ーーNo.72 窮地の際会ーー















































ユーリ達は階段を駆け上がり、上へ上へと突き進んだ。
そして屋上への扉を開けると、そこにはチェーンソ型魔導器ブラスティアを持ったバルボスが立っていた。

「性懲りもなく、また来たか」
「待たせて悪ぃな」
「真打ちは最後に登場、でしょ」

そう答えたユーリと はバルボスの前に泰然と立ち塞がる。
その二人の後ろからバルボスの魔導器ブラスティアを見つめていたリタは目を見開いた。

「もしかして、あの剣にはまってる魔核コア水道魔導器アクエブラスティアの・・・!」
「ああ、間違いない・・・」

リタの言葉にユーリは頷く。
苛立たし気な視線を向けるバルボスは吐き捨てる。

「分をわきまえぬバカ共が。
カプワ・ノール、ダングレスト、ついにガスファロストまで!
忌々しい小僧共め!」
「バルボス、ここまでです。潔く縛に就きなさい!」
「そう、もうあんた終わりよ」

エステルとリタの言葉にバルボスは高姿勢を崩さない。

「ふんっ、まだ終わりではない。
十年の歳月を費やしたこの大楼閣ガスファロストがあれば、ワシの野望は潰えぬ!
あの男と帝国を利用して作り上げたこの魔導器ブラスティアがあればな!」
(「あの男?」)

バルボスの言葉を聞き咎めた だったが、追及する前にユーリが口を開く。

「下町の魔核コアを、くだらねえことに使いやがって」
「くだらなくなどないわ。これでホワイトホースを消し、ワシがギルドの頂点に立つ!
ギルドの後は帝国だ!この力さえあれば、世界はワシのものになるのだ!
手始めに失せろ!ハエ共!」

バルボスは魔導器ブラスティアをこちらへ向けた。
しかし、ユーリ達はすぐ下の階層へ飛び降り、攻撃の直撃を避ける。
下から見上げるとそれまでユーリ達がいた場所は凄まじい爆発に呑み込まれていた。

「あの剣はちっとやばいぜ」
「やばいっていうか・・・こりゃ反則でしょ」
「圧倒的ね」

魔導器ブラスティアの威力を見せつけられ、ユーリ、レイヴン、ジュディスの口から呟きが漏れる。
バルボスは魔導器ブラスティアを使って悠然と降りてくると、哄笑を上げた。

「グハハッ!魔導器ブラスティアとバカにしておったが使えるではないか!」

さらにユーリ達を取り囲むように周囲に大規模な爆発が立て続けに起こされる。
力の差をありありと目の当たりにしたエステルは愕然とした。

「そんな・・・!」
「どうした小僧共!口先だけか?」

蔑んだ視線を向けたバルボスが、ユーリへと向けられる。

「ふん、まだまだ」

未だに軽口を叩くユーリに注意が逸れたことで はナイフを投げ放つ。
が、バルボスの魔導器ブラスティアによって弾かれる。

「ちっ・・・!」
「ちょこざいな攻撃なんぞ効かん。
お遊びはここまでだ!ダングレストごと、消し飛ぶがいいわ!」

それまでとは比べ物にならないほどの駆動音が鳴り響く。
打開しようとしても、下手に動けばひとたまりもないため動くことができない。
その時、ユーリ達がいた上の階層から声がかかった。

「伏せろ」
「!デューー!」

突如現れたデュークに驚いた だったが、レイヴンに頭を押さえられ強制的に腹這いにさせられた。
デュークは持っていた剣で術式を展開すると、それは瞬く間に楼閣全てを包み、瞬時に魔導器ブラスティアの機能を停止させた。

「何っ!?」

莫大な威力を一気に停止させられたことで、バルボスの持っていた魔導器ブラスティアの筐体はその威力に耐えきれず刃の部分が根本から折れてしまった。
それを確認したデュークはそれ以上のことをするでもなく、踵を返して立ち去っていく。

「全く、ヒマも興味もなかったんじゃないの?」
「レイヴン・・・何すんの、よっ!!

頭を押さえつけられていた は鋭い肘鉄を炸裂される。
鳩尾にクリーンヒットしたそれにレイヴンはくぐもった呻きをもらし撃沈された。

「あいつ・・・!」
「あ、待って!」
「リタ、 、今はよそ見すんな!」

デュークを追おうとしたリタと にユーリは鋭い声を上げる。
不承不承といった呈で二人はバルボスへと視線を戻した。

「・・・くっ、貧弱な!」
「形勢逆転だな」

使い物にならなくなった魔導器ブラスティアに悪態をついたバルボスに、剣を肩に乗せたユーリは言い放つ。

「・・・賢しい知恵と魔導器ブラスティアで得る力などマガイモノにすぎん、か・・・」

そう言ったバルボスは壊れた魔導器ブラスティアを打ち捨て、自身の剣を手に取った。
それに応じるようにユーリ達も武器を構える。

「所詮、最後に頼れるのは、己の力のみだったな。
さあ、お前ら剣を取れ!」

バルボスの声に応じるように、控えていた紅の絆傭兵団ブラッドアライアンスのギルド員が集まり始めた。

「あちゃ〜、力に酔ってた分、さっきまでの方が扱いやすかったのに」
「開き直ったバカほど扱いにくいものはないわね」

回復したレイヴンと呆れ果てたリタが面倒そうに呟く。

「ホワイトホースに並ぶ兵、剛嵐のバルボスと呼ばれたワシの力と・・・ワシが作り上げた『紅の絆傭兵団ブラッドアライアンス』の力。
とくと味わうがよい!」

バルボスのその声によって、戦いの火蓋が切って落とされた。























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2008.4.13