小休止を取ることになってから、うざったいほどの視線が自分に刺さっている。
いや、そればかりかタチの悪いストーカばりに引っ付いてこられてこちらとしてもそろそろ忍耐の終わりが見えてきた。
「もう・・・そろそろ諦めてくれない?」
ーー昔話ーー
げんなりとした
のジト目。
普段なら臆するというのに、どうやらスイッチが入ってしまったらしい今の彼女に効果はなかった。
「諦めません」
「だから、何度も言わせないでよ。大した話しじゃないってば」
「だったら話してください」
「面倒だからヤ」
「だったら私も諦めません」
「あーもう・・・」
「何騒いでんだ?」
どうやら言い争いに近い声を拾われたらしい。
ユーリの登場に
はつかつかと目標と距離を詰めた。
そして、
ーースパァーーーンッ!ーー
「でっ!!」
不思議顔をしていたユーリの頭を、
は容赦無く引っ叩いた。
当然、憤然とした顔と声が返された。
「ってーな!おい!
いきなり何しやがる!」
「それはこっちのセリフ!
ユーリのお陰でこっちは張り付かれてんのよ、責任取りやがれってんだ」
「はあ?何の話だよ?」
殴られた頭をさすりながら、
の不機嫌顔とその後ろに居るエステルのおろおろした顔。
この2人の組み合わせと、数日前に幼馴染みと昔語りを聞かせた事を思い出し合点がいった。
「どうやら、殴られる心当たりはあるようね」
「殴られる程の事でもねえだろ」
「およ?痴話喧嘩?」
「「おっさんは黙ってろ」」
「・・・ヒドイ」
割り込んできた外野を一喝し、再びユーリと
は向かい合った。
「話してやれよ。エステルは聞きたいんだろ?」
「だーから、面倒なんだってば」
「そんな事言わずに、お願いします」
「いーや」
「もう!
!待ってください!」
逃げ出す
をエステルが追いかける。
2人の後ろ姿をやれやれとばかりにユーリは嘆息して見送った。
その様子を見ていたレイヴンは、よっこいしょと声を上げて立ち上がるとユーリに問う。
「で?何の騒ぎだったワケ?」
「ああ。多分、大した事じゃないだろ。
ちょっと前にオレとフレンがガキん時の話を聞かせた事があったから、同じ事を
にも聞かせてくれって感じだろ」
「ほお〜ん、
の青年と親友君との出会い話しってか。
そりゃ、ちと面白そうだわね」
だいぶ先でまだ応酬が続いてるそれを見ながらレイヴンは楽しげに無精髭を撫でながら呟いた。
夜。
その日は早々にキャンプをすることとなり、早々に食事も終えた。
いつもであれば片付けやらテントを張ったりやらで何かしら忙しいはずだが、何故か今日は全てが終わっている。
「・・・・・・」
後は見張りを立てて寝るばかりだというのに、
の顔には超・不機嫌と書いてるように険しい。
そして、そんな彼女の前に期待顔で鎮座する仲間達の姿。
「じゃ、話してやるから心して聞きなさいよ」
「はい!お願いします!」
「・・・」
日中のやりとりとは打って変わった
の態度に、ユーリは隣に座るレイヴンの脇を小突いた。
「おい、おっさん。一体どんな手使ったんだ?」
「まぁ細かいことは良いじゃないの。おっさんも聞いたことなかったし」
したり顔のレイヴンにいまいち納得できないユーリ。
と、
「何だったら止めても良いけど?」
「もう!二人共静かにしてよ!」
「そうです!せっかく
が話してくれるんですよ」
「嫌々っぽいけどね」
観客となっている他の仲間の言葉にユーリとレイヴンは口を閉じた。
その様子に
は観念し、仕方なさそうに話し始めた。
触発されたぜ第2弾。
2017.10.15
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