ーー威厳とは?ーー

















































































































ーーむっすー・・・ーー

高専医務室。
任務で負った太ももの傷口に反転術式をかけ終えた硝子は、完了だとばかりに目の前の不貞腐れ顔に告げた。

「よし、デカい傷は塞いだ。他は?」
「ありません」
「ふーん、じゃあ立って後ろ向いて両手広げてみ」
「もう無いでーー」
「先輩命令」
「・・・」

断らない一言を告げられたは、先ほどから変わらぬ仏頂面のまま、後ろを向き両手を広げ立ち上がった。
硝子はしばし後ろ姿を観察していたが、後ろから両手で脇腹付近を撫でた。
瞬間、その箇所を庇うようには身体をくの字に曲げ椅子へと勢いよく落ちた。

「っ!?」
「やっぱり肋骨イってるな。何でわざわざ隠すかね」
「・・・言い忘れてました」
「触診で飛び上がるならもっとマシな言い訳考えんだな」
「・・・すみません」

当然の指摘に素直に謝ったは再び硝子へと向き直る。
そして、シャツのボタンを全て外せば左脇が痛々しい赤紫色に腫れ上がっていた。
治療を受けなかったら完治まで長引くだろう予想ができるのに言わなかったこと。
手当最中の終始の不機嫌顔。
なんとなく、そうなった原因も予想がついた。

「また五条に何か言われたのか?」
「・・・別に」
「あいつの言葉をいちいち間に受けるな。
七海を見習って少しは受け流すことを覚えるのも必要だぞ?」

手をかざし反転術式をかける硝子が言うも、当の本人は未だに不服気だ。
と、廊下から聞き慣れた声が響いてくる。

『ようよう、七海〜、こないだのザコ任務で負傷したって聞いたぞ?
ぷっ!ザコいが過ぎんだけどウケるw』
『・・・』
『あ!ちょっ!七海!こんな廊下で呪具振り回しちゃダメだよ!』
『はいはい、悟もいい加減、後輩の神経逆撫でするの止めなよ』
『お前も大概だよ』
「・・・」
「・・・」

数十秒前の助言がパァだ。
反転術式をかけ終え、念のため固定帯を巻くからと手振りでシャツを脱げと指示する硝子にが黙って従う。
なんとも言えない沈黙に包まれる中、自身の言葉を台無しにされた硝子が小さく呟いた。

「前言撤回だな」
「そのようでーー」
ーーガラッ!ーー
「硝子!七海パシッたかーー」

突然、医務室の扉が開けられた上、無作法者が乱入した。
背中とはいえ半裸の
固定帯を巻いてる途中の硝子。
ゴミ・・・もとい、この世の全ての侮蔑を集めたうわー、という表情の二人が入ってきた悟を見据えた。

「ノックしろ」
「・・・屑」
「えー・・・お邪魔しました?」
「夏油、そこの覗き魔を摘み出せ」
「俺は悪くなーー」
ーーバダンーー

廊下から伸びた腕が、悟の襟首を掴んで無作法者を医務室から引き摺り出した。
先輩らしい格言がことごとく裏目に出る失態の連続に、硝子は唯一の慰めとなる一言を告げた。

「後で〆とく」
「よろしくお願いします」




























































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2021.10.29