捜索を開始したユーリ達は、結界魔導器のある広場の一角、常に騎士が見張りとして張り付
いている先が怪しいと睨み
ひとまずユーリが斥候として見張りの騎士に探りを入れる。
「ちょっと、この先に行きたいんだけど」
「ダメだダメだ。この先にある労働者キャンプ場は危険だからな」
「ふーん・・・」
それ以上問い質すことなく、ユーリは踵を返すと結界魔導器の陰で成り行きを見守っていた
仲間の元に戻って来た。
「よかった・・・ユーリのことだから、強行突破しちゃうかと思った・・・」
「慎重に、が首領の命令だったからな」
安堵の表情を浮かべたカロルにユーリは苦笑して返す。
「でも、どうやって通ります?」
「やはり強行突破が単純で効果が高いと思うけど」
「私もジュディスと同意見だけど、凛々の明星の首領の意見は・・・」
はジュディスに応じた後、カロルに視線を送る。
「それはだめ、禁止だよ!とにかく見張りを連れ出せればいいんだよ」
「どうやってです?」
力強く強行策を否定したカロルにエステルが問いかける。
暫く考え込んだカロルは言いにくそうにエステルを見上げながら口を開く。
「・・・色仕掛け、とか?」
「はっはっは〜、全くどこでそんな言葉覚えたんだか」
の指摘に顔を染めたカロルはしどろもどろな単語しか出てこない。
そんなカロルを見兼ねてユーリが話を進める。
「じゃあ・・・」
ユーリの視線が女性陣に向けられる。
真っ先に
と視線が合ったユーリだったが、にっこりと微笑を浮かべ笑顔とは裏腹な言葉を返される。
「協力はするって言ったけど、こういうことなら別料金だけど?」
報酬次第なら請け負うという答えに、新生ギルドの財源がある訳もなく。
次にジュディスに視線を向けると先ほどとは違う承知した笑みが返される。
「なら、ジュディスが妥当だな」
「そうね、私が妥当よね」
これで連れ出す役も決まり、見張りの騎士を連れ出す作戦が開始された。
ーーNo.82 作戦開始ーー
そのまま行くかと思いきや、衣装を替えなければプライドが許さない、というジュディスの言葉に店に服を買い付けに行き、多々手直しを加えて、衣装が完成し
ようやく決行となった。
見張りの騎士へ近付くジュディスをユーリ達は結界魔導器の陰から成り行きを見守る。
「それにしても、ジュディスのあの格好。
あれで落ちない人なんていないんじゃないの?」
「とっても可愛いですよね」
いや、そうではなくて、とエステルに突っ込みを入れたくなった
だったがその言葉は飲み込んだ。
際どい場所を際どく隠す衣装は妖艶を超えて淫靡と言ってもいいくらいだ。
その上、ジュディスの豊満な肢体は下心がある男なら瞬殺だろう。
そうこう言っている間に、ジュディスは見張りの騎士の腕を取りこちらへとやってきた。
見つからないように静かに移動し、騎士の背後に立つとユーリが騎士の首に手刀を落とし昏倒させる。
色仕掛け作戦が成功し、
は労いの言葉をかける。
「さすがね、お疲れ様」
「あら、あれくらいならあなたでも簡単でしょ」
「ジュディスみたいに瞬殺って訳にはいかないって」
そんな二人の横で昏倒している騎士に視線を落としたカロルは呟いた。
「こんなのにひっかかるなんて・・・大人って、大人って・・・」
「で、いつまでその格好してる気だ?」
「そうね、目立つものね。お店に預けてくるわ」
ユーリの指摘にジュディスが答えると、エステルがジュディスに訊ねる。
「でも、ジュディスが言ってたいいことって何です?」
「!?」
ジュディスと騎士のやりとりの一部が聞こえてただろうその疑問にユーリは固まった。
そんなユーリを尻目にジュディスと
はにっこりと答える。
「水遊びよ」
「そそ。大人になるとやりたくなるのよ」
「・・・」
二人の答えにユーリは意見することなく沈黙を返すに留めた。
「はい、次はこれ。騎士の格好してた方が動きやすいでしょ」
着替え終えたジュディスが騎士の兜をユーリに渡すと、嫌々ながらユーリが受け取る。
「オレがか?」
「身長的にユーリが適任よね」
の指摘にユーリは諦めたようにため息をつく。
「しょうがねぇか。にしても、よりによって騎士かよ」
文句をこぼしながら着替え終えると、本物の騎士がユーリを仲間と勘違いし詰め所へと連れて行ってしまった。
何でも捕まえた魔導士が暴れて手に負えないということらしい。
呆気にとられた
達はその後ろ姿をただ見送ってしまう。
「連れてかれちゃった・・・」
「そうね、あっという間にね」
「って、ダメじゃないですか!追いかけないと!!」
我に返ったエステルが声を上げると、
達はユーリを追いかけて騎士の詰め所に向かった。
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2008.4.22