ーー心配の裏返しーー



































































































































蝶屋敷の縁側。
診察も終わり、急ぎの急患もない。
うららかな昼下がりを満喫するように、湯呑みを傾けた片方が呟いた。

「不思議ですよね」
「うん?」
さんはどの隊士の方でも人当たり良いじゃないですか。
それがどうしてあの人だけ・・・」

あえて名前を言わないしのぶの配慮には苦笑した。
つい今し方、その『あの人』と少々やりあったばかり。
きっかけは些細なこと、というか常の如く自分が他の隊士を庇っての負傷への小言。
余計なお世話だとオブラートに包んで返したつもりだったが、何が気に入らなかったのか最後は向こうが怒って帰ってしまった。
向こうの剣幕に屋敷の子たちを怯えさせてしまったのは申し訳なかった。
そうですね、と前置きをしたは手元の湯呑みを撫でながらゆっくりと、その気持ちに見合う言葉を紡いだ。

「多分・・・同族嫌悪ですよ」

そんな気がするだけだが。
向こうも自分も命の優先順位が決まっているのだろう。
そして一番は自分ではない。
だから任務で傷付くことさえ厭わない。
だが、向こうと私とでは相手の順位が違う。
それだから毎度毎度、負傷しては難癖をつけてくる。
それをしのぶは気が合ってるとでも言いたいのかもしれない(大変不本意だ)
こちらとしては冗談じゃないし、思いたくもないが・・・
いや、待て。
私はそもそもあんなに難癖を付けてただろうか?
付けたとしても、向こうが意識を飛ばしている時にしか毒々しい事は言った覚えがない。
・・・なんだろう、今更ながらあれだけ自分が怒られたことに腹が立ってきた。

「というか、私があそこまで言われる筋合いないと思いません?」
「そうですね」
「迷惑かけたわけでもないのに、鍛錬不足だの腑抜けだのと、死亡者が出ないだけ僥倖じゃないですか」
「・・・そうですね」
「そもそも柱のくせに末端隊士のところに来る暇あるなら任務行けって話ですよ。
あんたのその行動が柱としの自覚不足だっつーの」
「・・・」
「あー駄目だ、腹の虫が収まらな過ぎます。
しのぶさん、ちょっと全身訓練付き合ってください」
「肋と腕の骨が折れている重傷者の自覚を持ってください。
まだ絶対安静ですからダメです」






































































嫁候補の心配はまだまだ空回り



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2020.8.9