「そうそう、お前の所に凄腕の第七譜術師がいるだろ。
相当な美人だって聞いたぞ?相手はもう決まってるのか?」
「・・・」
(「どっから仕入れてくんだ、んな噂・・・」)
ーー余計な虫はお断りーー
カンタビレはかな〜り据わった目で目の前の人物を見据える。
そこに御座すのは、グランコクマ国皇帝ピオニー・ウパラ・マルクト9世その人。
普通ならそんな態度を取ろうものなら、不敬罪でもかけられそうなところだ。
だが、この二人はそんな肩書きの前に幼馴染み。
皇帝たる態度でない目の前の男に、払ってやる敬意なんぞ持ち合わせていない。
何より、他人の目がないのだから余計にだ。
「悪いがあいつは先約済みだ。諦めろ」
バッサリと切り捨てる。
普通なら鼻白むだろうが、相手がコイツでは簡単に退かない。
「何っ!?皇帝の俺と一緒になれば安泰だぞ!」
(「どうだか・・・」)
内心突っ込みを入れ、カンタビレは呆れたように言い返した。
「それを決めるのはピオじゃないだろ」
「相手は?まさか俺が会ったことあるヤツか!?」
「誰が教えるか、本人にも会わせん」
「いいだろ〜、減るもんじゃなし」
「変な茶々を入れられたらかなわん。
そうじゃなくても、あいつは昔気質で見てるこっちがやきもきするほど不器用過ぎる奴だからな」
そう、あいつは色々と気にし過ぎだ。
歳が離れているだの、公私混同は良くないだの、自分は思えていればいいだの・・・
その気があるならさっさと言ってしまえ、と何度か言ったことがあった。
がたいに似合わず、歯切れの悪い答えが返ってきたのはそれほど前のことではない。
(「思春期のガキと同じだ・・・」)
あの時は、もう相手するのもバカらしくなって話を打ち切った。
その時のことを思い出し、飽き飽きしてるカンタビレの心情などお構いなしに、マルクト皇帝は詰め寄った。
「何ぃ!そんな可憐で純情なのか!?」
「・・・」
どうして会ってもいないのに、可憐になる。
まぁ、純情と言えば純情か?
いや、あれはどちらかといえば奥手過ぎるというのが正しい。
「益々、会いたくなった!
、会わせろ!」
「カンタビレだ」
「細かいことは気にするな」
「・・・・・・」
これは完璧に勘違いしている。
が、わざわざ訂正するつもりもない。
それにこのままの方が、こちらとしては安心だ。
そして、カンタビレは決まりきった答えを音にした。
「断る」
誰と誰の事かはおいおい。。。
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2016.5.8