ユーリ達を見送った 達は船の護衛、そして駆動魔導器セロスブラスティアの修理にあたっていた。
すぐに戻るだろうとタカを括り、駆動魔導器セロスブラスティアの修理をしているリタの手伝いをしていた だったが、故障の原因は分からぬまま、ずるずると時間だけが無駄に過ぎていく。

「クゥ〜ン・・・」
「ユーリ達、遅いわね・・・
どう、リタ?原因分かった?」

心配そうに廃船を見上げ鳴き声を上げるラピード。
それに応じるように も船を見上げた後、駆動魔導器セロスブラスティアの前で腕組みをするリタに訊ねる。

「さっぱりだわ。どこも壊れてるところなんてないのに・・・」
「やっぱり、この船に関係あんじゃないの?」

胡座をかいているレイヴンの言葉を否定するようにリタは振り返る。

「な、なに言ってんのよ!そんな非科学的なこーー」
ーーバキバキバキッ、ドゴーーーンッ!ーー
「きゃあっ!」

リタの言葉を遮るように、廃船の中央に立っていたメインマストが突如として折れ、辺りに轟音が響き渡った。
誰かが会話を聞いてしでかしたタイミングの良さに、 は胡乱気な視線をその船へと送る。

「このタイミングでマストが折れるなんて・・・」
「こりゃあ、で〜た〜な〜」
「でてない!科学的に有り得ない!そんなの存在しない!!」

芝居がかったように言うレイヴンに、リタはその声を聞かないように両耳を押さえ目をつぶり大声で打ち消そうとする。
いつもの大人びた反応と違う、年相応の怖がりように は苦笑を浮かべてリタを宥める。

「ちょい、リタ。落ち着いてって。
やっぱりユーリ達が心配だわ、ちょっと行ってみましょう」
「ちょっと!船の護衛はどうすんの」

カウフマンの鋭い問いかけに は申し訳なさそうに眉尻を下げる。

「すみません、私達だけじゃ守りきる自信ないです」
「それにおっさんと ってあいつらのギルドの人間じゃないし〜、この船の護衛なんて知〜ーーいっ!!!

レイヴンの言う事も尤もだと理解している だったが、今後の仕事を円滑に進めるため、レイヴンの足を踏みつけそれ以上口を開く事を制する。

「すぐ戻ってくるので行かせてもらえませんか?
駆動魔導器セロスブラスティアが直らなかったらユーリ達を連れ戻して、人力で他の港に付けますから。
ここで時間を取られ過ぎて、取引先と商談に間に合わなかったら信用問題に関わるんじゃないですか?」
「えー、そんな肉体労働はおっさん、ごめーー」
「もちろん。駄弁ってるコレにも働かせるので」
「酷っ!」

レイヴンの茶々を両断した は、威圧的にならないよう淡々と話す。
そんな にカウフマンの鋭い視線が痛いほど突き刺さる。
だが暫くして、腰に片手を当てたカウフマンは諦めたようにため息をつく。

「・・・はぁ、四の五の言ってる場合じゃないか。
その交渉手腕に度胸、やっぱり幸福の市場ギルド・ド・マルシェに欲しいところね」

カウフマンの遠回しな了承に、 はにこりと笑みを返す。

「光栄です。
けど、こっちの方が性に合ってますんで・・・では、手早く済ませて戻ってきますね」

























































ーーNo.91 亡者の思念ーー



















































フィエルティア号を出発し折れたメインマストを伝って船内に入った 達は、いくつもの扉をくぐり抜けた。
船内は不気味なほど静かで薄暗く、長期間密室だった空気特有の臭いに満たされていた。
警戒しながら進み、目の前に現れたいくつ目かの扉に手をかけ押し開いた。
着いた部屋は上階へ繋がる階段があり、さらに上へと進めそうだった。
階段に進もうとしたその時、 達の対面の扉に近付く物音が聞こえぴたりと足を止めた。

「居るわね」
「い、いるって・・・な、何ーー」
「ならいっちょ片付けましょ」
「亡霊とのご対面〜ってね」
「っ!きゃあぁぁぁっ!!!」
ーードゴーーーンッ!ーー
「どわぁっ!」

悲鳴と同時に目の前の扉が、リタの魔術で吹っ飛ばされた。
そしてそれに巻き添えとなったレイヴンも吹っ飛んだ。
あらら〜と が乾いた笑い声をあげ、ひとまず扉の先へと進んだ。
すると、戦闘態勢のまま固まっている目的の人物らとばったり。
勿論、驚いた理由は火の玉に吹っ飛ばされた扉と一緒に飛んで来たレイヴンのせいだろう。

「お、行方不明者発見、ってね。
無事で何よりだわ」
「おいおい、お前らも来ちまったのかよ」

ユーリの呆れた様子に は肩を竦めるだけで返す。

「こ、こんなところ、早くあそこから出ようよ」

よほど怖い思いでもしたのか、カロルは 達の入ってきた扉を指差す。

ーーキーーー、バタン!ーー

しかしそう言った直後、 達が入ってきた扉が軋む音を立ててひとりでに閉まってしまった。
吹き飛ばされたはずの扉が元に戻ってしまった不気味さにも構わず、
急いでリタが走り寄りドアノブを回そうとするが、押しても引いてもびくともしない。

「ウ、ウソでしょ・・・!」
「きっとこの船の悪霊達が、わたしたちを仲間入りさせようと船底で相談しあってるんです・・・」

本に出てきそうな、しかしそれがぴったりとも言えるようなエステルの言い回しにリタの声が引き攣る。

「へ、へんな想像しないでよっ!!」
「あ、ありえねぇって」

目の前で起きた奇怪現象に年長者であるレイヴンもさすがにどもってしまう。

「そこがダメなら別の入口を探すまでだ」
「そうね、いきましょう」
「幽霊船探索さいか〜い♪レッツゴー!」

しかしそれに臆することなくユーリ、ジュディス、 は探索を終えていない上階へと向けて歩き出した。























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2008.5.4