「ユーが自由な風ですか。
直に会うのはファーストタイムですね!」
「海凶の爪の首領に覚えてもらえてるとは、光栄、ね!」
イエガーの攻撃を弾き返し、斬りかかってきた赤眼の攻撃を避けた
は後ろへ飛び退る。
そして着地と同時に低姿勢で地を蹴ると、勢いを殺さぬまま赤眼の懐に飛び込み肘を打ち込み
動きが止まった所で背中に踵落としを決め地面に沈ませる。
赤眼を倒した
がちらりと周りに目を向けると敵はユーリが応戦しているイエガー一人だった。
ーーNo.85 追跡ーー
ユーリの攻撃を受け弾き飛ばされたイエガーだが、余裕を崩す事はなかった。
「なかなかストロングですね〜」
「さすが、海凶の爪の首領だけあるわね・・・」
強い、と口に出す事なくそう思った
は油断なく双剣を構える。
ピンと張り詰める中、キュモール隊の騎士が慌てたように駆けてきた。
「キュモール様!フレン隊です!」
「フレンが!」
その名を聞いたエステルの表情が明るくなる。
それと対照的にキュモールは苛立たし気に捲し立てる。
「さっさと追い返しなさい!」
「ダメです、下を調べさせろと押し切られそうです!」
「ちっ、下町育ちの恥知らずめ・・・」
状況の不利を悟ったのか、イエガーは突然武器を収めた。
「何をーー」
「ゴーシュ、ドロワット」
「はい、イエガー様」
「やっと出番ですよ〜」
イエガーの声に応じ、新たに現れたのは10代後半ほどの緋色の髪の少女と、ライムグリーン色の髪の少女二人だった。
敵が増えたかとユーリ達は身構えるが、イエガーからの指示は違うものだった。
「ここはエスケープするのがベター、オーケー?」
そう言った直後、返事をする代わりに弾幕を張り姿を隠すように煙が立ちこめた。
『さあ、こちらへ』
『逃げろや、逃げろ〜!すたこら逃げろ〜』
『今度会ったらただじゃおかないからね!』
煙の向こうからキュモールの叫び声が響く。
ようやく視界が晴れたそこには誰の姿もなかった。
「お決まりの捨て台詞ね」
「そしてお決まりに逃げ足が速い、と。
・・・?どうしたの、ジュディス?」
「いいえ、何でもないわ」
暫く見つめられた事を不思議に思った
は首を傾げるが、ジュディスは首を振るだけ。
特に気に留めなかった
だったが、エステルの慌てたような声が響いた。
「早く追わないと!」
「待って!今のボクらの仕事はティグルさんを助け出すことなんだよ!」
「でも・・・」
カロルの的を射た言葉になおもエステルは言い募ろうとする。
そんなはっきりとしない行動に、リタが頭を掻き決断を迫る。
「あんたたちの仕事とかよく分かんないけど、追うの?追わないの?」
「おとなしくしろ!そこまでだ!」
リタの言葉の直後、ユーリ達の後ろからフレンが駆けつけ、逃げようとしていたキュモール隊の騎士達を取り囲んだ。
ちょうど良いタイミングにユーリはパチンと指を鳴らす。
「お、いいところに来た」
「ユーリか!?」
フレンがユーリに気付いたことが分かると、まだ立つことができないティグルに向かってユーリは声をかける。
「立てるか?」
「あ、ああ・・・」
「悪いが最後まで面倒見れなくなった。
自分で帰ってくれ。嫁さんとガキによろしくな」
「あ、ありがとうございました」
礼を述べたティグルがフレンの元へと走り出したのを見送ると、ジュディスが納得したように頷く。
「追うのね?」
「ああ。もうここはフレンが片付けるだろうしな。
カロル、それでいいだろ?」
ユーリの言葉にカロルはエステルを見てから苦笑をこぼした。
「そうだね。
エステルが今にも行っちゃいそうだもん」
「すみません」
「もう!追うことになったんならさっさと行こ!」
やっと意見がまとまったことで、リタの声を合図にキュモールらを追う為に出口に向かって駆け出した。
「待て、ユーリ!」
「ここの後始末は任せた!」
「ごめんなさいね、フレン。後のことはよろしく頼んだわよ」
「
!」
引き留めるフレンの声を背後にユーリと
は先行したエステル達を追い駆出した。
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2008.4.26