の予想通り、ラーギィの依頼を受けた凛々の明星は、闘技大会に参戦することになった。
参戦したユーリはトーナメント方式の予選を勝ち抜き、ほぼ無傷のまま大会チャンピオンとの対戦を迎えた。
この大一番、新たなチャンピオンの登場か、はたまた無敗記録の更新かと期待と興奮で会場の熱気も一気に高まる。
さらに観客のボルテージを煽るように司会者のアナウンスが会場内に響き渡る。
『まだまだ盛り上がっていくぜぃ!そう!次こそメインイベント!
紹介しよう、大会史上、無敗の現闘技場チャンピオン!ーー』
達が座るすぐ眼下にいるユーリの対面、そこから騎士服に身を包んだ一人の青年がゆっくりと中央へと歩み出て来た。
見覚えがありすぎるその姿に、エステルは瞠目した。
「え・・・!?」
「はぁ〜、そういうことだったとはね・・・」
頭痛がするような頭を押さえ、重いため息をついた
と反するように司会者の明るい声がそのチャンピオンの名を叫ぶ。
『ーー甘いマスクに鋭い眼光!フレ〜〜〜ン・シ〜〜〜フォ!!
男達よ!燃えたぎる熱き闘志を見せよ!
注目のファイナル〜ファイッ!!!』
ーーNo.96 乱入者ーー
「ちょ、ちょっとどうしよう!?」
「どうにかして、やめさせないと!!」
カロルとエステルが焦ったようにユーリとフレンが戦っている姿を見ながら右往左往する。
しかし、こんな状態で止めさせるなど不可能に近い。
眼下ではユーリとフレンが手を抜いているとはいえ、予選とは比べものにならないほどの剣戟を繰り出している。
「んなこと言っても、こんなんでーー」
「ユーリ〜〜〜・・・ローウェル!!!」
レイヴンの言葉は空から降って来た声によって遮られた。
降って来たそれは
達の下、ユーリとフレンが戦っている間へと降り立った。
突然の事に会場内も先ほどの熱気から困惑が走る。
『こ、これは大変!大ハプニング!舞台上の主役達もお株を奪われた感じか!?』
シナリオと違う展開に司会のアナウンスも言葉が上手く続かない。
「ユーリ!オレに殺される為に生き延びた男よ!感謝するぜ!」
「ちっ、生き延びたのはお前の為じゃねぇぞ」
降って来たそれ。
達にはさっさと縁を切りたい男、ザギがユーリに向かって声高に宣言していた。
「オレを初めて傷付けたお前を、オレは絶対にこの手で殺す!」
「やる気出すなら、もっと別の事にしとけよ」
ユーリはげんなりしたようにザギに言い返す。
そんなユーリを気にすることなく、ザギは自身の左腕を空へとかざした。
「見ろぉ!」
生身の腕とは明らかに違う、肘から指先まで覆う物体に離れているにも関わらず、カロルは思わず身を引いた。
「うわっ、あれ何!?」
「魔導器よ!あんな使い方するなんて!」
厳しい顔をしたリタがカロルに答え、その隣でレイヴンは胸を押さえる。
「なんか気持ちが悪くて、動悸がするわ」
「あの魔導器・・・!」
「あ、ジュディス!」
突然観客席から闘技場へと飛び降りたジュディスにエステルが声を上げる。
そのままにしておける訳もなく、他の仲間も後に続くように飛び降りる。
『こ、こ、これはもう大会の様相はどこへやら!てゆっか私も逃げるべき?』
頼むから察して逃げてくれ、と
は叫び返してやろうと思ったがそんな油断を見せれば目の前の敵は容赦なく攻撃の一手を打込んでくるだろう。
司会者の困惑を他所に、観客は新たな見世物とでも思ったのか、誰一人として逃げ出す者などなく、再び闘技場内を揺るがす歓声に満たされる。
「どうだ、この腕は?お前のせいだ!お前の為だ!
くくくくくっ!」
陶酔するようなザギに対峙するユーリに
達は合流した。
「さぁ、この腕をぶち込んでやるぜ!ユーリ!!」
「しつこいと嫌われるぜ!」
武器を構えたユーリ達に、ザギは狂喜しながら突っ込んで来た。
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2008.5.12