ユーリ達がダングレストに戻ってくると、街中には平原で対立をしていた騎士団が固まっていた。

「あ、騎士団も戻ってきたよ」

カロルの声に集団に目をやると、その中から張り上げた声が響く。

「私は無実です!これは評議会を潰さんとする騎士団の陰謀です!」

半ば裏返っている声に呆れながらリタは腕を組む。

「往生際悪いじいさん」
「・・・フレンは・・・?」
「ここからじゃ見えないな」

フレンを探すエステルに、ユーリは騎士団の方へと歩み進んだ。
さらに近付くと、ラゴウは騎士の周りにいる人集りに諭すように話しかける。

「騎士団を信じてはいけません。
彼らはあなた達を安心させた上でこの街を潰そうとしているのです!」

さも、自分は味方だという口調に は苛立ちが募る。
しかし、そんな言葉を一蹴するかのように淡々とした声が割って入った。

「我等は騎士団の名の下に、そのような不実なことをしないと誓います」

ユーリ達がその声へと視線を向けると、フレンが堂々と歩いてきたところだった。
自分の前に立ち止まったその姿に、ラゴウは自身の記憶から名前を引っ張り出す。

「あなたは・・・フレン・シーフォ!
「帝国とユニオンの間に友好協定が結ばれることになりました」

フレンから聞かされた言葉にラゴウの顔は驚愕に歪む。

「な!そんなバカな・・・」
「今、ドン・ホワイトホースとヨーデル様の間で、話し合いが持たれています。
正式な調印も時間の問題でしょう」

未だに信じられないと言った表情でラゴウは狼狽を隠しきれない。

「どうして・・・アレクセイめは今、別事で身動きが取れぬはず」
「確かに、騎士団長はこちらの方に顔を出された後、すぐに帝都に戻られました」
「では・・・誰の指示で・・・」

ラゴウの問いかけに答える事なく、フレンはただ静かにラゴウを静観する。
ようやく誰から出された指示か思い当たったラゴウは、恨めし気にフレンを睨みつける。

「くっ・・・まさかこんな若造に我が計画を潰されるとは・・・」

それを離れた所から見ていた は、ほっとしたように息を吐く。

「因果応報ね、フレンを見くびった報いとか諸々、裁かれれば良いけど」
「どうかしらね。ああいうのって反省するなんてことしないんじゃない?」

リタの言葉にそうかもしれないわね、と がこぼすと再びため息をついた。

「これでカプワ・ノールの人々も圧制から解放されますね」
「次はまともな執政官が来りゃいいんだがな」
「いい人が選ばれるように、お城に戻ったら掛け合ってみます」
「お城にって・・・エステル、帝都へ帰っちゃうの?」

エステルの言葉にカロルが聞き返すと、エステルは頷い肯定する。

「・・・はい。ラゴウが捕まって、もうお城の中も安全でしょうから」

そう呟くエステルの横顔を見たユーリは視線を街中へ向け口を開く。

「ホントは帰りたくない」
「え?」
「って、顔してる」

指摘されたエステルはユーリを見つめていた視線を外して俯いた。

「そんなこと、ないです・・・」
「ま、好きにすりゃいいさ。自分で決めたんだろ」

突き放すようなユーリの言葉にエステルは自分に言い聞かせるように呟く。

「・・・帰ります。
これ以上フレンや他の方々を心配させないように・・・」



























































ーーNo.74 拘束された黒幕ーー



















































夜になった事で詳しいことは明日ということになり宿で解散となった。
はユニオンへ戻ろうとドアノブに手をかけた。
しかしそのままドアを押す事なく、後ろにいるユーリに振り返る。

「ユーリはさ・・・」
「ん?」

からの声にユーリは気のない返事を返す。
他のみんなはそれぞれ部屋に引き上げたため、フロントには とユーリしか客はいなかった。

「ホントは帰したくない、って顔してたよ」
「んなことねぇよ」

即答したユーリに は苦笑を返す。

「・・・まぁ、ユーリがそれで良いなら構わないけどね」

じゃあね、と は後ろ手に手を振ると宿を後にした。

(「魔核コア取り戻したのに、これ以上付き合わせるわけ、いかねえだろ・・・」)

が出て行ったドアを見つめながら、ユーリはため息をつき自分の部屋へと向かった。
宿を出た は、そのままドアに背を向けた。

(「素直じゃないんだから・・・旅を続けたいなら、一緒に行こうって言えばいいのに」)

エステルもきっと喜ぶ、そう思った は頭をそのまま後ろへ倒し、空を見上げた。
エステルも、と思ったとき瞬時によぎった僅かな胸の疼き。
どういった類いのものか分からなかったが、今はそんなこと気にする気分になれず、考えの隅に追いやる。
結界の術式越しに見えた空は、墨を流したような漆黒の空で星だけが変わらずに瞬いていた。
しばし見つめていた だったが、仕事が済んでいない事を思い出し、視線を引きはがすとユニオンへ向けて歩き出した。

























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2008.4.16