ダングレストを後にしたユーリ達は小休止をはさみ、ヘリオードで休憩を取る事にした。
小休止の間、ユーリとカロルは結成するギルドについて取り決めを決めた。
掟は

『ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのために。
義を以て事を成せ、不義には罰を』

とし、それに賛同を示したジュディスもギルドに加わる事となった。
そして、ギルド名を『勇気凛々胸いっぱい団』と命名したカロルだったが、即答でエステルからダメ出し。
その彼女の提案で『凛々の明星ブレイブヴェスペリア』という名を採用することになった。
こうして、カロルを首領ボスとした新たなギルド『凛々の明星ブレイブヴェスペリア』がここに誕生した。


























































ーーNo.81 消える住民ーー



















































日が傾いた夕暮れ時、到着したヘリオードは以前に比べ活気が失せていた。
さほど期間が空いていたわけではないはずだが、異様な様子に無意識に警戒を強める。

「なんだか・・・以前より閑散としてません?」
「ああ。なんか人が少なくなった気がするな」
「まさか、あの噂が本当だったのかな」

カロルが言った『あの噂』という言葉に が反応を示した。

「確か、人が突然居なくなるってヤツよね?」
「ただの噂、ではなさそうね」

寒々とした印象を受ける街中に心配そうに視線を向けるエステルにユーリが代弁するように口を開く。

「ほっとけない」
「え?」
「って顔してるわね」

ユーリとジュディスから視線を向けられたエステルは戸惑うように二人の顔を交互に見やる。

「だったらまず宿に行って作戦会議だね。
魔導器ブラスティアの様子も見に行かなきゃだし」
「だな。エステルのほっとけない病も出ちまったし」

カロルの提案にユーリがからかうように同意を示す。

「だって、ほっとけないじゃないですか」
「わかってるって」
「じゃあ、いこう!宿屋に出発〜」

言い寄るエステルにぞんざいに返したユーリの横でカロルの元気なかけ声が響き、そのまま走って宿屋に向かって行った。
張り切るカロルに呆気に取られたユーリ達は、話を打ち切り宿へ向かうことにした。









































翌日、結界魔導器シルトブラスティアの様子を見に広場まで足を進めた。
街の人に話を聞くとあれ以降、魔導器ブラスティアの異常は収まり暴走はないようだった。
ひとまず安心した、と空に伸びる魔導器ブラスティアを見上げていると、以前ノール港で助けた親子に出会っ た。

「あの時のお姉ちゃん!」

駆け寄ってくるポリーにしゃがんで視線を合わせたエステルは、にっこりと微笑みを浮かべる。

「お元気でしたか?」
「はい。あの時は、本当にありがとうございました」
「お父さんは、一緒じゃないの?」

父親がいない事に不審に思ったエステルが訊ねると、とたんに二人の表情が曇る。

「それが、ティグルの・・・夫の行方は、三日前から分からなくて・・・」

ホントみたいね、と の呟きに応じるようにユーリが頷くとさらに訊ねる。

「心当たりはないのか?」
「はい・・・いなくなる前の晩も、貴族になるためがんばろうとーー」
「ストップ。今、貴族になるって言った?」
「ええ。この街が完成すれば、私達、貴族としてここに住めるんです」

言葉を止めた がケラスの説明に眉根を寄せると、エステルも に続いた。

「それ、ちょっとおかしいです。
『貴族の位は帝国に対する功績を挙げ、皇帝陛下の信認を得る事の出来た者に与えられるものである』です」

エステルの言葉にケラスは気後れながらも言葉を続ける。

「で、ですが、キュモール様は約束してくださいました!
貴族として迎えると!」
「キュモールって・・・騎士団の?」
「はい。この街の現執政官代行です」

エステルの問いかけに頷いたケラスに、ユーリから嫌そうな呟きが漏れる。

「キュモールがねえ・・・」
「騎士も大して務められないあれが?執政官代行?世も末ね・・・」

小声で蔑むように もユーリに応じる。

「けどさ、今皇帝の椅子は空っぽなんだし、やっぱり、おかしいよ」

幼いながら尤もなカロルの言葉にケラスの顔色に落胆の色が浮かぶ。

「そんな・・・じゃあ、私達の努力はいったい。
それにティグルは・・・」
「お父さん、帰ってこないの・・・?」

ポリーの悲し気な眼差しが突き刺さり、エステルは言葉を選ぶようにユーリに振り向く。

「あの、ユーリ・・・」
「ギルドで引き受けられないかってんだろ」

続きを引き継いだユーリがそう呟くと、判断を仰ぐようにカロルに振り向く。
暫く考え込むカロルにエステルはさらに言葉を重ねる。

「報酬はわたしが後で一緒に払いますから」
「えと・・・じゃ、いいよ」
「え?ですが・・・」
「次の仕事は人探しね」

そう言ったジュディスにユーリも口を開く。

「ま、キュモールがバカやってんなら、一発殴って止めねえとな」
「はい。騎士団は民衆を守る為にいるんですから」
「こ、行動は慎重にね。
騎士団に睨まれたら、ボクらみたいな小さなギルド、簡単に潰されちゃうよ」
「大丈夫よ。ギルド同士の協力って事で私も手伝ってあげるから」

噂の真相も確かめたいしね、と が弱腰のカロルを元気づけるように肩を叩いた。


























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2008.4.21