「ってさどうして看病できたの?」
「・・・は?」
もう一人の待ち人を待ちながらの突然の問いに、の頭上に疑問符が浮かんだ。
「いや、『は?』って何?」
「すみません。五条さんとはそれなりな付き合いですが、言ってる意味が分からないです」
「僕が最強だって知ってる?」
「・・・え、日頃自分で散々言ってるじゃないですか」
「発言の度に引いてくの止めて、さすがの僕も傷つくから」
悟の言葉に、冒頭の問いについては復唱した。
「えー、どうしてできたって・・・」
「そうそう」
悟の頷きに再び考えこむ。
しばらくしてはっと、ようやく分かったとばかりには悟を見上げて口を開いた。
「大喜利?」
「違うよ」
即答した悟に再びは考え込んだ。
だがその顔に意味分からん、と眉間にシワを寄せて深刻に悩みはじめたことで悟が先に口を開いた。
「六眼持ってると、術式の視認とか、呪力操作とか余裕じゃん。何より僕って最強だし。
だけど体調不良とかだとそーいうの狂うの。
なのに学生のときも先週とかも普通に看病してくれたじゃん?」
「・・・え、いや、だから何だってですか?」
「ええ!?普通ビビんじゃないの?」
「あ、そう意味で言ったんですか!」
「そういう意味しかないでしょ」
やっと意図を理解したはすっきりしたような表情を浮かべる。
そしてその時を思い浮かべるように顎に指を当てた。
「んー、六眼だろうが、最強だろうが、クズだろうがどうでもよかったからですかね。
病人なら看病しますよ。
たとえ術式がバグって当たっても硝子先輩居るからどうにかなりますし」
「・・・それって相当イカれた思考だよ」
の返答に悟は珍しく口元を引き結んだ。
問いに返された、『病人だから』という答え。
六眼だからでも、五条家の人間だからでもなく。
下心が無い素直なまでの善意。
学生の時から変わらない、呪術師としては不要の産物を未だに手放さない後輩は当然と言い切った。
幼い頃、病に臥せば部屋に踏み入る者は居らず、看病をされるという経験は学生時代が初めてだった。
そんな悟の過去を知らないは、考え込むような隣に構わず続けた。
「そもそも寝込んでる時の呪力の操作ミスなんてどうせ不発じゃないですか・・・あ、もしかして実は高専吹っ飛ばすくらいのレベルだったってことですか?」
「いや、それはない」
「なら余計に気にする必要もないじゃないですか。
私的にはウザい絡みを続けられた相手をしてた方がずっとしんどかったですもん。アレやられないなら術式事故もらう方が楽」
「うわー・・・」
「それに学生の頃はそんなことにビビってる人、誰も居なかったじゃないですか」
他に何が気になるんだ?とばかりなの視線に見上げられた悟はきょとーんとしたように面食らっていた。
思い出される学生時代の、柔らかい思い出。
確かに、あの時は身体は辛くとも気持ちはとても穏やかだった。
「・・・そうだね」
「そもそも五条さんを怖いと思うのはクズな思考とデリカシーの無さと性根くらいで、呪術師としての実力だけは信頼してます」
「うわー、いい話だったのに台無し」
「あ、七海さんそろそろ着くみたいですね」
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2021.10.29