ーーNo.28 新たな手がかりーー








































逃げた男を追って、走っていたユーリ達は魔物に取り囲まれて動けない男を発見した。

「あ、いたよ!」

カロルの声に各々が武器を抜き、群がった魔物を一掃した。
邪魔が入らないことを確認し、リタが男に近づきドスの利いた声を吐き出した。

魔核コア盗んで歩くなんて、どうしてやろうかしら・・・」

もはや殺気すら醸し出しているリタに男は怯え、縮み上がった。

「ひぃいっ!や、やめてくれ!俺は頼まれただけだ・・・
魔導器ブラスティア魔核コアを持ってくれば、それなりの報酬をやるって」

鞘にカチンと剣を納めたユーリは、そんな男の弁解に耳を貸す事なく詰問する。

「おまえ、帝都でも魔核コア盗んだよな?」
「帝都?お、俺じゃねぇ!」
「じゃあ、あなたのお仲間の誰が帝都に行ったのかしら?」

得物を納めず、わざわざ男に見せつけるようにして はすぐに切り返す。
男は忙しなくし視線を彷徨わせ、どもりながらも言葉を続ける。

「あ、ああ!デ、デデッキの野郎だ」
「そいつはどこ行った?」
「今頃、依頼人に金をもらいに行ってるはずだ」

依頼人、と言う言葉に は僅かに眉が上がる。
ユーリはさらに低い声を上げた。

「依頼人だと・・・どこのどいつだ?」
「ト、トリム港にいるってだけで、詳しい事は知らねぇよ。
顔の右に傷のある、隻眼でバカに体格のいい大男だ」
「そいつが魔核コア集めてるってことかよ・・・」

吐き捨てるようにユーリは呟き、消化できない苛立ちに足元の石を踏みにじる。

「ソーサラーリングもどこかで盗んだのね」
「ぬ、盗んでなんていねえ!依頼人に渡されたんだ!!」
「うそね。コソ泥の親玉なんかに手に入れられるものじゃないわ」

リタの追及に男は後ずさるが、すぐに壁に当たる。
逃げる事を諦めていない男に、 は目を細め、冷笑を浮かべた。

「ほ、本当だ!信じてくれよ!」
「あら、自分がやったことを棚に上げて、手放しで信じてくれはないんじゃない?」

心配そうに成り行きを見守るエステルの隣で、それまで黙っていたカロルが声を上げる。

「ねえ、なんか話が大掛かりだし、すごい黒幕でもいるんじゃない?」
「カロル先生、冴えてるな。
ただのコソ泥集団でもなさそうだ」

カロルの指摘にパチンと指を鳴らし、ユーリは男に視線を戻した。

「騎士も魔物もやり過ごして奥まで行ったのに!ついてねぇ、ついてねぇよっ!」
「騎士?やはりフレンが来てたんですね!」
「ああ、そんな名前の奴だ!くそー!あの騎士の若造め!」
「・・・うっさい!」

逆ギレした男に、リタは我慢の限界が来たようで腰に巻いていた帯で殴り飛ばす。
男はそのまま昏倒し、地面に沈んだ。

「ちょ、リタ、気絶しちゃったよ・・・どうすんの?」
「後で街の警備に頼んで、拾わせるわよ」

カロルの言葉に幾分すっきりとした表情でリタが素っ気なく応じる。
は気絶した男を見下ろし、自分の双剣を納めた。
視線は男から外れることがない。

(「特徴は間違いないけど、ノール港は封鎖されてるはず・・・どうやって・・・
まさか、協力者が・・・?」)
「それじゃあ、アスピオに戻るか。 ?」
「・・・ん?あぁ、ごめん、行こうか」

ユーリから声をかけられ、歩き出したみんなに追いつくため慌てて歩み始める。
そんな にユーリは追いつくのを待ち、小声で訊ねた。

「なんか気になる事でもあんのか?」
「ちょとだけ・・・ね。
ま、確信できたら宿辺りで話すわ」

推論じゃあねぇ、と締めくくり は先に進んでいるエステル達の所へ小走りに向かった。

「ったく、仕事絡みだとすぐにこれだ」

宿に着いたところで話す気はないだろう、とユーリは短くため息をつく。
5、6年の付き合いだが仕事に関しては常に一線を引き、決して関わらせようとしない。
信用してないのではなく、迷惑をかけないようにと言うのは分かっているが、もどかしい気持ちが膨らむ。

「ユ〜リ〜!置いてっちゃいますよ〜!」

エステルの声に片手で応じ、考え事を追い払ったユーリは駆け出した。

















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2008.2.10