都内郊外、初冬。
廃病院を前に寒空の下、待人の到着を待つ2名。
手持ち無沙汰となったことで、恵は隣に立つに問うた。

さんって、呪力を銃に込めて戦うんですね」
「うん、そうだよ」
「禪院先輩や乙骨先輩みたいな武器は考えなかったんですか?」
「うーん、私には天与呪縛は無い上に女だからね。
力やスタミナ頼りになる刃物より呪力を込める方が長く戦えるからこんな感じになったかな」
「いつから自分のスタイルって決めたんですか?」
「そうだな・・・夜蛾先生に高専を案内してもらって、心ない一言を受けた時かもね」


















































































































ーー尊敬値ーー


















































































































2005年12月。
校庭で午後の実技を受けているのかサボっているのか分かりにくい生徒が、訓練場辺りからこちらへやってくる担任の姿を見つけた。

「あ」
「ん?」
「夜蛾セン、ガキ連れてる」
「ガキ?」

悟の言葉に傑が同じ方向を向けば、担任の正道とその後ろに続く見慣れないブレザーの小柄な体躯。
向こうもこちらに気付いたらしく歩みをこちらに向けた。

「本当だ、高専の子じゃないね」
「ブハッ!隠し子とか?似てねぇー!」
「聞こえてるぞ悟」

すぐそばまでやってきた正道が低い声をあげる。
見上げる形となりながらも、態度を改める様子も見せず正道と後ろに続く来訪者との両者に視線をやった悟は再び吹き出した。

「ブフッ、誘拐してきたんすか?」
「悟、さすがに担任を見てそれは失礼だよ」
「お前もな傑」

苦々しくそう言った正道は小さく嘆息すると、横にずれ自身の後ろで固くなっている少女を悟と傑に紹介した。

「再来年入学予定の生徒だ。
保護者と本人の希望で、早めに呪術師として戦えるかを見て欲しいと言われて高専の中を案内していた」
「へー」
「なら将来の後輩だね」
、こいつらは今年の一年生だ。
入学すればこいつらは三年生の先輩になる」
「せいぜい敬えよ」
「こんにちは。私は夏油傑、隣の偉そうなのが五条悟だよ。
よろしくね」
「は、はじめまして・・・です」

緊張しながらも深々とお辞儀をしたは顔を上げる。
瞬間、視界いっぱい肌が触れそうな至近距離でサングラスをずらした悟の顔があったことで盛大に肩が跳ねた。

ーービクッ!ーー
「・・・」
「こら悟、初対面相手に威圧しすぎだよ」

言葉で制しながらも止めはしない傑。
こちらを見据えてくる透き通った空色には息を呑んだ。
初めて見た吸い込まれそうな瞳に思わず心臓が高鳴った。

(「すごい、綺麗・・・」)

思わず見惚れてしまった。
あの瞳はこの世界をどんな風に見えているのだろうか。
それに何より顔立ちも整っていて身近で見ればドギマギーー

「ダーメだわこいつザコ。呪力弱すーー」
ーーゴンッ!ーー
「いでっ!」

正道からの教育的指導に悟は沈んだ。
・・・あー、なるほど。
これが百年の恋も冷めるというやつか。
一瞬前まで浮つきそうな気分だったのが、中身の差し引きで外見のアドバンテージではカバーできないほど瞬時にマイナスに傾いた。
そしての中で目の前の先輩のポジションは最低ランクになった。
そんなの心情を汲んだのか、正道は拳を作ったままに向いた。

「すまんな、礼儀知らずだがこの二人は呪術師としては実力者だ。
入学したら悪い遊びの手本にはしないようにしなさい」
「・・・はい」

この助言は正しいだろうことが分かり、は首肯を返した。
続く案内にその場を後にした2名を見送り、脳天の痛みに文句を垂れながら悟は不機嫌そうに呟いた。

「夜蛾センには素直って可愛くねぇ」
「10:0で自業自得だね」
「それよか硝子遅ぇ」
「またタバコじゃないか?」





















































当時を懐かしむようにかいつまんで語り終えたは隣を向いた。

「という感じで、会って早々第一印象は最悪な上、五条さんの言われ様に流石にカチンときてね」
「・・・」
「その所為かおかげというか、呪術師として早く戦えるように方向性は結構早く決まったかな。
中学在学中も訓練の一環で弓道部入ってたし」
「五条先生って昔からあんな感じだったんですね」
「昔の破天荒さに比べれば、今は一応それらしく先生やってる方だよ。
呪術界で実力者であることは違わないから」

のフォローに、恵は認めたくないような微妙な表情を浮かべるしかなかった。
それから数十分後。
約束の待ち合わせ時間から大幅に遅れた待ち人がやってきた。

「お疲れサマンサ〜。
、今日は恵のバックアップよろちくびん☆」
「・・・」
「・・・」

開口一番、品のない挨拶になけなしのフォローが全て水泡に期した。
まるでゴミから目を逸らすように悟を視界から締め出した恵は吐き捨てた。

「オレ、心底あんたの事嫌いです」
「会って秒でその返し何で!?」
「ごめん、恵くん。さっきの私の言葉は全て忘れていいからね」
「なんか知らんけど、僕の株が大暴落してる!?」
「グラウンド・ゼロ」
「恵くん優しいね。私は期待値を乗せる地面さえ消えたよ」




























































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2021.12.01