ーーNo.10 鳥籠の外の世界ーー


































地下通路はほぼ一本道で迷う事なく行き止まりに辿り着いた。
そこから上に抜けるための梯子があり、上りきるとそこは水道魔導器アクエブラスティア魔核コ ア探しでやってき た
偽モルディオ邸の庭だった。

「うわ、まぶしっ・・・
あ〜あ、もう朝かよ、一晩無駄にしたな」
「へぇ、城の中にあったのと同じ像なんだ・・・」

凝った体をほぐすように伸びをするユーリの横で は城内と同じ像を見つめる。

「窓から見るのと、全然違って見えます」
「?」
「そりゃ大げさだな。
城の外に来るのが初めてみたいに聞こえるぞ」

エステリーゼの嬉しそうな様子に は首を傾げ、ユーリの指摘を受けたエステリーゼは言葉に詰まる。

「・・・そ、それは・・・」
「ま、お城に住むお嬢様ともなれば好き勝手に出歩けないか」
「は、はい!そうなんです」

急いで同意したエステリーゼに、 は横目で一瞥を送った。

(「まぁ、状況判断だけじゃ何とも言えないし・・・
とりあえず帰って報告して詳しい話を聞いて、かな」)

考えをまとめた はエステリーゼから視線を外し、考え込んで凝った肩を回す。
と、考え事を打ち切ったことで、二人の会話が の耳に届いた。

「――フレンを追います」

これからのことを話しているらしく、そのまま成り行きに耳を傾ける。

「行き先知ってんのか?」
「先日、騎士の巡礼に出ると、話していましたから・・・」
「あ〜、あれか。帝国の街を回って、善行を積んでこいってやつ」

ユーリは昔を思い出したように渋面を作る。
それまでずっと沈黙していた は会話に参加した。

「じゃあ、花の街ハルルに行くんだ?」
「はい。騎士の巡礼では最初にハルルに行くのが習わしですから」
「ちょうど良いわね。今頃はきっとキレイに咲いてるわよ〜」
「となると、結界の外か」

ユーリは顎に手を当て、考え込んでしまった。
そんなユーリの様子が気になってエステリーゼは訊ねた。

「ユーリさんは結界の外を旅した事あります?」
「少しの間だけならな。
興味はあるけど、下町を留守にするわけにはいかないしね。
そういうのは、オレより に聞いた方が詳しい」
「え? の方ですか?」

ユーリとエステリーゼに名前を呼ばれたことで、 は考えを打ち切った顔を上げた。

「ん?私がなに?」

話を聞いていなかった に二人は顔を見合わせて笑った。

「とりあえず、オレも下町に戻るから街の出口まで案内するよ」
「ありがとうございます」

ユーリとエステリーゼで話がまとまり、 は首を傾げるばかりだった。

































モルディオ邸を後にし、ユーリ達は市民街を抜けさらに下町へ歩を進めた。
ユーリは先を歩き、 はエステリーゼに結界の外での一人旅指南講座を開いている。

「なるほど・・・一人旅って思っていたほど簡単なものじゃないんですね」

話を聞いたエステリーゼの顔に不安が広がる。
そんな様子に、 はう〜んと唸る。

「まぁ、私でよければ途中までって条件で一緒に行ってあげても・・・」
「本当ですか!お願いします!!」
「ちょ、ちょっと頭上げてよ!
仕事のついでみたいなもんだし、最後まで行けるわけじゃないんだから!」

あまりに畏まって深く頭を下げるエステリーゼに は慌てふためく。
失言だったか、と思ったが、後悔先に立たず、である。
と、視線を向けた先では明らかにユーリは声を殺して笑っていた。
は一つ咳払いをして、話がそれたけど、と前置きをしてから続きを話しだす。

「えーっと、一人旅は集団でやっていた事を全てこなさないといけないの。
困るのは夜ね、見張りを立てられる訳じゃないから魔物とかの対応――」
「そこの脱獄者!待つのであ〜る!」
「ここが年貢の納め時なのだ!」

中断された は、その声にうんざりするような顔で振り返った。
市民街の入口に見えたのは大声を張り上げる二人組・・・

「ばっかも〜ん!能書きはいいから、さっさと取り押さえるのだ!」

否、三人組が大声を張り上げていた。

「ど、どうしましょう?」

追いつかれたことにより、エステリーゼは焦りだす。

「んなもん・・・」
「そりゃあ・・・」

ユーリと は足元の石を拾い上げ、片手で重さを確かめると同時に振りかぶった。

「こうするに決まってんだろ!」
「こうするに決まってんでしょ!」

二人の投げた石は、綺麗な弧を描き、デコとボコに当たる。

「ごがっ!」
「もふっ!」
「ストライク♪」
「下町に逃げるぞ!」

ユーリはガッツポーズする の腕を掴み、エステリーゼと共に下町の坂を一気に走り出した。






skit
<<オレばっかり・・・>>
「さぁ、ユーリ。先に行って状況確認してきてね♪」
「・・・オレに意見を言う権利は――」
「あるわけないでしょ」
「仕事慣れしてるヤツの方が効率が良いと思うんだけどな」
「はぁ〜、もう少しうまく立ち回れたら脱獄罪の上乗せやら、私があんな格好する必要なかったはずなんだけどなぁ〜
これは特別料金請求すべきかしら?」
「わ、悪かったって。頼むから請求するのだけは勘弁してくれ」
(「こいつの請求はマジであり得ないっての」)



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2008.1.14