ーー決意の叫びーー











































































































楽しくもない話しを聞かされた後、追加の任務を言い渡された。
さらに拍車がかかった不機嫌顔でホームに戻ってみれば、ジョージがこちらに頭を下げた。

「もうすぐ汽車が参ります」
「はいはい」

興味薄に返事を返し、ベンチに腰を下ろした。
ジョージの言葉通り5分もしないうちに汽車が目の前に止まる。
車掌とジョージが話すのを遠巻きに見ながら、はバクから聞いた話を思い出していた。
この先、戦いは激しくなることが予想できるそれ。
一体、何人死ぬのだろうか?
また駒のように入れ替わり立ち替わり、人が投入されるのだろう。
聖戦という大義の名の下に・・・

「・・・」

そしてそのくだらない名目でまた・・・
そう、あの子達のような犠牲者がさらに犠牲者を産む。
あの時と同じようにーー












































































































『いかん、 退くのだ!』













































































































ーーシューーーッ!ーー
「!」

列車の蒸気音でははっとしたように意識を戻した。
まったく、何をしているのか。
いくら任務終了後とはいえ気を抜き過ぎた。
は深くため息を吐く。
と、ちょうどジョージが戻ってくるようだった。
は声をかけられる前に鞄を手に立ち上がった。
そして、深々と頭を下げるジョージの前を通り過ぎ、あと一歩で汽車に乗れる直前で歩みを止めた。

「ねぇ、あんたがファインダーに向かないって言ったの、あれ本音だからね」
「・・・はい」

気落ちするようなジョージの声に構わずは続けた。

「知り合いでもない奴の為に泣けるなんて情の深い奴、こっちの世界じゃ早死にもいいとこ。
まして、ファインダーはパタパタ死んでいくわ」
「・・・」
「さっさと転職するのが身の為ね」
「・・・・・・」

先ほどのバクの報告も聞いていたからこそ、は容赦なく言葉を続ける。
そして、返す言葉を持たないジョージはただ黙ってその言葉を受け止めるしかできない。
と、は何かを思い出したように懐を探った。

「あ、そだ」
「何かーー」
「これ渡しとくわ」
ーーシャランッーー

が投げたモノは、弧を描いてジョージの元へと飛ぶ。
それを危なっかしい手つきながらもキャッチしたジョージは、手の中のモノに視線を落とした。

「!これは・・・」

それは汚れていたが、先行していたファインダーのIDタグだった。
あれほど手酷い言葉を並べていた人が。
わざわざ死んだ仲間の遺品を持ち帰ってきてくれた。
人数分あるそれからジョージはに視線を移せば、先ほどと変わらず不機嫌顔のが汽車からこちらを見ていた。

「支部に報告するついでに供養でもしてやるのね」
ーーボォーーーッ!ーー

発車の合図で汽車はゆっくりと動き出す。
そして、も車両に移ろうとした。
その時、

「エクソシスト様!」

面倒そうには振り返った。
そこにはホームを走り汽車に並走するジョージがいた。

「続けます!
私はこのまま、ファインダーを続けますから!」

戦争の渦中にいることの自覚がなかった。
まだ新人だからという甘えも確かにあった。
誰かを疑うなんて、人として間違っていると思っていた。
だが、もうそんな甘えは捨てよう。
だって知ってしまった。
自分の感情を殺しても、戦い続ける人がいることを知ったから。
口では突き放すことを言っても、その人から託された仲間を想う心を受け取ったから。
だから、自分だって悲しい現実に目を背けてはいけない気がした。
それに戦争の渦中にいるからこそ、死を悲しみ、悼み、涙を流す人がいなければならないと思った。
ジョージの言葉を聞いたは、離れていくその姿に口端を上げたように見えた。
そして・・・

「             」
「!」

汽車はあっという間に見えなくなった。
おそらく、もうあのエクソシストに会うことはないだろう。
それにあの人は元々アジア支部所属。
今回は中東支部長の要請でたまたま管轄境に来たのだから。
それでも、ジョージは今回のこの巡り合わせを神に感謝した。
別れる直前の、あの人の言葉をしっかりと自身の中に刻みながら。





































































































ーー「ま、せいぜい頑張りなさい」ーー





















































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2020.4.3