翌日、ユーリ達はエステルに会おうと1階に集まっていた。
全員が集まったが、ラピードが先ほどからせわしなく辺りを見回している。
そんな様子を見留めユーリが声をかける。

「どうした?ラピード」
「変な音聞こえない?」
「言われてみればそうね」

カロルに応じるようにリタも頷く。
すると宿屋の主人がこちらへ声をかけてきた。

「ああ。なんでも結界魔導器シルトブラスティアの調子が悪いらしいんですよ」

その言葉を聞いた瞬間、 はすぐにリタの腕を掴み走り出そうとした行動を止める。

「ちょっと、放しなさいよ!」
「まぁ落ち着いてって」
「落ち着いてなんていられないわよ!」

怒号をあげるリタに はマイペースな調子を崩さず答える。
そんな彼女に賛同するようにユーリも続けた。

「騎士団長様だっているんだ。すぐに手打ってくれるだろ」
「リタが出て行って勝手するとエフミドの丘ん時みたいになっちゃうもんね」

カロルの言葉にリタは無言で手刀を落とした。














































ーーNo.53 魔導器ブラスティアの暴走 前ーー









































結界魔導器シルトブラスティアがある広場まで歩いてくると、今度ははっきりと異常な音がそれから出ていた。
少女は今にも制御術式を展開して調整したい、とうずうずしてるのは簡単に見て取れた。
が、そこへエステルが走ってきた事でリタの注意がそちらに向いた。

「リタ、待って下さい!」
「エステル!」

会いに行く本人が来た事で、カロルが嬉しそうに声を上げる。
そんなカロルへにっこりと笑いかけ、エステルはリタに向き直った。

「騎士団の方で修復の手配は整えたそうですから、ここは」
「たまには騎士団の顔、立ててやれよ」
「凡人の活躍の場奪っちゃ可哀想でしょ〜」

三方向から宥められたリタは未だに渋い顔をしていたが、とどめとばかりにエステルが頭を下げる。

「お願いします」
「・・・わかったわよ」

不承不承と納得したリタは魔導器ブラスティアから視線を外し調べる事をやめた。
そんな少女に微笑を返したエステルにユーリが話しかける。

「ふらふら出歩いてて平気なのか?」
「はい。帝都に戻るまで、一緒にいてもいいです?」
「そりゃ、オレは構わないけど」
「じゃ、とりあえずフレンの所に行ってみよっか」

の言葉で一行は騎士団の詰め所へと歩き出した。






































詰め所に到着するとフレンは書面に走らせていた視線をこちらに向けた。

「お疲れ〜、お邪魔するわね」
、何かあったんですか?」

フレンの問いかけに、 は後ろに続いてきた青年を見た。
その視線に倣うようにフレンの視線も動く。

「なんか、結界魔導器シルトブラスティアが変な音出してるけど、平気なのか?」
「それが気になって、わざわざ顔を出したのかい。
相変わらず、目の前の事件をユーリは放っておけないんだな」

呆れとも苦笑ともとれる笑みでフレンがユーリに応じると、それは誤解だとばかりに青年の眉間に皺が寄った。

「いや、オレがっていうかこっちのーー」
「様子がおかしいのは明白よ。あたしに調べさせて!」

ユーリが言い終わるのを待たずに、リタが口を挟みフレンに詰め寄る。
しかし、青年騎士は落ち着き払った態度で否を示す。

「今、こちらでも修繕の手配はしてあるんだ。
悪いが魔導器ブラスティアを調べさせる訳にはいかない」
「なんでよ!」

フレンの言葉にさらに言い募ろうとしたリタだったが、それは辺りに轟いた地響きによって中断された。

「何?」
「今の震動は?」
「もしかして、魔導器ブラスティアか?」

ユーリの言葉を受けリタはすぐに踵を返し外へと走り出した。
そのリタの行動にエステはまさか、と青ざめた。

魔導器ブラスティアに何かあったのかもしれません」
「行くぞ!」
「エステリーゼ様はこちらに!」

皆が一斉に走り出す中、続こうとしたエステルをフレンが制し、一行は街の広場へと急いだ。

























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2008.3.24