の言った通り、夜明け近くに達を迎えにラピードがやって来た。
ラピードの案内でクオイの森に辿り着いた達は、一人眠るユーリの姿を認めた。
その姿にカロルは駆け寄ると、肩を震わせ両手で握った大剣を振り上げた。
「・・・ユーリの・・・バカーーーーーッ!!!」
「おわっ!?」
気配を察したのか、咄嗟に起き上がったことによってその攻撃を回避したユーリはすぐに立ち上がると距離を取った。
が、攻撃の相手の姿が誰か分かると、寝起きで動きの鈍い頭をどうにか働かせようとする。
「なっ!え・・・あ?カロル!?」
「バカ!アホ!」
そんなユーリに構わず、カロルはがむしゃらにぶんぶんと武器を振り回し続けた。
その攻撃の対象であるユーリは、体を反らしたりしゃがんだりしながら避け続ける。
訳が分からないユーリは、焦りを見せながらも声をかける。
「ちょ、待てって、おい!」
「言い訳は後で聞いたげる・・・」
「へ!?」
次に聞こえた、少女の声にユーリは自身の背後を伺った。そこには完成させた魔術の火の玉と、怒りの滲む表情があった。
「一回、死んどけ!!」
ーードガーーーンッーー
「ごわっ!!」
魔術の直撃を受けたユーリは、大樹の根本でまったりと胡座をかくレイヴンの前に吹き飛ばされた。
「はぁい、青年。生きてる?」
「・・・た、多分」
レイヴンにどうにかユーリは返事を返した。
地面に転がるユーリをは見下ろしたままリタの魔術に拍手を送った。
「いやぁ〜、怒り効果で火力も三割増しだったわねぇ〜」
「目も覚めたみたいね。良かったわ」
そう言ったジュディスは笑みを浮かべたまま拳をボキボキと鳴らしてユーリに近付いた。
ーーNo.154 合流ーー
皆からのお仕置きを受け終わったユーリは、お座りをしているラピードに半眼を向けた。
「ったくラピード、てめえ見張りはどうしたんだよ」
「あら?八つ当たりなんて大人げないわね。
ラピードは先にした私との約束を守ってくれただけよ?
ね、ラピード」
「ワフ」
に一声吠えたラピードに、ジュディスも頷く。
「ええ、この子が私達を案内してくれたのよ。賢い子ね」
「そこ行くと、どっかの馬鹿は大違い」
腰に両手を当てて呆れ返ったリタはユーリを見やる。
それに同意する返事が返ったり、苦笑がこぼれたりする中、ユーリが苛立ちを滲ませた声を上げる。
「お前ら・・・分かってんのか?
これから、何しようとしてっか本当に分かってんのかよ?」
「分かってないのはユーリだよ!」
普段は声を荒げないカロルの厳しい口調にユーリは面食らった。
「カロル・・・」
「から話は聞いたよ。
でも、ユーリだけで・・・ユーリだけでなんてダメだよ!」
「あんた一人で何するってのよ。
あたしら差し置いて何ができるっていうのよ!」
「ま、要するに、だ。
ひとりで格好つけんなってことよ」
「もう少し信じてみてもいいんじゃないかしら?」
「そうだよ。仲間でしょ!」
カロルの怒りを宥めるように、は小さな肩をポンポンと叩いた。
そして怒るでもなく、呆れるでもなく、ユーリに視線を向けたは微笑を浮かべた。
「ほ〜ら、言った通り怒られた。
歳上の意見は素直に聞きなさいよね」
皆の言葉、思いを知ったユーリは、熱いものが込み上げそれに耐えるように両目を伏せた。
「・・・参ったね」
震える声を押さえ込み、一息吸い込んだユーリは皆に向き直った。
「・・・分かったよ、みんなで行こう。
最後までな」
「うん!」
「当然よ」
「りょーかい☆」
「ワン!」
「そんじゃまぁ、行ってみますか!」
「森を抜ければ、帝都はもうすぐそこよ」
白み始めた空の下、ユーリ達はザーフィアスに向け足を踏み出した。
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2008.8.14