ユーリ達と別れただったが話を聞きに行く気分になれず、
一人になれる場所を求め砦の見晴らし台に向かって行った。













































ーーNo.13 砦の邂逅ーー


































いつもなら騎士が立っているはずだが、先ほどの騒ぎのせいか誰の姿もなかった。
は壁にもたれかかり、ずるずると崩れ落ちた。
そして本来なら砦をすぐに抜けた先にある街をそこから眺めていた。

「未だに吹っ切れないか・・・
魔狩りの剣がやってることなんて、今に始まった事じゃないじゃない・・・」

自分に言い聞かせるようには呟く。
未だにあのギルドの掟は受け付けない。
初めから決めつけて力で捩じ伏せる、それが昔の思い出と相まってフラッシュバックする。
息が詰まるがゆっくりと息を吐き出し、更に深呼吸を繰り返す。
呼吸が落ち着くと視界に白い何かが映ったような気がして視線を巡らせた。
そこには一人かと思ったが、他にも人が居たようだ。
白銀の長髪が風で揺れ、光の加減で赤黒く見えるマントも揺れる。
懐かしい、思い出が掠めた。

「何を見てるんですか?」

懐かしい友人に重なり、話があるわけでもなく思わず声をかけてしまった。

(「どこにいるんだろ、あの人・・・」)

長年、音信不通の友人を思いやる。
思い出されるのは下から見上げる背の高い後ろ姿。
感情の読み取りにくい表情に真っすぐなまでの信念。
一人思い出に浸っていただったが、声をかけられた当人がゆっくりと振り返った。

・・・か?」
「・・・・・・デュ、デューク!?」

予想だにしなかった人物との出会いにが驚きの声を上げる。
しかし、向こうはこちらの困惑は構わないらしい。

「なぜお前がここにいる?
ダングレストに居るのではなかったのか?」
「ちょ、ちょっと待って!ストップ!
10年振りに会ったのに、始めに言うセリフがそれなの!?」

デュークの問いかけには詰め寄った。
先ほどまで抑え込んでいた感情のたかが外れてしまったように、激情に突き動かされる。

「10年前だってそう!
ケガが治った私をダングレストに置いて一人でどっかに行っちゃって・・・」

きっと誰かに聞かれてるような大声だったが、自棄になってか抑える事ができない。
目の前の男の服に皺が寄るのも構わず、キツく拳を握りしめる。

「今まで・・・今まで私がどれだけ心配したと思ってるのよ!!」

会えて嬉しいはずだ。
10年前に別れて以来の邂逅・・・
なのに、口から出るのは素直になれない言葉ばかり飛び出してくる。
怒鳴り散らしたは肩で息をしていた。
あまりにも身勝手な言い分しか言えない子供な自分が情けなく、顔を上げる事ができない。
込み上げてくる感情に視界が歪み、反論しないデュークに更に腹が立った。
沈黙をもって応えていたデュークは、俯いたままのに手を伸ばした。

「・・・大きくなったな、。それに、綺麗になった」
「っ!!」

ついに堪えきれず、歪んだ視界が崩れた。
デュークの頭を撫でる手があまりにも優しくて、頬を伝う滴は止まる事を知らない。
昔そうしてもらったように、優しく頭を撫で続けていた。
しばらくして落ち着いたは、なぜ彼がここにいるのかという疑問が沸く。
それは先ほどの感情とは反対に素直に口を突いた。

「・・・なんで、デュークがここに――」
、お前はこの世界をどう思う?」

涙声で訊ねたを遮り、デュークが問いかけてくる。

「何を、突然・・・」
「10年前にあった事、忘れた訳ではあるまい」
「・・・・・・」

忘れる事など、できるわけがない。
幼い自分の目の前で起こった裏切り、残酷な現実・・・
それを目の当たりにした記憶は、10年経った今でも自身を苛んでいる。
忘れる事ができたら、どれほどの救いとなっただろう。

「・・・それは――」
「私は今、各地で歪みを正している。だが、直に追いつかなくなるだろう」

どういうことだ?
しかし耳に届くのは、感情の読みにくい声。

「その時が来たら、どちらにつくか考えておけ」

はっとして顔を上げると、いつの間にかを安らげていた温かい手はなかった。
周りを見回してもあの懐かしい姿はない。

「考えるって・・・何を・・・」

の呟きに答える声はなく、風がその問いかけを運び去っていった。








































結局、その後どこを捜してもはデュークをいつける事ができなかった。
諦めたはとりあえずユーリ達と合流しようと、待ち合わせの場所へ足を向けた。
そこにはすでにユーリとエステル、ラピードがいた。

「待たせてゴメン。どう、何か分かった?」

近づいてきたの様子にユーリは眉をひそめた。

「・・・、泣いてたのか?」
「へ!?あ〜、違う違う。
さっき風が吹いて思わぬ大きさのゴミが直撃してさぁ〜」

参った参った、と苦笑を浮かべた
明らかに苦しい作り話なのは見え見えだ。
だがそんなにエステルが心配そうに駆け寄ってきた。

「大丈夫です?すぐに水で洗い流さないと・・・」
「ん、平気。さっきやってきたから、すぐに治るよ」

エステルに礼を述べ、未だに釈然としないユーリには続きを促した。

「で、ユーリ?どうだったの?」
「・・・あぁ、こっちから西に行った森を抜けると砦の向こう側に抜けられるって話だ」
「砦の西?なんか、聞いた事あるような・・・」

は記憶を手繰る。
しかし、なかなか引き出す事ができない。

「あ”〜、ダメだわ。
もうちょいなのに思い出せない」
「ま、行った方が早いだろ」

追及を諦めたユーリにはそっと息を吐いた。
と、ユーリを見やると何やら含みのある表情が気にかかり、は目を細めた。

「ねぇ、ユーリ。
一応聞くけど、ここから西の森って情報だけ?他に何か聞いてたんじゃないの?」

の指摘にユーリは驚くも、にやりと笑みを見せた。

「さすが、目敏いな。
まぁ、お楽しみがあるってことを聞いただけだよ」

肩を竦めて答えるユーリにふ〜ん、とは気のない返事を返した。

「ともかく、行きましょう!
時間が開けばそれだけフレンに追いつけなくなります」

エステルの言葉にも最もだと応じ、一行はデイドン砦の西にある森へと向かった。









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2008.1.19