アスピオから東に向かい、山岳を左手に見ながらユーリ達は歩き続けた。
野原ばかりが目に入っていたが、しばらくすると前方に白い石柱群が見えてきた。
遠くに見える青い海が白い石柱をより際立たせている。
「ここがシャイコス遺跡よ」
リタの言葉を受け、周りを見てみると、確かに遺跡らしい建築物が目につく。
ただ、それらは何が原因か壊れているものがほとんどだった。
「騎士団の方々、いませんね」
エステルが周囲を見回してこぼす。
するとラピードは、地面に伏せの体勢をとった。
それに倣うようにも地面に視線を落とした。
「この足跡、まだ新しいね。数もたくさんあるよ」
「騎士団か、盗賊団か、その両方かってとこだろ」
「きっと、フレンの足跡もこの中にあるんでしょうね」
「多分ね。でもこんなに数が多いんじゃラピードでも追うのは難しいわね」
視線を下に向けながら、言葉を交わしていると先に進んでいたリタから声がかかる。
「ほら、こっち。早く来て」
「モルディオさんは暗がりに連れ込んで、オレらを始末する気だな」
「またそうやって挑発するんだから・・・」
ユーリの言動には呆れ、腰に手を当ててため息をつく。
「・・・始末、ね。その方があたし好みだったかも」
「ぶ、不気味な笑みで同調しないでよ」
「な、仲良くしましょうよ」
ユーリとリタの険悪な雰囲気に、カロルとエステルの顔が引き攣る。
リタも負けず劣らずな様子に、は再び息をついた。
ーーNo.25 白い遺跡ーー
奥に進んでも、入口と同様に誰の姿も見かける事はなかった。
さすがに不審に思い、各々が口を開く。
「騎士団も盗賊団もいねえな」
「もっと奥の方でしょうか?」
「そうは言っても、気配も感じられないのはおかしいんじゃない?」
「誰かいるようには見えないもんね」
4人の言葉を聞き、考え込んだリタは口を開く。
「まさか、地下の情報が外に漏れてんじゃないでしょうね」
その言葉を聞いたはいち早くリタに聞き返す。
「地下ってどういうこと?」
「ここ最近になって、地下への入口が発見されたのよ。
まだ一部の魔導士にしか、知られてないはずなのに・・・」
難しい顔になったリタの隣で、は考え込んだ。
情報が漏れていることを示している事に、埒もない考えが浮かぶ。
(「まさか、ね・・・ここは帝国の力が強いんだから、ギルドが介入するなんて事ないはずだし・・・」)
秘密の情報だと言うのにあっさりと話したことで、ユーリはリタに問いかけた。
「それをオレらに教えていいのかよ?」
「しょうがないでしょ。身の潔白を証明するためだから」
「身の潔白ねえ・・・」
不信感丸出しのユーリの視線を気にせず、リタは大きな石像の下に歩き出す。
も考え込むのをやめ、石像を見上げた。
女性が水瓶を持ち、その瓶からは水が流れ出ている彫刻だった。
像の横まで移動したリタの後ろに付くようにカロルもついて歩いていく。
どうやら、この像の下が地下への入口らしい。
「地面にこすれた跡があるね」
「発掘の終わった地上の遺跡くらい盗賊団にあげてもよかったけど来て正解だったわ」
「なら、早く追いかけないと。
これを動かせばいいんでしょ?」
意気込んだカロルは、重そうな像を賢明に動かそうとする。
が、像は微動だにしない。
頑張っているカロルの横で、ただ見ているだけのユーリ。
その横顔にはじーっと視線を送る。
その視線が外れないことでユーリは、観念したようにカロルの手伝いに加わった。
「ほら、行くぞ。もうちっと頑張れよ」
「あ、う、うん・・・」
男性陣が一緒になって像を押すと、徐々に動き始めた。
「いっしょっ・・・と・・・」
「おら、もう、少し・・・!」
やっと移動させた像の下から、地下に続く暗い入口が顔を出した。
肩で息をするカロルにエステルは心配そうに声をかける。
「カロル、大丈夫です?」
「こ、これくらい余裕だよ・・・はぁはぁ・・・」
「ユーリもお疲れ〜」
「ったく、よく言うぜ」
ユーリの半眼を微笑で受け流し、はリタを顧みた。
「この下がそうなのね?」
「ええ、行くわよ」
リタの声を合図に、薄暗い地下へと足を踏み出した。
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2008.2.8