ダングレストに到着したドンと はすぐにユニオンへと向かった。
伝令からの連絡は、帝都から使者が来ておりギルド元首への面会を求めている、というものだった。
ドンはそのまま会談を行う部屋へと向かい、 はその使者を迎えるため客室へと向かった。
客室への扉を開けると、そこにいた人物に は目を瞬かせた。

「君が来ると思ってたよ、
「・・・使者ってフレンのことだったのね」

ソファから立ち上がったフレンはにこやかに に笑いかけた。
準備ができたから、とフレンを伴い並んでドンのいる部屋に向けて廊下を歩き出す。

「そういえば、 には借りがあったね」
「借り?フレンにそんなのあったかしら?」
「この前この街が魔物に襲われた時、ユーリ達を助ける名目ならカドが立たないと・・・」
「さぁ〜て、何の事かしらね〜」

明後日の方向を見ながら振り返る事をしない にフレンは苦笑した。

「立場を悪くするかもしれないのに、ありがとう」
「ちょ!ちょっと、フレンさーん。やめてもらえない、頭を下げる相手が違うって」

歩みを止めて頭を下げるフレンにギョッとして は慌てだす。
顔を上げてくれ、とフレンの両肩を起こそうとすると、にっこりと笑顔を向けられやっとからかわれたと分かった。

「・・・フレンって紳士で礼儀正しいけど、たまにやるこういうのはユーリとそっくりよね」
「そうかい?小さい時からずっと一緒だったからね」

フレンのにこやかな笑顔に毒気を抜かれた は息を吐き出すとそのまま歩き出した。



























































ーーNo.64 帝国からの使者ーー



















































ドンのいる部屋へと案内した はフレンの傍を離れ、ドンの後ろへと控えた。
すでにそこにはドンの孫のハリー、天を射る矢アルトスクの幹部が顔を揃えていた。

「誰かと思えば、この間の騎士の坊主か」
「はっ、先日の出過ぎた振る舞い、お詫び申し上げます」
「堅苦しい御託なんざいらねぇ。用件はなんだ」

先を促したドンに口を開こうとしたフレンだったが先にドンが口を開くことになった。

「よぉ、てめぇら、帰ってきたか」

その声にフレンが振り返ると、ちょうど扉からユーリが入ってきたところだった。
ユーリはドンの後ろに控える に気付いたようだが、状況を察したようで視線で応じるだけに留めた。

「・・・ユーリ」
「なんだ、てめぇら、知り合いか?」

知り合いらしい間柄にドンは問いかける。
その間にユーリ達と何故か一緒にいたレイヴンがドンの隣へと歩いて来た。
なぜユーリ達と一緒に、と訝し気な の視線を受けたレイヴンだったが片目を瞑って微笑を返す。
そんなレイヴンに後で問い詰めてやるとばかりに は目を細めて返し、視線をユーリ達に戻した。

「はい、古い友人で・・・」
「ほぅ」
「ドンもユーリと面識があったのですね」
「魔物の襲撃騒ぎの件でな。で?用件はなんだ?」

ドンは再びフレンに問いかけた。

「いや・・・」
「オレらは紅の絆傭兵団ブラッドアライアンスのバルボスってやつの話を聞きにきたんだよ。
魔核コアドロボウの一件、裏にいるのは奴みたいなんでな」

言葉を濁すフレンに代わりユーリが先に用件を伝える。

「なるほど、やはりそっちもバルボス絡みか」
「・・・ってことは、お前も?」

ユーリの問いかけに頷くと、フレンは数歩ドンに近付き自身の用件を伝える。

「ユニオンと紅の絆傭兵団ブラッドアライアンスの盟約破棄のお願いに参りました。
バルボス以下、かのギルドは各地で魔導器ブラスティアを悪用し社会を混乱させています。
ご助力いただけるなら、共に紅の絆傭兵団ブラッドアライアンスの打倒を果たしたいと思っております」
「・・・なるほど、バルボスか。確かに最近の奴の行動は少しばかり目に余るな。
ギルドとして、ケジメはつけにゃあならねぇ」
「あなたの抑止力のおかげで、昨今、帝国とギルドの武力闘争はおさまっています。
ですが、バルボスを野放しにすれば、両者の関係に再び亀裂が生じるかも知れません」
「そいつは面白くねぇな」

フレンの言葉を聞き、不機嫌そうに眉根を寄せながらドンは低く唸る。

「バルボスは、今止めるべきです」

毅然としたフレンの断言に、顎髭をさすりながらドンは探るように問い返す。

「協力ってからには俺らと帝国の立場は対等だよな?」
「はい」

ドンの視線を正面から受けたフレンは動じる事なく見つめ返し即答する。
暫くの間、しげしげとフレンを眺めていたドンは鼻を鳴らした。

「ふんっ、そういうことなら帝国との共同戦線も悪いもんじゃねえ」
「では・・・」

ドンの答えを聞き、フレンの表情が幾分明るくなる。

「ああ、ここは手を結んで事を運んだ方が得策だ。
おい、ベリウスにも連絡しておけ。いざとなったらノードポリカにも協力してもらうってな」

ドンの指示を受けた伝令が扉に向け走り去った。
























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2008.4.5