ーー青天の霹靂ーー


















































































































それは連勤続きでやっと帰れると思った帰宅間際にねじ込まれたトドメ、旧友が絡んでいた傷害事件についての報告を進めていた時のこと。
ケーシーのポケットに入れていたスマホが着信を告げる振動を上げた。
急患か、収容患者の急変か。
どちらにしろ仕事が増えることが分かってげんなりしたが、予想に反しスマホの画面は見知った名前だったことで話しを一旦止め、通話ボタンを押すとぞんざい に応じた。

「ちょっとー、今忙しいから用件だけ言ってくれる?」
『おや、それは申し訳ないタイミングだったね』
「・・・え」

予想した声でないことで思考がフリーズした。
心臓だけが鼓動を打っているような一定間隔のリズムを経た後、ぶわっと全身の毛が逆立ったような錯覚を起こし声が裏返った。

「わ、渉さんですか!?」
『ははは、正解だよ。久しぶりだね』
ちょ!あ、んんっ!いえ、すみません失礼な ことを。急患が立て込んでたところがちょっと落ち着いたところでして」
『気にしないでくれ。彰良の携帯からかけた私にも非はある』
そんなこと無いです!ご無沙汰しておりました、イギリスからお戻りだったんですね」
『あぁ、少し用事がね。良ければ滞在中に食事でもと思ってね』

動揺を取り繕って応対していた外面が、最後の一言であっけなく瓦解した。
まるで幼子が好物を目の前にした、まさに絵に描いたようなぱぁと輝いた表情で はスマホに食いついた。

「ほ、ホントですか!それはもう、是非!
『良かった。じゃぁ、後で彰良の携帯からメールさせてもらうよ。忙しいなら無理しないでいいからね』
「とんでもないです!調整して伺いますので!」
『そうか。じゃぁ会えるのを楽しみにしているよ。Ta-ta』

短い通話が終わり、両手でスマホを胸に抱くその姿は恋する少女のそれ。
だが一部始終を目の前で見る羽目になった旧友、佐々倉健司は、当然、普段とかけ離れたはしゃぎっぷりにドン引き顔を向けていた。

「・・・毎度思うが、お前のその対応の落差は引ーー」
ーーバンバンバンバンバンバンバンッ!ーー

しかし、返されたのは文句ではなく自身の鍛え抜かれた腕をこれでもなく容赦なくひっぱたく音。
それなりに痛いが、今言ったところで聞く耳を持たないことは過去の同様シチュエーションで経験済み。
そして一人荒ぶっている は興奮冷めやらぬ様子で許されるギリギリの声量で健司に向け口を開いた。

「ふあぁー!ちょ!やば!聞いた?渉さんの声素敵すぎ!」
「お、おう」
「そして変わりないめっちゃ紳士的でスマートな気遣い!あーもう!マジめっちゃ推せるっ!」
「お、おい、それよか聴取のはなーー」
「あ、服何着てこう。最近忙しくてケーシーしか着てない。ってか出かける用の服、ってか渉さんのお目汚しにならない服が無いわ」
「おい、仕事のーー」
「ちょっと待てよ。今週の当直入ってたけど、あの人をちょっと脅して代わってもらえば時間は作れるか」
「人のーー」
「健司くん」

今まで見たこと無いほど真剣な表情が健司を見据える。
不覚にも心音が乱れた気がしたが、誤作動だと自分に言い聞かせ の続きを促した。

「な、なんだよ」
「悪いけど、超・緊急の最優先の用事できたから後でね」

警察官よろしく、流れるような敬礼をした がスタスタと白衣をはためかせて歩き去る。
思わず納得しかけた健司だったが、はたと我に返った。

「お、おぉ。そう・・・じゃねぇえ!私用だろうが待てコラ!

院内に響く怒声に、当然と看護師達からの非難がましい冷たい視線が刺さる。
文句を言い返したいのをぐっとこらえた健司は、そそくさと逃げる背中を許された最高速度で捕まえるべく、院内を大股で歩き出すのだった。




























































ーー捕縛後
 「ちっ、私の貴重な時間を・・・」
佐「お前、昔から渉さんのこと好きだよな」
 「ちょっと、変な言い方止めてよ」
佐「は?」
 「私は好きなんじゃなくて、推してるの」
佐「・・・同じだろ?」
 「月とスッポンレベルで違う」(力説)
佐「そ、そうか・・・」(分かんねぇ・・・)




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2025.05.30