連れとは珍しい、よほどの任務だったのだろうか。
「こんにちは煉獄さん、甘露寺さん。
奇遇ですね、お二人とも任務帰りですか?」
「うむ、下弦を狩ってきたところだ」
(「煉獄さん!さらりと凄い事言っちゃって相変わらず素敵だわ!」)
「それは大変お疲れ様でした、ご無事で何よりです。
甘露寺さんもご一緒だったんですか?」
「ううん、私はちょうど任務の帰りに煉獄さんとばったり〜」
「そうでしたか。お疲れ様でした、お怪我もないようで安心しました」
(「ちゃん、いつも気遣ってくれて優しい!」)
頬を赤らめる蜜璃にが柔らかく笑い返す。
それにさらに顔を染める蜜璃。
可愛いなぁと思いながら、少し高い視線の彼女を抱き締める。
黄色い声を上げて抱き締め返される蜜璃にされるがままのに杏寿郎が訪ねた。
「そういう君はこれから任務か?」
「いえ、お休みになりまして・・・何をしようかと思っていたんです」
「その様子だとまた無理を押して任務を続けていたようだな!」
「うっ」
「ダメよちゃん!ちゃんと休まなきゃ!」
「・・・すみません」
柱2人に迫られては謝罪しか口にできない。
何しろ本気で圧をかけられようなものなら相当精神を抉られる。
特に炎柱からの眼圧は。
「そうだ!だったらこれからご飯でも行かない?」
「ご一緒しても良いんですか?」
「無論だ!」
「大勢の方が美味しいって言うもの、行きましょう」
特に断る理由も無かったので誘われるまま、食事処へとやってきた。
メニューを目で追っていく。
そう言えば、今回は鬼を狩るのに奔走していて食事もきちんと取ってなかった。
どれも美味しそうだ。
「ねぇねぇ、ちゃんはどれにする?」
「そうですね、春物の天婦羅なんて美味しそうですよ」
「見てみて!桜餅もあるわ!」
「食後のお茶受けに合いそうですね。
あ、餡蜜もあるみたいです」
「きゃー!迷っちゃうわ!」
わいわいと話が弾むと蜜璃。
それを見ていた杏寿郎は店内に響く声で言った。
「よし、今日は私が奢ろう!好きなものを食べると言い!」
「煉獄さん!お店の中ですから」
「む!すまん、そうだったな!」
「でも煉獄さん!わ、私たくさん食べるから!」
「私もそこまで甘える訳にはーー」
「うむ!女性は遠慮することない。
ここは私の顔を立ててもらおう」
相変わらずの声量で豪語される。
蜜璃とは顔を見合わせると小さく笑った。
「じゃぁ、お言葉に甘えましょうか」
「はい」
「うむ!二人ともいい子だな!」
大きな手で撫でられる。
実はこの3人の中で最年長だったりするのだが、蜜璃の嬉しそうな顔にまぁいいかとはされるがままに任せるのだった。
>おまけ
「、本当にもう食べないのか?」
「はい、もうお腹いっぱいですから」
「そうなのか?随分小食だな!」
(「この二人と一緒だと小食扱いか。普通に一人前なんだけど」)
「それより煉獄さん、芋羊羹があるみたいですよ」
「よもや!5人前注文だ!」
「甘露寺さん、とりあえず桜餅は20個で良いですか?」
「きゃー!ちゃん、その気遣い素敵だわ!お願い!」
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2020.4.12