ーー苦い痛みーー
ーーガッーー
ーードサッ!ーー
足元を勢いよく払われ、受け身もままならず尻餅をついた。
生理的に浮かんだ涙目でやらかした相手を見上げれば、その人は息の一つも乱さず黒いサングラスをかけた上でも分かるほど心底馬鹿にした表情でこちらを見下ろしていた。
「っ・・・」
「うげぇ、マジかよこんな体力呪力顔面力も無い雑魚ヨワじゃすぐ死ぬじゃん」
「悟、女の子相手に口悪い」
「クズだな」
「Good Looking Guyは全てが正しい!」
(「「うわっ・・・」」)
ビシッと観戦している同期、傑と硝子に指を突きつけた悟に同期はドン引きした。
ちょうど任務中で不在の二年生に代わり(暇だからと)三年生が相手をしてくれることとなった。
結果として、先程からは悟を相手に手も足も出ない。
身長のリーチ差は30cm以上、男女の違い、経験不足。
全てをとっても勝てる要素は無かったのは分かっていたが、必要以上に煽ってくるのが腹が立つ。
切れた口の端を拭ったは転がった棒術用の棒を手に再び立ち上がった。
「・・・もう一本」
「30秒もたなかったらコンビニにパシってもらう条件なら相手してやろう」
ーー15分後。
軽やかな音色に見送られ、頬に湿布を貼ったはコンビニから出た。
その手にはビニール袋に入った飲み物と菓子が入っていた。
「・・・はぁ」
「大丈夫ですか?」
深いため息をついたがかけられた声に振り返れば、そこにはこちらを心配そうに見ている同期、潔高が立っていた。
「別に付き合わなくても良かったのに」
「いや、流石にさん一人に任せる訳にも・・・」
「・・・ごめん」
「ええ!何で謝るんですか!?」
「私が負けたせいで伊地知くんまでパシられたし・・・」
「そんな僕なんて家入先輩にも勝てなかったし、さんは家入先輩と夏油先輩からは一本取ったじゃないですか」
「・・・」
前者の先輩はそもそも攻撃型じゃないし、後者の先輩にはめーっちゃ手を抜かれていたのに気付いていたが、それにはあえて触れずはむすっとしたまま歩みを進める。
荷物を持つと言った潔高の厚意に甘え、帰り道を並んで歩く。
気分が晴れないだったが、隣からよく冷えた缶ジュースが差し出された。
「ん?」
「だから・・・尊敬しますよ。
ひたむきに努力するさんは凄いと思います」
「・・・結局、パシられてるけど」
「五条先輩は規格外ですし」
困ったように笑う潔高を隣に、受け取った缶で頬を冷やしたは再び深々とため息をついた。
所変わり、高専の校庭ではパシられ品を待つ三年生が並んでその到着を待っていた。
「悟さ、流石に女の子相手に顔面はさ、流石に軽蔑するんだけど」
「どんだけ人格破綻してんだと思ったわ」
「は?どうせ硝子の反転術式あんじゃん」
「そう言う問題じゃないよ」
「そう言う問題じゃねぇよ」
声を揃えられ反論された悟は、仏頂面をしながら悪態を吐いた。
「呪霊相手に男も女もカンケーねぇじゃん。
それにあんな攻撃も避けれないほど弱いアイツが悪い」
「ちゃんは近接じゃないだろ」
「後援タイプに近接でボコボコにするとか、マジ屑」
「はぁ!?そこはGLG五条サマに手解きしてもらって感謝するとこじゃない?」
「屑だね」
「うん、屑」
「つーか遅ぇ、俺のダッツ。どこまで買いに行ってんだよあいつら」
「パシッたのお前だろ」
「生体謎すぎて解剖してみたくなる」
ーー文句の5分後
「お待たせしました」
五「遅ぇ!」
「・・・すみません」
伊「す、すみません!」
夏「煩いよ、悟。はい、ちゃんはバニラね」
「・・・ありがとうございます」
家「伊地知は何にするんだ?」
伊「ぼ、僕は何でもーー」
五「俺のストロベリー取るなよ!」
夏家「「取らねぇーよ」」
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2021.10.29