ーー厄介払い?キューピット?ーー
















































































































「きゃあああっ!!!」

蝶屋敷に高い悲鳴が上がった。
それによって、羽を休めていた小鳥達が一斉に羽ばたいていく。
そしてその悲鳴の原因主は、慌てたように口先に指を立てた。

「み、蜜璃さん。落ち着いて」
「だっ、だって! ちゃんのか、か、髪がっ!」
「しー!本気で落ち着いて下さい。じゃないと要らん人がーー」
ーースパーンッーー
「甘露寺っ!!!」
(「嘘でしょ」)

・・・来ちゃったよ。
くらりと重くなった頭を抱える。
どうやって嗅ぎつけたのか、と蜜璃が居る部屋の襖を勢いよく開けたのは蛇柱だった。
げんなり顔のの横で、乱入者である蛇柱、伊黒小芭内は必死に話す蜜璃から事情を聞くと、味方に向けるには相応しくない冷徹な一瞥でを見下ろした。

「ほぉーそれでそんな雑魚鬼をようやく倒したが髪を切られ甘露寺の心労を割いただけでは飽き足らず甘露寺が悲鳴を上げる手間まで取らせたというのか貴様はゴミ屑以下の存在だな屑め今すぐ死ね」
「息つぎなしで言える伊黒さんのその肺活量だけは毎度感心しますね」

ネチネチネチといつもの調子で嫌味の応酬に面倒くさいとの心情をおくびにも出さず、は乾いた笑みを伊黒に返す。
そんな心情を他所に、に後ろから抱き着いた蜜璃が涙目で小芭内に訴えた。

「伊黒さん、 ちゃんの髪がこんなことになっちゃったの!
髪留めも切れちゃったし新しいのを買いに行かないと!」
「そうだな、甘露寺。では今すぐ行こうか」
「とーっても残念なんですが、私はこれから手当てを受けないといけないので、二人でお願いします」
「ええ!でもちゃんの髪留めなのに・・・」
「蜜璃さんが選んでくれたものはどれも素敵ですから、代わりにお願いします」

ふわりと笑ってが蜜璃に言えば、当人は顔を赤らめた。

「きゃ!それなら頑張っちゃう!」
「ついでに、神楽坂に西洋の茶屋ができたそうですよ。
もし良ければどんな感じだったか後で教えてください」
「うん!任せて!行きましょう伊黒さん!」

むん、と力こぶを作った蜜璃は小芭内を連れて颯爽と出て行った。
喧騒から一転、部屋には静寂が訪れる。
もはや小芝居に近いやりとりには小さく息を吐いた。

「ふぅ・・・」
「お見事ですね」

隣部屋の襖が開けられ、新たにもう一人現れる。
応急道具を持ってきたその人、しのぶの登場にはげんなりとした表情のまま口を尖らせた。

「・・・しのぶさん、巻き込まれたくないからって丸投げで成り行き見守るのやめてくださいよ」
「おや、気付かれてしまいましたか」
「・・・」

気付くに決まってる。
じゃなきゃ、ボロボロの隊服のまま手当てもされずに一室に放置されないだろう。
深くため息を吐いたは、ボロボロの隊服を脱ぐとしのぶに背を向けた。
すると、すぐさま曇った声が響いた。

「今回はまた痛々しい色ですね」
「落ちた所が岩だらけでしたから」
「落ちたんですか?」
「子供が最初に落ちそうになって、それを助けようとした親がバランスを崩して、二人に鬼が飛びかかろうとしたのを斬り飛ばして、引き上げようとしたけど間に合わずゴロゴローっと」

その時の一部始終を簡単に説明する。
今回の鬼は雑魚だったが、複数だった事と親子連れを庇いながらの戦い。
滑落した後まで鬼に襲われる不運な巡り合わせ。
おかげで全身打撲に髪を少々切られてしまった。
の背中の手当てをしながら、しのぶは感心したように呟いた。

「それにしても神楽坂に新しい茶屋ができたんですね」
「ええ、西洋らしい茶屋でしたよ」
「でしたって・・・知ってらしたんですか?」
「しのぶさんだってご存知じゃないですか」
「?」
「先週お土産にお渡しした西洋菓子。あの店ですよ」
「あぁ、確かに美味しかったですね」

テキパキとしのぶが包帯を巻き終えた事で、は療養着に着替え始める。
手元の道具を片付けながら、着替え終えたにしのぶは立ち上がった。

「それにしても、よくそんなお店ご存知でしたね」
「先の任務で助けた方が偶然そのお店の方でしたから。
鬼殺隊だと分かればそれだけでサービスもしてくれますよ。
それに雰囲気悪いお店紹介したら、伊黒さんの嫌味が何倍になると思いますか?」
「・・・確かにそうですね」

果てしなく面倒になるのは目に見えている。
何より想い人と連れ合って訪れる際、必ず下見を欠かさない男だ。
納得した風のしのぶは立ち上がると、も続くように腰を上げた。

「さて、しのぶさんのお仕事もひと段落したしお茶にしましょうか」
「ご自身が怪我人の自覚ありますか?」
「全身くまなく痛いですから」






























































>おまけ
ちゃん!はいこれ!」
「わー!綺麗な結紐ですね」
「前と同じ色、丁度見つかって良かったvそれとこれは私からね!」
「良いんですか?」
「うん!ステキなお店紹介してくれてありがとう♪じゃあね!」

>おまけ2
さーん、お届け物ですよ」
「はいはーい。どなたからでーー」
「この縞模様の風呂敷は一体どなたからでしょうね?」
「・・・いや、分かりましたよ。
兎も角、一人では食べきれないので蝶屋敷のみんなで食べましょうか」


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2020.10.17