ーー≠デートーー






















































































































都内某所。
任務が無いことで買い物に来ていた一年’sの一人、悠仁が遠目に見知った姿を発見した。

「あ!姉さんがナナミンと歩いてる」
「どれどれ?」
「ほら、あそこ」

指さす方向に、野薔薇と恵も向く。
言葉通り建人はいつものスーツ姿だが、は私服姿で2人肩を並べて歩いていた。

「本当だ。デートかしらね」
「マジで!?」
「・・・」
「傍目にはお似合いよね」
「マジかー!五条先生とよく居るからてっきり先生と付き合ってると思ってた」
「まぁあいつ顔良くてボンボンらしいけど、性格破綻してるから有り得ないでしょ」
「じゃあどっちと付き合ってんの?」
「あたしが知るわけないでしょ」
「お前ら覗きみたいな事してんなよ」

推論討論会を繰り広げる悠仁と野薔薇に、苦い顔で恵が諫めるように言うも、その二人から話が振られる。

「なぁ伏黒はどう思う?」
「ってか、あんただって本当は気になってんでしょ。スカした態度してんな」
さんが誰と付き合ってもオレには関係ねぇよ」
「でも姉さんが彼女とかいいよな」
「虎杖、タッパと尻のデカイ人がいいって言ってたじゃない」
「理想はそれだけど、あの人ってめっちゃ褒めてくれるし気遣いとかすげーんだぜ?」
「まぁ、真希さんもあの人のこと認めてるし、ちょっと分かるかも」
「おい、いい加減行くぞ」
「あ!なんかの店に入る!」
「尾けるわよ!」
「おい!」

まるで条件反射のように動き出す二人を止めることが出来ず、恵も仕方なく2人の後を追うことになった。
三人が対象が入った店の看板が見える位置まで来ると、悠仁と野薔薇は驚きに固まる。

「え、これって・・・」
「指輪買いに来たってこと!?マジ!結婚!?」
「・・・」
「流石に入れないよな」
「当たり前じゃない!鉢合わせたらどうすんのよ」
「・・・おい、帰るぞ」
「伏黒、なんかショック受けてる?」
「何よ、あんたもあの人のこと狙ってたの」
「そんなんじゃねぇよ」

恵が低い声を上げた時、店からと建人が並んで出てきたことで、野薔薇の興奮した声が上がる。

「あ!出てきたわよ」
「ねぇ、指輪買ったら次ってどこ行くの?」
「あたしに聞くなよ」
「釘崎の方が詳しそうじゃん」
「んー・・・まー、結婚式挙げるんだろうから、あとはドレスと式じょーー」

と。
視線の先で七海がの肩に手を伸ばしてた光景に、悠仁と野薔薇は思わず両手を合わせて飛び上がった。

「「肩抱いたーっ!!」」
「・・・」
「ちょ!釘崎見た?見た!?」
「バカ!見たに決まってんでしょ!あれはチョーラブラブね」
「あ!今度路地入った!」
「くそ、おい行くぞ!」
「ええ!?何でここでやる気出したの伏黒!?」
「うるせぇ!」

駆け足で三人が続けば、細い路地の先には廃れたホテル。
しかし、大した時間が空いた訳でもないにも関わらず、尾けてきた2人の姿は無かった。

「・・・見失った」
「いや、なんでここ?」
「なんかおかしいわね」
「玉犬!」
「「ええ!?」」

式神を出した恵にさすがにヤバいと、悠仁と野薔薇が後ろから羽交い締めにし止めにかかる。

「ちょ、伏黒!落ち着いて!」
「式神出したら絶対気付かーー」
ーードゴーーーン!ーー

瞬間、三人の目の前で瓦礫が崩れ落ちた。
大穴が空いた頭上からは、尾けてきた片割れの淡々とした声が響いてきた。

「残り2体で、1体はそっちに向かいました」
『見えています、問題ありません』
「了解です、っと」

次いで乾いた破裂音と、遠くで鈍器のぶつかる鈍い音を最後に騒音は止んだ。
しばらくして瓦礫を踏みしだく音と共に足音が近付いてきた。

「やれやれ、それにしても妙な呪霊でしたね」
「時間内に終われたんです。帳を上げて撤収しましょう」
「そうですね。
あ、今回のBluetoothイヤホンの会話は戦闘中でも問題無かったですけど七海さんはどうでした?」
「格下の呪霊相手だからそこまで動きませんでした。
もう少し検証は必要でしょう」
「やっぱりそうですよね」

並んで歩いてきたと建人は入り口へと戻ってきた。
そしてまるで出迎えるような三人に向け、帳を上げ終えたは首を傾げながら当然の疑問を口にした。

「で、君達何してるの?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」








































































































場所を移し、カフェへとやってきた一行。
順番が回ってきたことで、メニュー前の三人へは明るい口調で言った。

「好きなもの頼んでいいですよ」
「マジっすか!あざっす!」
「遠慮しろ馬鹿」
「いいからいいから、気にしなくていいですよ、本当に。
七海さんはコーヒーで良いですか?」
「ええ、お願いします」

報告するため建人が席を外し、全員分の注文のオーダーを終えると席に着いた。

「それで、なんであんな所にいたんですか?
確か、一年生って今日は任務は無かったはずでしたけど」
「いやー・・・」
「姉さんってナナミンと結婚すーー」
ーーゴンッ!ーー

言葉を濁す野薔薇の横で発した悠仁の言葉に恵から無言の拳が振り下ろされる。
とはいえ、内容はバッチリと聞こえていたは目を瞬く。

「・・・え?」
「すいません、こいつ思ったこと考えなく喋るんで」
「もうここまで来たら聞いた方が早いわよ。
宝石店に2人で入るの見て虎杖が後を尾けようって言い出して」
「はあ!?ナナミンが姉さんの肩抱いたの見てあのホテルに速攻乗り込んだの伏黒じゃん!」
「な"!あれは!」
「そーよそーよ、式神まで出しちゃって一番真相知りたがってたのあんたじゃない」

ギャンギャンと盛り上がって責任転嫁を互いになすりつける三人。
と、そこへ報告を終えたらしい渋い表情を浮かべた建人が合流した。

「皆さん少し声量を落としてください、他の方の迷惑ですよ」
「七海さん」
「何ですか?」

名を呼ばれた建人がに向く。
ちょいちょいと手招きするに怪訝な表情を浮かべた建人だったが、数歩近づいたところで口元の横に手を立てたが騒ぐ三人の理由を一気に告げた。

「私達、結婚すると思われてるみたいですよ」
ーーピシッーー

目に見えて身動きを止めた建人に、騒いでいた三人も瞬時に沈黙した。

「は?」
「ですからこの子たち、あの宝石店の前から私達のこと尾けていたみたいで」
「ふーーーーーっ・・・」

クソデカため息をついた建人は、三人を見下ろすと腕組みをしサングラスを押し上げた格好で低い声を上げた。

「私達はあの宝石店から指輪をカップルで購入し二人っきりとなった条件下で襲ってくる特殊な呪霊の討伐任務を受けただけですが」
「えー!だってナナミン、姉さんの肩抱いてたじゃん!」
「それはこの人が転びそうになったのを支えただけです」
「じゃあなんでわざわざあんなホテルに入ったのよ!」
「近場で広さもある帳下ろせる場所はあそこしかなかったので致し方なく」

建人の後を引き継いで答えたにやっと状況を理解したらしい悠仁と野薔薇は共に頭を抱えた。

「なんだよ、勘違いかよ!」
「うわー!途中のドキドキ返してくれぇ!」
「なるほど、邪推から尾けていたということですね」

建人の図星の指摘に虎杖と野薔薇は目逸らすも、冷ややかな視線は止まらない。
と、ホッとしたような恵の様子に気付いたのか申し訳なさそうには肩に手を置いた。

ーーポンッーー
「ごめんね恵くん、なんか誤解させちゃったみたいで」
「いや、別に・・・」

誤魔化すようにしながらもそっぽを向く恵には嬉しそうに笑みを浮かべる。
と、そんな両者のやり取りを聞いていた悠仁が建人からの空気をものともせず声を上げた。

「あー!伏黒だけ何で名前呼び!?」
「小学生の頃からの付き合いだからかな。任務中だと苗字呼びしてますけど」
「真希さんも名前呼びならあたしも名前呼びがいい!」
「ならオレも!」
「任務外ならそうさせてもらいますね、野薔薇さん、悠仁くん」
「お前らあんまさん困らせんな」
「なーによ伏黒、嫉妬?」
「うるせぇよ」
「ほらほら、追加もデザートも頼んでいいですからそこまでにしてください」

仲裁するようにがメニューを渡せば、瞬時に口論は終わり、目の前のメニューに三人は食い付いた。

「あたしパンケーキ!映えするヤツがいい!」
「なぁなぁ、このオムライスうまそうじゃね?」
「お前まだ食うのかよ」
「じゃあ私はお店で買い物してるので、好きに注文しててくださいね」

そう言ったは近くの店員を呼び、自身は店内へと歩き出した。
建人のオススメの店ということで入ったが、ブーランジェリーの看板を掲げているだけに、どのパンも美味しそうだ。
数日分のまとめ買いをしようかと、悩むの隣で先に選んでいたらしい長身が立った。

「あれではまた騒がしくなりますね」
「はい?」
「あの三人ですよ」
「ふふ、青春じゃないですか。眩しくていいですね」

三人で盛り上がる姿は、小さく胸が痛む疼きを残しながら懐かしい光景が思い出された。
哀愁と懐古がない混ぜになった横顔に言葉を続けられない建人だったが、視線に気付いたのか影が消えた表情のが見上げてきた。

「どうかしました?七海さん」
「いえ。何でもありません」
「・・・」

ふい、と視線を逸らした建人には目を瞬く。
と、そう言えばと思い当たったようなは建人に近づくと声をひそめた。

「今度は2人だけで来ましょうか、建人さん」

他のメンバーが名前呼びだったことに、健人のことも同様にそう呼んでみれば、音を立てたように当人は固まった。
悪い先輩を真似た冗談が成功したことでは楽しげに笑う。

「なんちゃーー」
「では、次のオフにお願いします」

会計のためレジに行ってしまった建人に、冗談が冗談で終わらなかったことに今度はが固まった。

「・・・あれ?」





























































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2021.12.02