ーーShall we dance?ーー

















































































































(「このご時世に船上仮面パーティーってどんだけズレてるんだろう」)

趣味悪っ、と内心吐き捨てはシャンパンを傾けた。
目の前にはドレスに身を包んだいかにも金持ち階級の者達が談笑していた。
手近の柱に寄りかかりながら、端から呪力を持っているような人が居ないかを探していく。

(「というか、追加応援来るって聞いたけど結局、都合ついた人いたのかな?
居なかったら単独ってこと?
1級相当複数って、完全に私じゃ実力釣り合わないんだけど」)

と、内心ひとりごちたその時。
任務開始時に見つけていた呪詛師の一人が動き出す。
まずい、このまま指を咥えて見ているわけにはいかない。

(「仕方ない。
せめて戦力がどれくらい集まってるかだけでーー」)
「お嬢さん、よろしければ一曲お相手願えますか?」
「願えないです」
「いや、あのーー」
「邪魔、消ーー」
ーーパシッーー

引き離そうとした背後から腕を掴まれ、仮面で隠れた米神がピキッと波打った。

「離ーー」
「踊らないと気取られるかもよv」
「な"!?」

仮面越しでも分かる、無駄にでかい長身と仮面で隠しきれていないイケメン感。
何よりその口元は腹が立つほど見覚えがあり過ぎる。
身動きを止めたに恭しくお辞儀を返した男は手を掴んだまま訊ねた。

「Shall we dance, Lady?」
「…I'd love to-」(棒)

仮面があって初めて良かったと思った。
すーん、と表情筋が死んだ顔で手を取られたまま、優雅な音楽に合わせてフロアへと連れ出される。

「ダンスがお上手ですね」
「・・・私来る必要ありました?」
「勿論!あなたが居なければ寂しくて私の心が凍えてしまいます」
「・・・」

めんどくせー。
ダンスを続ける意味を無くし、フロアを横切りそのまま壁の花を決め込む。
そして自身を壁の前で挟んでいる応援呪術師、もとい一人で任務を片付けられる実力保持者、五条悟を見上げたはあからさまにため息をついた。
しかしのそんな反応さえ面白がっているのが分かってか、ひとまず文句を引っ込ませ視界の端に居るターゲットへと話を移した。

「どうします?」
「んー、このまま眺めてたい」
「は?さっさと五じーー」
「下の名前じゃなきゃバレるかもよ」
「・・・さっさと悟さんの能力で目的の場所へ乗り込んだ方が早いんじゃないですか?」
「やー、もう少し眺めてたいからさ」
「はぁ?これ以上泳がせぁっ!?

首筋を指で撫でられ、妙な声が上がる。
バッと首筋を手で押さえ、やらかした犯人を見上げれば悪戯成功とばかりな口元。
落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け・・・
今は任務中だと震える右拳を理性で宥めながら自分へと言い聞かせる。

「似合ってんね、そのドレス」
「眺めるものが違います」
「少しは照れてよ、さとるんが褒めてるのにv」
「眺めるものが違います」
「分かった分かった、僕が悪かった。顎砕けちゃう」

その言葉にはようやく手を離し、仮面を捨て髪をまとめていたコームを引き抜いた。
まとめてあった髪はするんと落ち、はコームを手の中へと握る。
そして隣に立つ顎元に指型を残した悟は首元のネクタイを長い指を使って緩めた。

「事を起こしたら呪霊使ってくるだろうから、その前に帳は頼むね」
「小細工含め準備はできてますのでその点はご心配なく」
ーーピッーー
ーーズズズズズッーー

コームに付いていたボタンを押すと同時に床が揺れ始める。
一般人が騒ぎ出し案内人らしい者達が甲板へと誘導していく。
その流れをと悟は眺めていたが、流れに逆らうように任務対象が船内へと向かった事で仮面を脱ぎ捨てた悟が動き出す。


「闇より出でて闇より黒くそーー」
ーーパンッ!ーー
「っ!」

銃声が響いた事により、一気にホール内がパニックに陥る。
顔の横を通った銃弾、ではなくそれが放たれた側を見れば屈強そうな武装者がこちらに銃口を向けていた。
げんなりとした表情を浮かべたが船内奥へ進もうとする背中に向かって問うた。

「ちょっと・・・報告じゃ呪詛師だけのはずですよね?」
「うーん、爺共の嫌がらせかな?」
「私めっちゃトバッチリ・・・」
「助けてあげよっか?」
「とっとと行ってください」

胸元の布を掴んだは力任せに下に引っ張って破く。
小気味良い音とその行動に驚いたのか、僅かに敵がたじろいだ。
瞬間、自身の前を覆うようにドレスの下に仕込まれた布を広げる。
やっと我に返ったような敵が発砲をするが時間は十分だった。

ーーパンッ!パンッ!パンッ!パンッ!ーー
「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

広げられた布は弾を通さず、帳を下ろし終えたは印を結び終え立てていた指を下ろした。

「最悪・・・」

がっくりと首を落としたが呟けば、まだ仕事をしていない最強呪術師がこちらを見下ろしていた。

「おー、よく下ろせたね〜。ドレス破ってまでなんて捨て身なのウケるw」
「こんな初っ端から防弾コート使う羽目になるとは思いませんでした」
「その割に用意良かったんじゃない?予想してたわけだ」
「ま、こんな悪趣味な催しをしちゃうあたり、武装した非術者を多少用意してる可能性は持っていましたよ」

ドレスの下に着ていた黒のアンダーとホットパンツの姿となってしまったはうんざりしながらもそう返す。
そしてあられもない姿ではある自覚はあったので、は先程の防弾コートを腰に撒きスカート代わりにする。
そして、太ももに留めていた用意していた呪具を下げたベルトを腰に回し、スカートがずり落ちないようにできたことで立ち上がった。

「というか、あんな重装備の警備の数、私が持ってきた呪具だけじゃ無理なんですけど?
帳上げたら、五条さんの無下限でどうにかしてください」
「何事もチャレンジよ?」
「今回は遠慮します」





























































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2021.10.29