ノードポリカに到着したユーリ達はちらほら見える騎士の目を逃れるようにそのまま宿へと泊まった。
タイミング良く付いたその日が、統領ドゥーチェとの面会を約束していた新月の日だった。




























































ーーNo.115 新月の夜ーー
























































宿屋の前にユーリ達は勢揃いしていた。

「みんな覚悟はいいか」
「・・・い、いいよぉ・・・」
「あんた震えてるわよ」

ユーリの声に震えて答えたカロルにリタが呆れ返る。

「ま、ギルドの大物にして、人魔戦争の黒幕って話しだしな」
「何、相手は同じ人間だ。怖がることはねえって」
「そうそう。それにそこまで固くなっちゃ、話もできないんじゃない?」

レイヴンの言葉で顔を青くしたカロルに同情しユーリと が苦笑をこぼす。

「だ、だって・・・」
「見ろよ、嬢ちゃんは大したもんだ」

レイヴンがそう言ってエステルを見やると、いつもとはほど遠い硬い笑顔が返ってくる。

「・・・わたしも、結構もう・・・いっぱいいっぱいです」
「無理しなくても良いと思うよ」

心配するリタにエステルは首を横に振った。

「もう後には退けません。退きたくありません。
わたし、ちゃんと知りたいんです。自分のことを」
「良い覚悟ね」

ジュディスからの微笑みでエステルは幾分肩の力を抜いた。

「それじゃあ、ベリウスに会いに行くぞ」

ユーリの言葉に一同は頷くと、闘技場都市の統領ドゥーチェがいる部屋へと向けて歩き出した。


































以前訪れた時と同様に、統領ドゥーチェがいる重厚な扉の前にはナッツが立っていた。

「ベリウスに会いに来た」
「あんた達は・・・確か、ドン・ホワイトホースの使いだったか」

記憶を手繰るように言ったナッツにレイヴンは頷いて返す。

「そそ。そゆワケだから通してもらいたいんだけど」

しばらくユーリ達一人一人を見たナッツは とレイヴンを視線で指した。

「そちらの二人は通っても良いが・・・他の者は控えてもらいたい」
「えー!どうしてですか?」
「あたしらが信用できないっての?」
「申し訳ないがそう言うことになる」
「そんな・・・」

ナッツの返答にエステルはショックを隠せない。
その時、扉越しに声が響いた。

『よい、皆通せ』
統領ドゥーチェ!しかし・・・」
『よいというておる』

有無を言わせない統領ドゥーチェの声に、渋々ながらナッツは扉の前から退いた。

「・・・分かりました。
くれぐれも中で見たことは他言無用で願いたい」
「他言無用?どうして?」
「前にも言ったでしょ。それが戦士の殿堂パレストラーレの掟なのよ」

カロルの疑問に がナッツの代わりに答える。
その通りだ、とナッツが頷くとユーリや他の皆も了承した。

「分かった。約束しよう」
「この先に我が主ベリウスはいる。
迷うことはないと思うが・・・」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」

そう言った が扉に手をかけると、明かりのない階段を上り始めた。
























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2008.6.15