ーーNo.98 つながりーー
街の入口でラーギィの服の切れ端を咥えたラピードと合流したユーリ達は、そのまま匂いを追って追跡を開始した。
だがラーギィの姿は見つけられないまま、徐々に山脈に近付きついに洞窟の入口へと到着した。
「結局、姿見つけられずにここまで来ちゃったけど、ここを抜けたのかしらね?」
「でも、ここはカドスの喉笛って言われてる洞窟で、プテロプスって強い魔物が棲んでて危険なところなんだって。
前にナンが言ってた」
の疑問にカロルが指を立てて解説する。
「それを知らなくて進んで行ったのかしら」
「ワン!」
頬に片手を当てたジュディスが呟くと、ラピードが一声吠え洞窟の物陰へと姿を消した。
するとすぐに、物陰から何かを引きずり出した。
「あわわわ・・・は、はなして、く、ください」
引きずり出されたラーギィはどもり口調で抗議の声を上げる。
そんなラーギィを取り囲むようにユーリとレイヴンが詰め寄る。
「隠れてオレ達をやり過ごすつもりだったらしいな」
「さぁて。じっくり話を聞かせてもらわないとな」
「オレ達を闘技場に立たせてどうするつもりだったんだ」
それにならうように
とリタも詰問する。
「それに、ギルドは裏切りを許さない。首領ならよくご存知ですよね?」
「とにかく、箱を返しなさい!」
「ししし、仕方ないですね」
観念したようなラーギィは立ち上がるとそれを合図にしたようにユーリ達の前に赤眼が立ち塞がった。
「海凶の爪!?」
エステルが驚きの声を上げる中、赤眼は襲いかかって来た。
ユーリ達はすぐに打ち倒したが、ラーギィはその隙に姿を消していた。
「遺構の門と海凶の爪はつな
がってたってところか」
「どうしてこう、嫌な予想は当たるのかしらね・・・」
ユーリの言葉に続くように
は頭痛がしそうな額に手を当てる。
「手伝うフリして、研究所のものかすめ取って横流ししてたのね・・・・
許せない・・・あいつら・・・」
「正しいギルドで有名な遺構の門がそんな悪さするなんて・・・」
怒りに拳を振るわせるリタの隣で、カロルは沈んだ気持ちを隠せない。
そんな足が止まった一行から離れるようにジュディスが洞窟内へ足を踏み出した。
それを慌てたようにカロルが引き留める。
「待って、ジュディス!危ないってば!」
「あら、でも追わないと逃がしちゃうわ」
「さっきも言ったでしょ!危険な魔物が棲んでるって!」
叫声を上げるカロルの背中を見たレイヴンはこれ以上の追跡に難色を示した。
「なぁ、もうやめとこうぜ。
俺様、ベリウスに手紙渡す仕事まだなのにノードポリカから離れちゃったら、またドンにしんどい仕事、回されちまう」
「あたしは追いかけるわよ。あんなヤツに遺跡から出た大切な魔導器を好き勝手にさせないわ!
あの箱も返してもらう!」
「わたしも・・・行きます!」
エステルの言葉にリタは驚き、怒ったように説き伏せる。
「何言ってんの!あんたは待ってなさい!」
「待ちません!」
リタとエステルの睨み合いに、ユーリは堪らず笑い声を上げる。
「はっは。こりゃ凛々の明星としてはついて行かざるを得ないぜ」
「・・・そうだね、エステルの護衛がボク達の仕事だもんね」
「みんなで行けば、きっとなんとかなるわ」
カロルとジュディスもユーリに同意を示すと、洞窟の奥へと歩き出した。
レイヴンは両手を後頭部に置き、やる気なく聞き返す。
「ん〜、俺様行かなくていい?」
「ああ。ドンのお使い、がんばれよ」
「こっちは私一人で十分間に合ってるから、そっちの仕事は頑張って〜」
一番後ろになったユーリと
は後ろ手を振り、レイヴンを置いて先へと進む。
「・・・。
・・・・・・なんだよぉ、引き止めてくれよ〜」
情けない声を上げたレイヴンは先に進んだユーリと
の背中を追いかけ走り出した。
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2008.5.14