ーー将来、絶対いい旦那になるよーー
ーードーーーン!!ーー
爆風によって壁に叩きつけられ、ズルズルと地面に落ちる。
身体を起こそうとしたがそれは叶わず、膝をついた。
荒い息と鼓動が煩い。
頭から米神につつーと、生暖かいものが流れた。
(「くそっ、数が多すぎる・・・」)
悪態さえ音にならない。
Lv.1を順調に破壊してたのはいいものの、いつの間にか袋小路に追い込まれLv.2のAKUMA10数体に囲まれてしまった。
それでも数体破壊したが、まだ5体以上残っている。
自我を持ち始めた奴らは学習能力もLv.1とは比較にならない。
『弱い、弱い』
『勝てると思ってたのかよ〜』
『愚か愚か、エクソシスト』
『お前を殺して、もっとレベルアップだぁ!』
『潰せ潰せぇ〜』
絶望的な光景が耳に飛び込んでくる。
マリはぐっと唇を噛んだ。
(「ここまでか・・・」)
折角、命を救ってもらい再びエクソシストとして戦場に立ったというのに、なんて無力なんだ。
数年前の死の感覚が蘇る。
そしてAKUMA達がにいぃと、嗤った気がした。
『『『『『死ね、エクソシーー』』』』』
ーーズゴォーーーン!!ーー
瞬間、マリの耳を轟音が襲った。
「なん、だ・・・」
音の大きさに思考さえも麻痺する。
だが、だんだんと聴覚が戻り、AKUMAの音が消えていたことに気付いた。
「一体、何ーー」
「ったく、Lv.2の分際で私の前を塞ぐとは何様だっつーの」
頭上から響いた鈴の音のような軽やかな声。
次いで、地面に飛び降りた音。その声と心音は聞き覚えがあった。
「あれ、人?そういえば、エクソシストがいるかもって連絡がーー」
「・・・か?」
記憶にある名前を呟けば、向こうは訝しげな声を上げた。
「は?貴方だーー!もしかしてマリ!?」
「あぁ、久しぶりだな・・・」
危機が去った事で、思わず表情が緩む。
の方も突然の再会に、口調も軽やかで、マリの肩やら腕やらを叩いた。
ーーポンポンーー
「あは、ホント久しぶり〜。エクソシストに戻ったんだ〜」
「あ、ああ。今、任務中だったんだ・・・」
ーーパシパシパシーー
「へぇ、誰かと組んでるの?」
「こ、今回は、神田とーー」
ーーバシバシバシバシ!ーー
「なになに〜、ユウちゃんいるの!からかいたいわ、何処にーー」
ーーパシッーー
自分より細い手首を掴んだマリは、疲れたように嘆息した。
「・・・」
「どうしたの?」
向こうはキョトンとした様子で、聞き返す。
いや、聞き返さなくてもそっちは見えてるのだから、察して欲しい。
「叩くのはやめてくれ。一応、それなりな怪我をしてるんだ」
「ついつい嬉しくてね〜」
再会を祝して手当してあげるわ、とのの言葉に甘えてマリは応急処置をしてもらうことになった。
「遅くなったが・・・助かった、」
「あれくらい、どーってことないわよ」
「・・・そうか」
なんとなく、実力差を感じてしまった。
見えなくなっても、戦えるように修行を積んだはずだったのだが・・・
「助けられてばかりだな・・・」
「そう?気にし過ぎじゃない?」
「そんなことはない。
またこうしてエクソシストとして戦えているのはのおかげでもある」
「ふふん、伊達に長くエクソシストやってないからね〜。単なる経験差でしょ」
「いつか、お前に少しは返せる日が来るといいんだがな」
そう言ってマリはポンと包帯で巻かれた手をの頭に乗せる。
それを受けては暫く黙っていたが、
「マリってさ・・・」
「うん?」
「そうやって他人を思いやれるの、ある種の才能だと思うよ」
「そうか?」
「うん。将来、絶対いい旦那になるよ」
放たれた言葉を脳が処理するのに時間を要した。
数呼吸の後、当然の疑問を投げかけた。
「・・・・・・どうして話がその方向に行くんだ?」
「その手の話に免疫なさそうだから」
>余談
「マリは面倒見がいいから、しっかりしてるタイプより放っておけないタイプの人と一緒になるよね、きっと」
「・・・あまり大人をからかうものじゃない」
「私、大人だけど?それに3つしか違わないし」
「まだ未成年だろう・・・」
「ざんねーん、ヨーロッパでは16から成人よ」
「・・・・・・」
(「アジアでは違うんじゃないのか?」)
本編より7年前、21歳と18歳の会話でした
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2013.9.24