翌日、ユーリ達はマンタイクを出発した。
街の出口付近で幸福の市場ギルド・ド・マルシェの商人と入れ違いとなった際、カドスの喉笛が騎士によって封鎖されていると聞かされた。
しかし足を止めるわけにはいかないと、ひとまずカドスの喉笛まで向かうことになった。




























































ーーNo.114 封鎖ーー
























































カドスに到着したユーリ達は岩陰から入口を封鎖している騎士の様子を窺った。

「フレン隊です・・・」

隊服の色が青だったことから、エステルが呟く。

「やっぱりフレン隊がやってたんだね・・・
でも、あの魔物は何?」
「騎士団で飼い馴らしたってところかしらね」

カロルの疑問に が推測を口にする。
ユーリ達の視線の先、カドスの入口を塞ぐように魔物が、その魔物を取り囲むように騎士が隊を組んでいた。
この検問を昔馴染みがやっている、という事実にユーリは嫌そうに顔を歪めた。

「なんか、フレンに似合わねえ部隊になってんな。
・・・まったくフレンのやつ、何やってやがんだ・・・」
「これだけ大掛かりな作戦ならやっぱ人魔戦争の黒幕って話と関係あるのかもねぇ」

レイヴンの言葉に は反論したい衝動にかられたが、ぐっと堪える。

「この検問、どうしよっか・・・」
「こういうのはどうよ?」

カロルの困った声音にレイヴンは岩陰から離れると矢を放った。
止める間もなく放たれた矢は、大人しくしていた魔物の体に突き刺さる。
当然の如く、魔物は暴れ出した。

「な、何事だ!」
「やめろ!暴れるな!」

魔物の周りを囲んでいた騎士らは懸命に落ち着かせようとする。
しかし自分達の体格の何倍もある魔物はなかなか従わない。

「今よ、行きましょ」

ジュディスのかけ声でユーリ達は一斉に走り出した。

「おいおい、おっさんを置いてくなよ!」

レイヴンは自分の仕事ぶりに浸っていたが、置いて行かれたことで慌てて走り出す。
混乱に乗じて騎士の検問をくぐり抜けるユーリ達にようやく幾人の騎士が気付いた。

「なんだ、貴様ら!待て!」
「ユーリ・ローウェル!」

小隊を指揮していたらしいソディアがユーリの姿を認めると憎らしげにその名前を吐き出した。
しかし、ユーリ達の前を阻むものは誰もいない。

「ほんじゃ、がんばって〜!」

そんなソディア達にエールを送るようにレイヴンは宙返りをした後、親指を立ててその場を後にした。









































エアルクレーネの調査もそこそこにユーリ達はノードポリカ側の出口に向けて歩みを止めることなく進んでいた。
漸く出口に近付き、外の光がユーリ達の足元を明るくする。

「隠れて」

ジュディスの言葉で一行は岩陰へと隠れた。
そこから窺うと、入口同様に騎士が出口を固めていた。

「まあ、当然ここも押さえてるわな」
「レイヴン、さっきみたいにうまくできない?」
「まじめな騎士にあまり無体なことはしたくないなあ・・・」

カロルの言葉にレイヴンは顎を擦って答える。
そんなレイヴンに は呆れ返る。

「さっきのフレン隊はまじめな部類に入ると思うけど?」
「それに、あれ、まじめに見えないわよ」

リタが顎で示した先、手にした槍に寄り掛かるようにぐちぐちと文句を並べるアデコールとボッコスがいた。

「私は悲しいのであ〜る」
「なぜに、栄えあるシュヴァーン隊の我らがフレン隊の手伝いなのだ!」
「ええい、文句を言うな!悔しければ、結果を出すんだ!」

そんな二人に小隊長であるルブランが檄を飛ばす。

「いたぞ、捕らえろ!」
「見つかった・・・」

後ろから追跡して来た騎士にユーリ達の姿が見つかり、カロルはどうしよう、と顔色を変える。
その声はユーリ達の前を阻んでいるシュヴァーン隊にも聞こえたようで、アデコールは後ろを向く。

「む、何事であ〜る」
「お前達、そいつらを逃がすな!」

さらに追跡の騎士が増え、ユーリ達は前後を挟まれ隠れる意味を失った。
あきらめたようにユーリはシュヴァーン隊の前に姿を現す。

「お前達は、ユーリ・ローウェル!」
「よう、久しぶりだな」
「そ、それにエステリーゼ様!」

シュヴァーン隊は後ろから追いかけてくる騎士同様にユーリ達と距離を詰める。
逃げ場のない状況にカロルは焦り出す。

「ど、どうすんの!」
「決まってるでしょ。強行突ーー」
「しゃ〜ない!」

が双剣を抜こうとしたその時、レイヴンがシュヴァーン隊の前に出た。
それに驚いた とユーリは制止の声を上げる。

「ちょっ!」
「おい、おっさん!」
「全員気を付け!!」

特攻を仕掛けるものだと思っていた とユーリは、レイヴンの言葉に呆気に取られた。
しかし、レイヴンの言葉に反応したのはユーリに迫っていたシュヴァーン隊だった。

「「「は、はっ!!!」」」

三人は急ブレーキがかかったように足を止め、その場で敬礼した。
その隙を逃すことなくレイヴンは敬礼したままの三人の脇を走り去った。

「なんか知らんが、今のうちだ!」

困惑していたユーリだったが、この好機を逃す手はないと他の皆もレイヴンに続く。
最後尾の が三人の間をすり抜けると、漸くシュヴァーン隊は自分達が何をしたのかに気付き背後から喚き声が響く。
それを気にすることなく、 は走るスピードを上げると先頭のレイヴンを問い詰めた。

「ちょっと!さっきの、なんな訳!!」
「いいから、いいから。今はそんなこと、話してる場合じゃ、ないでしょーが。
さぁ、ぐずぐずしてると、追っ手に追いつかれちゃうわよ」
「しっかり話せるじゃないの!」

いきり立つ に並走したユーリは話を中断させた。

、無駄話は後だ。
騎士団に追いつかれる前に一気にノードポリカに向かうぞ」
「〜〜〜っ!ったく!!」

苛立ちを抱いたまま、 は前を見据えノードポリカにその足を進めた。
























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2008.6.15