ーーNo.15 焦る気持ちーー
ユーリと
は軽い食事を済ませた後、エステルが目を覚ますのを待った。
交代で仮眠を取り合い辺りの暗闇が深くなった頃、エステルが目を覚ました。
見張りをしていた
の声でユーリも目を覚ます。
「エステル、気が付いた?」
「大丈夫か?」
「うっ・・・少し頭が・・・・・・でも、平気です。
わたし、いったい・・・」
緩慢に二人に答えながらも、直前までのことを思い出そうとする。
「突然倒れたんだ。
何か見に覚えないか?」
「・・・もしかしたらエアルに酔ったのかもしれません」
ユーリの問いに、エステルは記憶を手繰って答える。
も倒れたときを思い出しながら話を聞く。
「エアルって魔導器動かす燃料みたいなもんだろ?
目には見えないけど、大気中に紛れてるってやつ」
「はい、そのエアルです。
濃いエアルは人体に悪い影響を与える、と前に本で読みました」
「ふ〜ん、だとすると呪いの噂ってのはそのせいかもな」
残念だったな、とユーリは
をからかい、
は肩を竦めて返した。
「ちょっと気になるんだけど・・・
私とエステルってそんなに距離変わらない所にいたわよね?」
「そういえば、そうだな」
確認するような
にユーリも思い出しながら同意を返す。
「じゃあ、意識を失った時間がこんなに差があったのは?
エステル、心当たりない?」
「えっ?さ、さあ・・・
特別何かをしたこともないですし、わたしには分かりません」
「単なる体力的な差とかじゃないのか?
は旅慣れしてるだろうけど、エステルは城ん中にずっといたんだしな」
問いかけられた言葉にややたじろいだエステル。
それに気付いた
だったが、ユーリの揶揄した言葉に半眼を向けた。
更なる追及を逃れるように、エステルは立ち上がり出発しようとする。
が、それをユーリに止められる。
「倒れたばっかなんだ、もうちょいゆっくりしとけ」
「そうはいきません、早くフレンに追いつかないと!」
「濃いエアルに当てられたんでしょ?
数時間で回復するとは思えないわ」
頑なに先を急ごうとするエステルを
も引き止める。
「また倒れて、今度は一晩中起きなかったらどうすんだよ」
「急ぎたい気持ちも分かるけど、今は休むべきよ」
「でも!
・・・そう、ですよね。ごめんなさい・・・」
ユーリと
に窘められ、ついにエステルは折れ、二人の傍に腰を下ろした。
そのエステルにユーリが持っていたニアの実を渡す。
先ほどの事を知らないエステルは素直にその果物をかじった。
「・・・うっ」
「ユーリ・・・だから生はダメだって言ったじゃない」
「はははっ、これで腹ごしらえはやっぱり無理か」
ユーリの行動に
は非難の目を向けるが、ユーリはどこ吹く風である。
「と、とてもおいしいです」
「いや、エステル、無理して食べなくていいから。
口に合わないかもしれないけど、簡単な料理なら作れるからちょっと待っててね」
健気に苦みを堪え涙を浮かべながら食べるエステルに同情し、
はニアの実とハーブティーのカップと交換する。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。それで口直ししてね」
「それにしても、久々に
の料理か。
楽しみ――」
「何言ってるの?作るのはユーリよ」
は当たり前だと言う風に、はい、と道具をユーリに差し出す。
その行動にユーリは諦めたように道具を受け取った。
「へいへい、やらせてもらいますよ。
ちょっと待ってな、サクッと作っから」
「ユーリは料理できるんです?」
目尻の涙を払いながら、エステルはユーリに訊ねた。
「城のコックと比べんなよ。
下町育ちで勝手に覚えた簡単な料理だからな」
「ま、シビアな意見もらった方がやりがい出るでしょ。
じゃ、あとよろしくぅ」
袖を捲り、下準備をしだしたユーリに後を任せ、
は樹に背を預け微睡みに落ちた。
次に
が気付いたのはユーリに肩を叩かれたときだった。
「・・・ん、見張り交代?」
「いや、もう出発しようかと思ってな」
「エステルは大丈夫なの?」
ユーリの後ろにいるエステルに
は問いかける。
「はい、心配かけてごめんなさい」
「はぁ〜、ダメよエステル」
は溜め息をつくと立ち上がり、謝罪を口にしたエステルの両頬をつかんでにっこりと笑いかけた。
「こういう時は『ありがとう』でいいの」
その言葉に驚いたエステルだったが、その言葉を受けて笑顔に変わる。
「はい、ありがとう。
、ユーリ」
「どういたしまして♪」
「気にすんな」
準備が整い、白んできた森をユーリ達は揃って歩き始めた。
Back
2008.1.25