廃墟の街カルボクラムからシュヴァーン隊に連行されたユーリ達は長い長い取り調べを受けていた。














































ーーNo.51 新興都市ヘリオードーー









































「続けて18番目の罪状を確認する。」
「はい、どーぞ」

背もたれに全体重を乗せて寄り掛かったユーリはルブランに先を促す。
真面目とはほど遠い態度だが、すでに何度注意しても聞く事のないユーリにルブランは構う事なく書面を読み上げる。

「滞納された税の徴収に来た騎士を川に落としたのは間違いないな?」
「そんなことあったか?あれ、じゃねえの」
「何言ってんのよ。私は巻き込まれただけだし、最終的に蹴落としたのはユーリでしょーが」

ユーリに振られたも声を出すのも面倒だという風に答える。
だが話の中で蹴落とされた騎士であるアデコールは、ユーリのシラを切った態度に指を突きつけた。

「しらばっくれるな!貴様のおかげで私は風邪をひいて、三日間寝込んだのであ〜る」
「・・・で、あといくつあんの?飽きてきたんだけど」
「私は眠くなってきた〜」
「・・・ボクはどうなちゃうんだろう・・・」

アデコールの手を払ったユーリはルブランに聞き返す。
そんなユーリの隣で各々が欠伸したり俯いたり研究書を読んだりしていた。

「反省の色はなし、と調書に残してやるのだ」

そんなユーリ達にボッコスは調書にすらすらとペンを走らせる。

「そういや、おまえらんとこの何もしない隊長はどうした?シュヴァーンつったっけ?」
「偉いからってサボりでしょ」
「我等が隊長を愚弄するか!シュヴァーン隊長は10年前のあの大戦を戦い抜いた英傑だぞ!!」
「・・・」

ユーリとリタの侮辱の言葉にルブランは怒号を上げる。
それをうるさそうな表情を見せたリタは、興味を失ったように再び研究書へと視線を戻した。

「ま、あたしらなんて小物、どうでもいいってことね」
「ええ〜い!次の罪状を確認するのであ〜る!」

アデコールが次を読もうと口を開きかけた時、入口のドアが開いた。
そこから現れた人物にルブランは驚愕し、椅子から慌てて立ち上がった。

「ア、アレクセイ騎士団長閣下!どうしてこんなところに!?」

ルブランの敬礼に片手で応じたアレクセイはそのままユーリへと視線を向けた。

「アレクセイ・・・なんで」
「エステリーゼ様、ヨーデル様、両殿下のお取り計らいで君の罪は全て赦免された」

思わず立ち上がってしまったユーリにアレクセイは落ち着いた声音で話す。
聞かされた内容に今度はルブランが違う意味で怒号を上げる。

「な、なんですとぉっ!こいつは帝都の平和を乱す凶悪な犯罪者でーー」
「ヨーデル様の救出並びにエステリーゼ様の護衛、騎士として礼を言おう」
「こちらを・・・」

ルブランの言葉を制したアレクセイはそのまま後ろに控えていた女性に目配せをする。
すると女性はガルドが入っているらしい袋をユーリに差し出した。
それに嫌そうに眉根を寄せながらユーリは腰に手を当てる。

「そんなもん、いらねえよ。騎士団のためにやったんじゃない。
それより、エステルだが・・・」
「さきほど、帝都に戻る旨、ご了承いただいた」
「えっ!・・・あ、でも、お姫様なら仕方ないか」
「姫様には宿でお待ちいただいている。顔を見せてあげて欲しい」

視線を落とすカロルの肩をポンと叩き、は宿へ行こうと入口へと歩き出した。

「じゃあみんなで行きましょうか」
「待ちたまえ。君、と言ったか。
君に話があるんだが」

声をかけられたは胡乱気な視線を騎士団長に向ける。

「・・・私みたいな小娘に、騎士団長様が直々にお話しですか。
よほど人手が足りないんですね、ここで聞きますんで仰っていただけます?」

皮肉を込めて答えたにルブランが聞き咎め口を挟む。

「お前は!なんという無礼な口のきき方を・・・!」
「いや、君も疲れているだろう。明日で構わない、使いの者に連絡を持たせる」
「・・・そうですか、何もなければ考えておきます」

不審な視線を崩さないはそう答えると、足早に背を向け外へと向かった。



































建物の外に出ると、凝り固まった体を解すようにはめいいっぱい伸びをした。
身体中からバキバキと音が響く辺り、相当凝り固まっていたようだ。
そんなに向かってリタが先ほどのアレクセイの言葉を訊ねる。

「話ってなんなの?」
「こっちが知りたいわよ」
「何かやったんじゃねぇのか?」

ユーリのからかう言葉に、は半眼になって言葉を返す。

「私が犯人だって分かるような証拠、残すと思ってるわけ?」
「何かやったかは否定しないんだ・・・」
「何しろ心当たりがあまりにも多くてね〜」

返された答えにカロルの顔は引き攣った。
もうそれ以上考えるのはよそうと、カロルは話題を変えた。

「・・・エステル、帰っちゃうんだね」
「こればっかりはしょーがないわね。
お姫様を危険な旅に引っ張り回すわけにはいかないし」
「あんた、これでいいの?」

リタに問われたユーリは肩を竦める。

「選ぶのはオレじゃないだろ」
「そりゃ・・・そうだけど・・・」

言い淀むリタに背を向けたユーリはカロルに訊ねた。

「それより、ここはどこなんだ?」
「振興都市ヘリオードだよ。位置的にはトリム港とダングレストって街の間だね。
まだ作られて間もない新しい街なんだ。
この道を東に行けばさっきいたカルボクラム、西に抜けて西北方向に行くとダングレストだよ」

ふ〜ん、と答えたユーリの隣では欠伸を一つ吐く。

「私は先に宿で休んでるから、なんかあれば連絡して〜」

背後から応じた返事を聞きながら、は宿へと歩き出した。

























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2008.3.23