暗い・・・どこだ、ここは・・・

    オレはどうしちまったんだ・・・

    ・・・静かだな・・・

    もしかしてここが、地獄ってやつかもな・・・











        ーー・・・リ・・・きて・・・ーー










    ・・・誰だ?こんなとこにいるオレに会いに来るなんざ、物好きな奴だな・・・












        ーー・・・起き・・・光、へ・・・ーー












    光?遠くに見えるあの点みたいなのがなんだってんだ・・・

    罪人であるオレはここに居るべきだろうが












        ーー待ってる・・・皆・・・から、光を・・・ーー












    ・・・しょうがねえな、ったく、体が重いってのに・・・

    っきしょー、届か・・・ねえ・・・




















































        ーー 生きて・・・ユーリ!ーー




































































ーーNo.166 生還 後ーー































































「っ!・・・はあ・・・はあ・・・
・・・オレの部屋、か?・・・なんで・・・」

意識を取り戻したユーリは、ベッドに横になったまま見覚えのある部屋を見回していた。
どうやら今は夜のようで、薄暗い部屋に開けられた窓から結界魔導器シルトブラスティアの術式の淡い光が差し込んでいた。

(「さっきのは夢か?
・・・光を掴んだ瞬間に、体が一気に引き上げられたような感覚になった・・・
それに、あの声は・・・」)

ユーリは天井を見つめていたが、起き上がろうと体に力を入れた。

「くっ!・・・これほど恨まれてたとはな・・・」

痛みに疼く腹部を押さえ起き上がったユーリは、枕元に本が置かれていることに気付いた。

「ん・・・満月の子?
・・・古代の指導者達は生得の特殊な力を持っていた。
彼らは満月の子と呼ばれていた。
ザウデは彼らの命と力とで世界を結界で包み込み、星喰ほしはみの脅威から救ったーー」
「目が覚めたか」

突如入口の扉が開かれ、そこから声がかけられた。
思ってもいなかった人物の登場に、ユーリは僅かに驚きを見せた。

「デューク!?・・・そうか、あんたが助けてくれたのか」
「この剣を海に失う訳にはいかなかったからな」
「まあいいさ、それでも礼は言わせてもらう」

窓際に置かれた宙の戒典デインノモスを手にしたデュークの背中に、ユーリはさらに言葉を投げる。

「ザウデの不落宮は満月の子の命で動いてたのか?」

ユーリの問いかけに、肩越しに振り返ったデュークは頷く。

星喰ほしはみを招いた原因は人間にあり、彼らはその指導者であったという。
償い・・・だったのだろう。
そしてわずかに生き残った満月の子が、始祖の隷長エンテレケイアと後の世界の在り方を取り決めた。
帝国の皇帝家はその末裔だ・・・」
「それが帝国の起こりって訳か。
だからザウデの鍵ともなるその剣が皇帝の証になるんだな」

独白するユーリに、デュークは窓の外へと視線を注ぐ。

「エアルを用いる限り、星喰ほしはみには対抗できない。
あれは、エアルから生まれたものなのだから」
「・・・あんたもあの星喰ほしはみを止めつもりだった。
だからエアルクレーネを鎮めて回ってた、違うか?」
「そうだ」
「なんで帝国やギルドに協力を求めなかったんだ?
そうすればアレクセイを止めることだって出来たかもしれねえ」

訝しむユーリに、デュークは視線はそのままに答える。

「私は始祖の隷長エンテレケイアに身を寄せた。
人間と関わり合うつもりはない。それに人間達は決してまとまりはしないだろう」
「ならどうしようってんだ?星喰ほしはみは古代文明だって手に負えなかったんだろ」
「方法はある」

そう言ったデュークは宙の戒典デインノモスを手にし、ユーリの前を横切るとそのまま部屋の出口へと向かった。
その背中をユーリは呼び止める。

「待てよ。
あんた、人間嫌いみたいだけど、オレ達だって人間だぜ?
なんで宙の戒典デインノモスを貸してくれた?なんで協力してくれたんだよ?」

投げられた疑問に足を止めたデュークは暫くして、振り返った。

「お前達の元にあの者が共に行動をしていた」
「あの者?誰のことだ」
「そして、お前達だけが敢えて始祖の隷長エンテレケイアと対話を試みた。
だから・・・いや、もはや終わったことだ」
「・・・何をするつもりだ?」

視線を厳しくしたユーリに、その顔に何の感情も浮かべることなくデュークは告げた。

「私は世界を、テルカ・リュミレースを守る」
「どういう・・・うぐっ」

立ち上がろうとしたユーリだったが、腹部に走った痛みに立つことができない。
そんなユーリを見下ろしていたデュークは踵を返し、去り際に呟いた。

「それと・・・お前の怪我の手当をしたのは私ではない。
に・・・レイスティークに礼を言っておくことだ」
「なんで の事を知って・・・っ!」

はっとしたようなユーリがデュークに詰め寄ろうとしたが、再び襲った激痛に阻まれる。

「・・・っ、くそ・・・」

その場から消えたデュークに向けてか、自分自身に向けてか、ユーリは悔し気に息を吐くしかなかった。





























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2008.9.4