ーーNo.87 海原の向こうへーー















































トリム港へ到着すると、ユーリ達は宿をとり腰を落ち着けて話をすることにした。
もはっきりとした理由はユーリ達に言っていなかったが、レイヴンが『 の手伝い』と言ってしまったため言わざるを得なくなってしまった。
ま、口止めされてないから良いか、と開き直った はレイヴンの説明にちょこちょこ口を挟みながら話を進めた。
大まかな話を聞き終えると、ユーリは納得したように息を吐き出した。

「なるほどな。ユニオンとしては帝国の姫様がぶらぶらしてるのを知りながらほっとけないって訳か」
「ドンはもうご存知なんですね、わたしが次の皇帝候補であるってこと」
「どうやらそうみたいね」
「・・・・・・」

エステルの言葉を受けて何食わぬ顔で応じる に、一瞥を送ったレイヴンはすぐに話を続ける。

「あー、そうそう。
なもんで、ドンに と一緒にエステルを見ておけって言われたんさ」
「監視ってこと?あんま気分よくなくない?」
「そんなものです?」

監視を受ける当人からの言葉に逆にカロルは固まった。

「あれ・・・?ボクだけ?」
「監視する側の私が言うのもあれだけど、長年軟禁に近い生活だったから、監視って言っても今更なんでしょ」
「ま、ともかく、追いかけて来たらいきなり厄介事に首突っ込んでるし、おっさんついてくるの大変だったわよ」

とレイヴンの説明を聞いてもいまいち納得できていないカロルは首を傾げる。

「・・・でも、どうしてエステルを?」
「帝国とユニオンの関係を考えたら当然のことかもね」
「腹を探り合ってるとこだからなぁ。動きを追っておきたいのさ」

カロルの疑問にリタとユーリが答えると、今度はリタがエステルに話を振る。

「んで、あんたらはフェローってのを追ってコゴール砂漠に行こうとしてると」
「はい」
「砂漠がどういうところか、分かってる?」

真剣な顔でそう聞き返すリタに、カロルはそんなの知ってるとばかりに口を開く。

「暑くて、乾いてて、砂ばっかのところでしょ」
「簡単に言うわね。そう簡単じゃないわよ」

カロルの答えに呆れたリタはエステルに視線を戻す。

「とりあえず、近くまで皆さんと一緒に行こうと思って」
「それから?」
「色々回ってみて、フェローの行方を聞こうかと」

人差し指を顎に当ててそう言ったエステルに、唖然としたリタが漸う口を開いた。

「・・・ツッコみたいことはたくさんあるけど・・・
お城に帰りたくなくなったってことじゃないんだよね?」
「えと・・・それは」
「おっさんとしては城に戻ってくれた方が楽だけどなぁ」

レイヴンの言葉に考え込んだエステルは、暫くして首を横に振った。

「ごめんなさい。わたし、知りたいんです。
フェローの言葉の真意を・・・」
「ま、デズエール大陸ってんなら好都合っちゃ好都合なんだけども」

エステルの答えを予想してか、無精髭を撫でて呟いたレイヴンにジュディスが聞き返す。

「どうしてかしら?」
「ドンのお使いでノードポリカへ行かなきゃなんないのよ。
ベリウスに手紙を持ってけって」
「うわっ、大物だね」

カロルの驚きに片目を瞑ったレイヴンは、懐から出した手紙を器用にユーリに投げ放った。
受け取った手紙に目を走らせるユーリに、今度は が問いかける。

「手紙の内容、レイヴンは知ってるの?」
「ん。ダングレストを襲った魔物に関する事だな。
青年達の追ってるフェローってヤツ。
ベリウスならあの魔物のこと知ってるって事だ」
「こりゃ、オレ達もベリウスってのに会う価値が出てきたな」
「ですね」

手紙から視線を上げたユーリにエステルも同意を示す。

「っつーわけで、おっさんも一緒に連れてってね」
「わかったよ。でも一緒にいる間はちゃんと凛々の明星ブレイブヴェスペリアの掟は守ってもらうよ」
「了解、了解〜。
んでも、そっちのギルドに入る訳じゃないからそこんとこもよろしくな」

手をヒラヒラさせてレイヴンはカロルに応じ、翌朝港へ向かうという事が決まった。























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2008.4.27