ーーキラキラShoppingーー
都内某所。
ショッピングセンター内のとあるアパレル店で取っ替え引っ替えに服を選ぶ女子高生がいた。
「ねーねー真希さん、これどう?」
「お、いいんじゃね?こっちもありだと思うがな」
「確かに〜」
「ちょ!ちょっと待った!」
と、明るい楽しげなやり取りの声に焦った声が静止をかけた。
「ん?」
「何だよ?」
当然ながら疑問符が返される。
しかし話の方向性が自分に向いている事を知っているは、当初の話を真希と野薔薇に再度告知する。
「いや、今日は二人の服を買いに行こうっていう話で、私は除がーー」
「なーに言ってんのよ。あたし達だけの分選んでもしょうーがないじゃない」
「そうそう。財布の礼にうちらがコーディネートしてやるよ」
「違う違う、そういうの厚意だけで十分。
あと10代の服はマジ無理だから」
「だいじょーぶ。さんならまだイケる」
「そうだよ。たまには冒険した服装してみないとな」
現役ティーンのキラキラ視線が刺さる。
こういう星がきらめくようなイベントに慣れないは、根負けし降参したように肩を落とした。
「・・・なるべく大人しいのでオネガイシマス」
数十分後。
選ばれた服のを試着するよう試着室へと押し込まれる。
乗り気でなかったが折れたのは自身でもあったので仕方なく着たが、着終えて鏡に映る装いには早々に自身の発言を悔やんだ。
両肩からデコルテにかけてガッツリと肌が見えているオフショルダーのワンピース。
彼女達と同じ10代時代でも着なかったそれに、普段は冷静なも思わずさらけた肌を隠そうとするも、いかんせん出ている面積が広すぎて両手でもカバーしきれない。
「ちょっ!待って!流石にコレは恥ずかしい!」
「えー、可愛いじゃん。ってかそんな格好されると見てるこっちがハズいわよ」
「そーそー、隠すと余計注目されっぞ〜(おもれー)」
「二人共、私一応先輩だからね!?なっ!野薔薇さん、何で撮るの!」
「野薔薇ー、靴はどっちがいいと思う?」
「お願い聞いて!」
脱ごうとしても試着室から連れ出されてはどうにもできない。
いつの間にか会計まで済まされ、店の外のベンチに座らされ背後の二人からきゃっきゃっと髪型までいじられる始末。
「・・・分かった、この後、話題のカフェも付けるからさっきの写真は削除しよう」
「えー、この後は三人で買った服で写真撮るからダメー」
「行くなら普通に上のレストランフロアでいいだろ、移動時間勿体ねえ」
「・・・現役ティーン・エイジャーに挟まれる成人の気持ち考えて・・・」
「「却下〜」」
声を揃える女子達に、自身のかつての学生時代と同じような思いをしたことと重なりは苦々しく呟いた。
「はあぁ・・・二人共、さすがは五条さんの生徒だね・・・」
「えー、ひどーい」
「うちらのことそこまで言うか?」
「そうよそうよ!さとこショックゥ〜」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
突然、割り入ってきた声に真希と野薔薇の2人は音源に向き、は盛大に項垂れた。
「おい、何でここに粗大ゴミが居やがる。野薔薇、写真送ったのは一二年じゃねーのか?」
「いや間違いなく一二年だけで・・・げ、虎杖が五条にも見せたって今メッセ来た」
「帰れバカ目隠し。これから女同士で茶ぁすんだよ」
「えー!せっかくここまで足運んだのにぃ〜」
「キショイ」
「それにもうみんな呼んじゃったよ」
「!?」
「はぁ?みんなって誰よ?」
「おー、いたいた。釘崎、真希先輩!」
「虎杖、煩ぇ。声量落とせ」
「五条さん、あなたいきなり消えるの止めてください」
一気に増えた観客に、は余計に顔を上げられず頭を抱えるしかできない。
というか、自身の今の格好を他の知り合いに知られたと言うだけで恥で死ねる。
「・・・(飛び降りたい)」
「ちょっと!なんでゾロゾロ来てんのよ!」
「お前らの所為でが死にそうだぞ」
「ウケる〜、硝子にも送ってやろw」
「なっ!?やめーー」
ーーズルッーー
ーードンッーー
カメラを構えたであろうその人の行動を阻止しようと慌ててが立ち上がろうとした。
しかし、普段履き慣れない高いヒールに思わずよろけ誰かに受け止められる。
「ってて・・・」
「大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございま・・・」
「ぶはっ!子鹿かよw」
「下ろしたてだからですよ!」
からかう悟には声を荒げる。
とはいえ、建人に支えられながらの反論は威力は無いに等しい。
と、不可抗力とはいえ立ち上がってしまったため衣装のお披露目となり、素直第一号の悠仁が感心したように声を上げた。
「おー、姉さんのそういう格好初めて見た!可愛い!」
「ふふん、どうよ。真希さんと二人でプロデュースしたのよ」
「・・・野薔薇さん、どや顔するところじゃない」
「印象変わるっすね、な?伏黒?」
「・・・いいと思います」
「ちょ、七海さん。上着脱いで貸してください。このままだと羞恥で死ねます」
「お似合いですからどうぞそのままで」
「なっ!五条さんみたいな性格悪いこと言わないで下さい!」
「えー、僕の悪口言うなんて失礼な後輩だな〜」
晒し者状態の中、周りからの口々の言葉にの我慢も限界となった。
こんな公開処刑が自分一人だけなんて冗談じゃない、と半ばヤケで悟と建人の背中を現役女子高生の前に押し出した。
「・・・なら、こっちの大人組にもティーン・エイジャーから普段着なさそうなのコーディネートしてもらいましょうか。
財布はこちらの最強なさとこ先輩持ちで!」
「っしゃ!」
「おう、やったるか!」
標的が移ったことで、はやっと肩の力を抜いた。
視線の先では、最強の財布が出資元となってるからか、あれやこれやと楽し気に服を選んでいる。
と、
「私まで巻き込まないでください」
後ろから響いた不機嫌そうな声に振り返れば、どうやら逃げ出してきたらしい建人が立っていた。
しかし、先程のことがありはふい、とそっぽを向いた。
「たまには可愛い後輩と触れ合ってくださいよ」
「これは触れ合いではなく生贄ですよね?」
「上着貸してくれなかったので、これでチャラです」
「・・・それは失礼しました」
ーーふわっーー
肩に触れる柔らかい感触。
思わず視線を落とせば、薄手のストールが肩に掛けられていた。
「・・・え?」
「店内は冷房が効いていますからこちらを羽織っていて下さい」
「え・・・」
「私の上着より、こちらの方がお似合いですよ」
「こ、これ・・・」
「偶然あなたの服装に合いそうなものを見かけたもので」
いや、この服買ったのついさっきだ。
”偶然”なはずはない。
わざわざ買ってくれたことが分かって、の顔に熱が集まった。
「おや、どうかしましたか?」
「どっ!?どうもしてない、です」
「どうもしてないのに顔が赤いようですが?」
不敵に笑う建人に、確信犯であることが分かりも思わずムキになる。
「もう!そういうとこですよ!
さらっとこういうことをスマートにするところ!」
「さて、何のことなら言われている意味が分かりませんね」
「〜〜〜っ!だから!七海さんの上着が良かったんです!」
「・・・」
「あ」
しまった、やらかした。
言うつもりは無かったのに言ってしまったと、その返しは予想していなかった建人。
互いに墓穴を掘ってしまったことで、互いの顔は勢いよく反対の方向を向いた。
「さーん、これで・・・ってどうしたの?」
「あれ?ナナミンもどったの?」
店内から声をかけた野薔薇と悠仁の視線の先では、顔面を両手で隠していると、口元を隠している建人が耳まで赤くしそれぞれ言った。
「みんなが可愛いくて困ってるの!」
「・・・なんでもありません」
「「「「「ええー・・・」」」」」
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2021.12.01